「売上が小さい会社でも、M&Aで売却できるのか」という疑問は、小規模な会社や、個人事業主の経営者から、よく聞かれます。「売上が少ないと、買い手がつかないのではないか」「M&Aは、大きな会社のものではないか」と、あきらめてしまう方も、少なくありません。
結論からいうと、売上が少なくても、M&Aで、事業を引き継げる可能性は、あります。会社の価値は、売上の大きさだけで、決まるわけではないからです。実際に、中小企業庁も、小規模事業者向けの、M&A支援の類型を、用意しています。
この記事では、売上が小さい会社が、M&Aを、検討するときの、考え方、買い手に評価されるポイント、売却の方法、費用の注意点、使える支援制度を、解説します。
なお、制度は、改正されることがあります。この記事は、2026年10月時点で、中小企業庁などの公表資料をもとにしています。実際の判断では、最新の情報を確認し、専門家にご相談ください。
Contents
売上が小さくても、M&Aは可能なのか

M&Aの買い手が、見るのは、売上の大きさだけではありません。買い手にとっての、価値は、次のような点にあります。
- 顧客や、取引先:安定した、顧客基盤があるか
- 技術や、ノウハウ:他社が、簡単には、まねできない技術や、経験があるか
- 従業員:事業を、続けられる人材がいるか
- 許認可や、資格:取得に時間がかかる許認可を、持っているか
- 立地や、設備:店舗や、工場、設備の価値
- ブランドや、屋号:地域での、知名度や、信頼
売上が小さくても、これらの価値があれば、買い手が、見つかる可能性があります。たとえば、地域に根ざした、小さな飲食店、美容室、整骨院、工務店、小さな製造業などでも、事業を引き継いでくれる、買い手が、現れることがあります。
「売上が小さい」ことが、課題になる場面
一方で、売上が小さい場合に、課題になりやすい点もあります。
- 会社の価値の評価が、低くなる傾向がある
- M&A支援機関の、手数料が、取引の金額に対して、負担になりやすい
- 経営者個人への、依存度が高く、引き継ぎが、難しい
- 決算書が、整っておらず、事業の実態が、分かりにくい
これらの課題は、事前の準備で、ある程度、改善できます。
売上が小さい会社の、価値の考え方

会社の価値を、評価する方法は、いくつかあります。売上が小さい会社の場合は、次のような考え方が、よく使われます。
純資産をもとにする考え方
会社の資産と、負債を、時価で評価して、差し引いた、純資産の額を、基準にする方法です。売上や利益が、小さくても、不動産や、設備、在庫、現預金などの資産があれば、一定の評価が、つきます。
のれん(営業権)を、加える考え方
純資産に、将来の収益力などを、加味した、「のれん」を、上乗せして、価格を、決める方法です。顧客や、技術、従業員などの価値が、評価される場合は、のれんが、加わります。
経営者の、役員報酬を、調整して見る
小規模な会社では、経営者の、役員報酬が、実際の、事業の収益と、混ざっていることが、よくあります。買い手の視点では、経営者の報酬を、調整したあとの、本来の収益力が、評価されます。決算書だけでは、事業の実力が、分かりにくい場合は、調整後の収益を、示す資料を、作成しておくと、評価されやすくなります。
売却の前に、整えておきたいこと

売上が小さい会社が、M&Aで、評価を高めるために、準備できることがあります。
1. 決算書と帳簿を、整える
正確な決算書と、帳簿は、買い手が、事業の実態を、判断するための、基本的な資料です。会社と、経営者個人の、お金の区分を、明確にし、役員への貸付金や、事業に関係のない支出を、整理しておきます。
2. 経営者に、依存しない、仕組みを作る
経営者が、すべてを、一人で、こなしている場合は、買い手が、事業を、引き継ぎにくくなります。業務の手順を、文書にまとめる、従業員に、仕事を任せるなど、経営者が、いなくても、事業が、回る仕組みに、近づけておくと、評価が上がります。
3. 強みを、整理して、伝える
自社の強み(顧客との関係、技術、地域での信頼など)を、具体的に、整理しておきます。買い手が、事業の魅力を、理解できるよう、資料にまとめます。
4. 許認可や、契約を、確認する
許認可の有効期限や、賃貸借契約、取引先との契約の内容を、確認しておきます。引き継ぎの際に、同意が必要な契約は、事前に、洗い出しておきます。
小規模な会社の、売却の方法

