会社を設立するときは、どのような順番で、何を準備すればよいのかを、あらかじめ、把握しておくことが大切です。会社の設立は、一生のうちに、何度も経験することでは、ありません。流れを、知らないまま進めると、手続きの漏れや、やり直しにつながるおそれがあります。
この記事では、株式会社を設立する場合を中心に、会社設立の流れと、各段階で行うことを、会社法などの条文を確認しながら、解説します。設立後に必要な手続きや、準備しておきたい書類、スケジュールの目安も、あわせて整理します。
なお、制度や手続きは、改正されることがあります。この記事は、2026年10月時点の公表情報をもとにしています。実際の手続きは、最新の情報を確認し、専門家にご相談ください。
Contents
会社設立の流れ(全体像)

株式会社を設立する場合の、おおまかな流れは、次のとおりです。
| 手順 | 内容 |
|---|---|
| 1 | 会社の基本事項を決める(商号、事業目的、本店所在地、資本金、事業年度、役員など) |
| 2 | 定款を作成し、公証役場で認証を受ける |
| 3 | 出資金(資本金)を払い込む |
| 4 | 設立登記の申請書類を作成し、法務局で登記を申請する |
| 5 | 登記の完了後、登記事項証明書などを取得する |
| 6 | 税務署、都道府県・市区町村、年金事務所などへ、届出を行う |
会社法第49条によると、株式会社は、本店の所在地において、設立の登記をすることによって成立します。つまり、登記の申請が受理され、登記がされた日が、会社の設立日になります。
手順1:会社の基本事項を決める

最初に、会社の基本的な事項を決めます。これらは、定款に記載するため、設立後に、変更するには、手続きが必要です。早い段階で、しっかりと、考えをまとめておきましょう。
決める主な項目
- 商号(会社名):同じ住所に、同じ商号の会社が、すでにあると、登記できない場合がある
- 事業目的:会社が行う事業の内容。将来行う予定の事業も、含めて考える
- 本店所在地:会社の本店を置く住所
- 資本金の額:設立時に出資する金額
- 事業年度(決算期):1年間の会計期間の、区切りの日
- 役員の構成:取締役などの、人数と、氏名
- 設立日:登記の申請日を、設立日にする場合が多い
決めるときのポイント
事業目的は、将来、事業を拡大する場合も、考えて、記載しておくと、後から、変更する手間を、省けます。ただし、許認可が必要な事業は、事業目的に、特定の文言が、必要な場合があります。
資本金の額は、設立費用や、設立後の運転資金、取引先からの見られ方などを、考えて、決めます。資本金が1,000万円以上の場合は、設立1期目から、消費税の納税義務が、免除されない場合があります。設立にかかる費用の詳細は、別の記事「会社設立にかかる費用は?株式会社と合同会社の違いを解説」で、解説しています。
事業年度は、決算の時期を、決めるものです。繁忙期を、避ける、税金の支払いの時期を、考えるなど、事業の状況に合わせて、決めます。
発起人と、役員について

発起人とは、会社を設立する手続きを、行い、設立時に、株式を引き受ける人のことです。会社法第26条によると、定款は、発起人が作成し、全員が署名または記名押印します。発起人は、1人でも、構いません。
設立後の、会社の運営を担う、役員(取締役など)も、設立の段階で、決めます。1人で会社を設立し、発起人と、取締役を、兼ねることもできます。家族や、共同経営者と、設立する場合は、出資の割合や、役割を、事前に話し合っておくと、後のトラブルを、防げます。
出資の割合は、会社の意思決定に、影響します。たとえば、複数人で出資する場合は、誰が、どれだけ出資するかによって、議決権の割合が変わります。設立の前に、十分に、検討してください。
手順2:定款を作成し、認証を受ける