売上が小さい会社が、M&Aを行う場合の、主な方法を、紹介します。
事業承継・引継ぎ支援センターなどの公的機関に相談する
中小企業庁の「中小M&Aガイドライン(第3版)」では、事業承継・引継ぎ支援センターなどが、セカンド・オピニオンを提供する機関として、位置づけられています。公的な相談窓口は、小規模な事業者の相談にも、対応しています。まずは、無料で相談できる窓口を、利用して、売却の可能性や、進め方を、確認するのが、一つの方法です。
M&A支援機関(仲介者・FA)に依頼する
M&Aの仲介会社や、FAに、依頼する方法です。ただし、中小企業庁の資料では、手数料の体系は、着手金、月額報酬、中間金、成功報酬など、支援機関によって異なり、最低手数料を、設けている機関も、あると説明されています。売上が小さい場合は、最低手数料が、取引の金額に対して、大きな負担になる可能性があるため、依頼の前に、手数料の算定の基準を、確認することが、重要です。
小規模なM&Aを対象にした、マッチングの仕組みを使う
近年は、小規模な事業の売却を対象にした、オンラインのマッチングサービスなども、広がっています。費用や、手続きが、軽くなる場合がありますが、サービスによって、条件や、サポートの内容が、異なります。登録の前に、手数料や、秘密保持の取り扱いを、確認してください。
知り合いや、取引先、従業員への承継を検討する
第三者への、売却だけでなく、従業員や、取引先、同業の知り合いに、事業を、引き継ぐ方法もあります。身近な人への承継は、事業の内容を、理解してもらいやすい反面、買い手の資金力が、課題になることがあります。
小規模な会社の、売却の流れ(目安)

小規模な会社が、M&Aで、売却する場合の、一般的な流れを、整理します。
1. 現状の整理と、相談
決算書や、事業の状況を、整理し、公的機関や、専門家に、相談します。この段階で、売却の可能性や、会社の価値の見立てを、確認します。
2. 売却の方針の決定
売却の目的、希望する条件(価格、従業員の雇用、時期など)を、決めます。譲れない条件と、譲れる条件を、分けておくと、交渉がスムーズです。
3. 買い手の探索
公的機関、M&A支援機関、マッチングサービス、取引先や知人などを通じて、買い手の候補を探します。事業の概要を、まとめた資料を、作成し、秘密を守りながら、買い手の候補に、提示します。
4. 条件の交渉と、基本合意
買い手の候補と、面談を行い、価格や、条件を交渉します。大まかな条件が、決まったら、基本合意を、結びます。
5. デューデリジェンスと、最終契約
買い手が、事業の状況を、調査し、問題がなければ、最終の契約を結びます。小規模な会社の場合は、調査の範囲が、比較的小さく、期間も、短くなることがあります。
6. 引き継ぎと、クロージング
事業の引き継ぎを行い、代金を受け取ります。経営者が、一定期間、引き継ぎのために、会社に残る場合もあります。
売却の相談の前に、準備したい資料

相談や、買い手の候補への提示のために、次のような資料を、準備しておくと、スムーズです。
- 直近の、決算書と、確定申告書(3期分程度)
- 事業の概要が分かる資料(事業内容、顧客、取引先、従業員の状況など)
- 主要な資産と、負債の一覧(不動産、設備、借入金など)
- 許認可や、契約の一覧(賃貸借契約、リース契約、取引先との契約)
- 経営者の役割と、業務の内容が分かる資料
資料が、完全に、そろっていなくても、相談はできます。まずは、現状を、専門家に、伝えて、何を、準備すべきかを、確認してもらうとよいでしょう。
価格のイメージ(想定)

小規模な会社の価格の考え方を、数字の例で、イメージします。この例は、理解のための想定で、実際の価格を、示すものではありません。
- 会社の純資産(時価):1,500万円
- 経営者の報酬などを調整した、年間の営業利益:400万円
- のれんの考え方:調整後の営業利益の、数年分を、のれんとして、評価する、方法がある(年数は、業種や、案件によって、異なる)
- 仮に、営業利益の2年分をのれんとすると、のれんは800万円
- 価格の目安:1,500万円+800万円=2,300万円
このように、売上が、小さくても、純資産と、収益力によって、一定の価格が、つく場合があります。実際の価格は、買い手との、交渉や、事業の状況によって、変わります。複数の方法で、試算し、専門家に、見立てを、依頼することをおすすめします。
売却をあきらめる前に、できること

売上が小さいからといって、すぐに、廃業を決める前に、次のような方法を、検討してみてください。
- 公的な相談窓口で、売却の可能性を、確認する
- 税理士に、会社の価値の見立てと、売却した場合の、税金の試算を、依頼する
- 決算書や、事業の整理を行い、買い手に、評価されやすい状態に、近づける
- 従業員や、取引先、同業の知人への、承継の可能性を、検討する
- 補助金などの支援制度で、費用の負担を、軽くできないか、確認する
廃業すると、従業員の雇用や、取引先との関係が、失われます。M&Aや承継の可能性を、探ることで、事業と、雇用を、守れるかもしれません。
売却で、引き継がれやすい、小規模な事業の特徴

小規模な事業でも、次のような特徴がある場合は、買い手に、評価されやすい傾向があります。
- 固定の顧客や、定期的な取引があり、収益が、安定している
- 経営者がいなくても、従業員だけで、日々の業務が、回る
- 業務の手順や、ノウハウが、整理されている
- 賃貸借契約などの、主要な契約が、引き継ぎやすい
- 許認可や資格を持ち、新規参入の障壁がある
- 決算書が、整っていて、経営の状況が、分かりやすい
こうした特徴は、一朝一夕には、作れませんが、売却を考え始めた時期から、少しずつ整えていくことで、事業の価値を、高めることができます。
使える支援制度:事業承継・M&A補助金

中小企業庁の「事業承継・M&A補助金」(令和7年度補正予算、令和8年2月時点版)には、専門家活用枠の中に、小規模事業者向けの類型が、新設されています。
- 小規模売り手支援類型:補助上限額は450万円、補助率は2/3
- 対象経費:謝金、旅費、外注費、委託費、システム利用料、保険料など
- FA・仲介費用は、「M&A支援機関登録制度」に登録された、FA・仲介業者による支援に係る費用のみが、補助の対象
補助の内容は、公募の回ごとに、変わるため、最新の公募要領で、確認してください。詳しくは、別の記事「事業承継・M&A補助金とは?4つの枠と補助上限・補助率を解説」で、解説しています。
売上が小さい会社の、売却で、よくある質問

Q1. 赤字の会社でも、売却できますか?
赤字でも、売却できる場合があります。顧客基盤、技術、従業員、許認可などに価値があれば、買い手が、見つかる可能性があります。ただし、価格は低くなる傾向があり、赤字の理由や、改善の見込みを、説明できる準備が、必要です。
Q2. 個人事業主でも、M&Aはできますか?
できます。個人事業主の場合は、会社の株式の売却ではなく、事業の資産や、契約を、買い手に、引き継ぐ形(事業譲渡に近い形)で、行うのが、一般的です。契約や、許認可、従業員の引き継ぎの手続きが、必要になります。
Q3. 売れない場合は、廃業するしかありませんか?
M&Aが、成立しなかった場合でも、廃業以外に、従業員や、親族への承継など、他の方法が、残されていることもあります。廃業を選ぶ場合は、廃業に伴う費用(原状回復費、在庫の処分費など)が、かかります。事業承継・M&A補助金には、廃業・再チャレンジ枠も、あります。
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※本記事は、2026年10月時点の情報をもとに作成しています。制度は変更されることがあるため、手続きの前に、中小企業庁などの公式情報をご確認ください。