定款とは
定款とは、会社の組織や運営の基本的な事項を、定めた書類です。会社法第26条によると、株式会社を設立するには、発起人が定款を作成し、その全員が、署名し、または記名押印しなければなりません。定款は、紙の書面のほか、電磁的記録(電子定款)で、作成することもできます。
公証人の認証
会社法第30条によると、株式会社の定款は、公証人の認証を受けなければ、その効力を生じません。認証を受けた定款は、株式会社の成立前は、原則として、変更することができません。
一方、合同会社などの持分会社は、会社法第575条により、定款を作成する必要はありますが、公証人の認証は、必要ありません。
認証にかかる費用
定款の認証手数料や、収入印紙代などの費用は、日本公証人連合会の案内によると、次のとおりです。
- 認証手数料:資本金の額等に応じて、3万円〜5万円(一定の要件を満たす場合は、1万5,000円)
- 謄本手数料:1枚250円
- 収入印紙代:4万円(電子定款の場合は不要)
定款に記載する主な事項
- 目的(事業の内容)
- 商号
- 本店の所在地
- 設立に際して出資される財産の価額(または、その最低額)
- 発起人の氏名または名称と、住所
- 発行可能株式総数
定款の記載内容に、不備があると、認証や、登記が進まないことがあります。専門家に作成を依頼する場合は、事業の内容や、将来の計画を、しっかり伝えましょう。
手順3:出資金を払い込む

会社法第34条によると、発起人は、設立時発行株式の引受け後、遅滞なく、出資に係る金銭の全額を、払い込まなければなりません。払込みは、発起人が定めた、銀行等の、払込みの取扱いの場所で、行います。
払込みの方法
会社の設立登記が完了するまでは、会社名義の、銀行口座を、開設できません。そのため、発起人(代表者となる人など)の、個人の口座に、出資金を、振り込むのが、一般的です。通帳の表紙、通帳の1ページ目、払込みの内容が分かるページを、コピーして、払込みを証明する書類として、使います。
払込みを証明する書類は、登記の申請のときに、必要です。払込みのタイミングは、定款の認証後が、基本です。認証前に、払い込むと、手続きの順番が、前後することがあるため、注意してください。
手順4:設立登記を申請する

登記の申請期限
会社法第911条によると、株式会社の設立の登記は、本店の所在地において、調査が終了した日、または、発起人が定めた日のいずれか遅い日から、2週間以内に、申請しなければなりません(募集設立の場合は、別の期限が定められています)。余裕を持って、準備を進めましょう。
主な申請書類
設立登記には、次のような書類が、必要になります。必要な書類は、会社の形態や、設立の方法によって、異なります。
- 設立登記申請書
- 定款(公証人の認証を受けたもの)
- 発起人の決定書(本店所在地や、資本金など、定款に定めのない事項を、決めたもの)
- 設立時取締役の就任承諾書
- 設立時取締役の、印鑑証明書
- 出資の払込みを証明する書面
- 登記すべき事項を記載した書面(または、記録媒体)
- 印鑑届書(会社の代表者印を、届け出る書類)
書類の作成や、申請を、司法書士に依頼する方法もあります。自分で行う場合は、法務局のホームページなどで、最新の様式や、記載例を、確認してください。
登記完了までの期間
申請した書類に、問題がなければ、登記は、完了します。完了までの期間は、法務局の混み具合や、書類の内容によって、異なります。一般的には、1週間から2週間程度が、目安とされていますが、時期によっては、もう少し、かかることもあります。
手順5:登記完了後に、取得する書類

登記が完了したら、次の書類を、取得します。以後の手続きで、必要になります。
| 書類 | 使う場面 |
|---|---|
| 登記事項証明書(履歴事項全部証明書) | 税務署への届出、銀行口座の開設、各種契約など |
| 印鑑証明書(法人) | 銀行口座の開設、契約、融資の申し込みなど |
複数の手続きで、必要になるため、登記事項証明書は、何通か、取得しておくと、便利です。
手順6:設立後の届出と手続き

登記が完了したら、会社として、事業を始めるための、各種の届出や、手続きを行います。
| 届出先 | 主な内容 |
|---|---|
| 税務署 | 法人設立届出書(設立の日以後2か月以内)、給与支払事務所等の開設届出書(開設の日から1か月以内)、青色申告の承認申請書など |
| 都道府県税事務所・市区町村 | 法人設立・設置の届出(提出期限や様式は、自治体により異なる) |
| 年金事務所 | 健康保険・厚生年金保険の、新規適用の手続き(社長1人の会社でも、原則として必要) |
| 労働基準監督署・ハローワーク | 従業員を雇う場合の、労災保険・雇用保険の手続き |
| 金融機関 | 法人口座の開設 |
税務署への届出の、詳しい内容は、別の記事「会社設立後に税務署へ提出する書類とは?期限と届出一覧」で、解説しています。
法人口座の開設
法人口座の開設は、法律上の、義務ではありません。しかし、会社の資金と、個人の資金を、明確に分けるために、開設するのが、一般的です。取引先との、支払いや入金も、法人名義の口座で行うため、取引の信用面でも、役立ちます。
設立までのスケジュールの目安

会社設立までの、おおまかな期間の目安は、次のとおりです。専門家に、依頼するかどうかや、書類の準備の状況によって、変わります。
| 時期 | 内容 |
|---|---|
| 1〜2週間前 | 基本事項の決定、必要書類(印鑑証明書など)の準備、代表者印の作成 |
| 設立の数日前 | 定款の作成、認証、出資金の払込み |
| 設立日(登記の申請日) | 法務局へ、登記申請 |
| 登記完了後 | 登記事項証明書の取得、各種届出、法人口座の開設 |
設立日を、特定の日にしたい場合は、その日に、登記を申請できるように、逆算して、準備を進めましょう。
設立の手続きで、よくある失敗

会社設立では、次のような失敗が、よく見られます。
- 事業目的の記載が不足し、後から、変更の登記が必要になる
- 許認可が必要な事業で、必要な事業目的を、定款に書いていなかった
- 出資金の払込みの、記録が不備で、登記の書類として使えない
- 登記の完了後、税務署などへの届出の期限を、過ぎてしまった
- 資本金の額を、低くしすぎて、運転資金が、不足した
こうした失敗は、設立前の準備と、確認で、防げます。専門家に、相談しながら、進めると、安心です。
専門家に依頼する場合の、役割分担

会社設立の手続きは、複数の専門家が、関わることがあります。
| 専門家 | 主な役割 |
|---|---|
| 司法書士 | 設立登記の申請書類の作成、登記の代理 |
| 行政書士 | 定款の作成、許認可の申請 |
| 税理士 | 設立後の税務の届出、資本金・事業年度の相談、会計や、決算、申告 |
| 社会保険労務士 | 社会保険や、労働保険の手続き |
どの専門家に、何を依頼するかによって、費用や、手間が変わります。窓口を、1つにまとめて、相談できる事務所を、選ぶ方法もあります。
設立前に、決めておきたい、お金の準備

設立の手続きを、進める前に、設立費用や、設立後の運転資金の、準備を整えておきましょう。設立費用は、定款の認証手数料、登録免許税などの、実費が、中心です。そのほかに、代表者印の作成費用や、印鑑証明書の取得費用も、必要です。運転資金は、売上が入金されるまでの、家賃や、人件費などの、支払いに、備えるための資金です。不足しそうな場合は、融資の利用も、検討できます。
よくある質問

Q1. 会社設立には、どれくらいの期間が、かかりますか?
準備の状況によって異なります。書類がそろっていれば、定款の作成から、登記の申請まで、数日で進められる場合もあります。登記の完了までは、申請後、1週間から2週間程度が、目安です。
Q2. 設立日は、いつにすればよいですか?
会社法第49条によると、会社は、設立の登記をすることによって成立します。そのため、一般的には、登記を申請した日が、設立日になります。決算日や、縁起などを、考えて、設立日を決める場合は、その日に登記を申請できるよう、準備を進めましょう。
Q3. 自分で、会社設立の手続きを、行えますか?
可能です。法務局や、公証役場の案内を確認しながら、進められます。ただし、書類の不備があると、やり直しが生じるため、不安がある場合は、専門家への依頼を、検討してください。
Q4. 合同会社の場合は、流れが、変わりますか?
合同会社には、定款の認証が、必要ありません。そのため、定款の作成後、出資金の払込みと、登記の申請へ進みます。会社法第579条により、合同会社も、本店の所在地で、設立の登記をすることによって成立します。
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※本記事は、2026年10月時点の情報をもとに作成しています。制度や手続きは変更されることがあるため、手続きの前に、法務局などの公式情報をご確認ください。




