会社を設立すると、社長一人の会社であっても、原則として、社会保険(健康保険と厚生年金保険)への加入が、必要になります。「社会保険には、必ず、加入しなければならないのか」「いつまでに、どのような手続きが、必要なのか」「保険料は、誰が、どのくらい負担するのか」と、不安に思う経営者は、多くいます。
この記事では、日本年金機構の公表資料をもとに、会社設立のときの、社会保険の加入の原則、対象となる人、手続きの期限、保険料の負担の考え方を、解説します。法人の事業所は、従業員が、事業主本人だけの場合も含めて、強制適用の対象です。手続きの期限が短いため、設立の前から、準備しておくことが、大切です。
なお、制度や手続きは、改正されることがあります。この記事は、2026年10月時点の日本年金機構などの公表情報をもとにしています。実際の手続きでは、最新の情報を確認し、社会保険労務士や、年金事務所にご相談ください。
Contents
社会保険とは?

一般に、「社会保険」と呼ばれるものには、広い意味と、狭い意味があります。この記事では、会社設立の際に、手続きが必要な、主な保険を、整理します。
| 保険の種類 | 主な内容 | 手続きの窓口 |
|---|---|---|
| 健康保険 | 病気、けが、出産などの、給付(協会けんぽ、または、健康保険組合) | 年金事務所(協会けんぽの場合) |
| 厚生年金保険 | 老齢、障害、死亡に対する、年金の給付 | 年金事務所 |
| 雇用保険 | 失業した場合などの、給付 | ハローワーク |
| 労災保険 | 仕事中や、通勤中の、けがや病気に対する、給付 | 労働基準監督署 |
この記事では、このうち、会社設立の際に、特に、問い合わせの多い、健康保険と、厚生年金保険を、中心に、解説します。雇用保険や、労災保険は、従業員を雇用する場合に、手続きが必要になります。
法人の事業所は、強制適用

日本年金機構の案内によると、次のような事業所は、健康保険、厚生年金保険の、適用事業所(強制適用)になります。
- 法人の事業所:株式会社などの法人の事業所は、従業員が、事業主のみの場合を含めて、強制適用
- 個人事業所:常時5人以上の従業員を、使用している場合は、強制適用(一部の、非適用業種を除く)。令和4年10月からは、士業に該当する、個人事業所で、常時5人以上を雇用している場合も、強制適用
つまり、社長一人で、株式会社を設立した場合でも、社会保険(健康保険、厚生年金保険)の加入が、必要になります。個人事業主のときに、国民健康保険と、国民年金に、加入していた人は、法人を設立すると、会社の健康保険と、厚生年金保険に、切り替わることになります。
個人事業所で、5人未満の場合
従業員が、常時5人未満の、個人事業所は、強制適用の対象では、ありませんが、任意で、加入することも、可能です。日本年金機構の案内によると、任意適用の申請には、従業員の半数以上が、適用事業所となることに、同意していることが、必要です。
加入の対象となる人(被保険者)

社会保険の、加入の対象となるのは、適用事業所に使用される人です。主な対象者は、次のとおりです。
- 法人の代表者や、役員:法人から、報酬を、受けている場合は、被保険者になる
- 正社員:適用事業所に、常時使用される人
- パートやアルバイト:1週の所定労働時間、および、1月の所定労働日数が、通常の労働者の4分の3以上の人。短時間労働者についても、一定の条件を満たす場合は、加入の対象になる
法人の代表者や、役員は、報酬が、無報酬の場合など、被保険者にならない場合も、あります。具体的な扱いは、年金事務所に、確認してください。
手続きの内容と、期限

新規適用届
事業所が、健康保険、厚生年金保険の適用を受けるためには、事業主が、日本年金機構に、「新規適用届」を提出します。日本年金機構の案内によると、この届出は、事業所が、健康保険、厚生年金保険に、適用されることになった場合、事実発生から5日以内に、事業主が行わなければならないとされています。
添付する書類
日本年金機構の案内によると、添付書類は、事業所の種類によって異なります。法人の場合は、登記事項証明書(登記簿謄本)などが、必要です。強制適用の個人事業所の場合は、事業主の世帯全員の住民票などが、必要になります。
被保険者資格取得届
新規適用届とあわせて、役員や、従業員の「被保険者資格取得届」を提出します。扶養する家族がいる場合は、被扶養者の届出も、必要です。
手続きの期限が短い点に注意
5日以内という期限は、会社設立後の、手続きの中でも、特に、短い期限です。設立の登記が、完了する前から、必要書類の準備を、進めておくことが、大切です。登記事項証明書は、登記の完了後でなければ、取得できないため、登記が完了したら、すぐに、取得して、届出を行えるよう、段取りを組んでおきます。
保険料の負担

日本年金機構の案内によると、健康保険料と、厚生年金保険料は、事業主と被保険者が、折半で負担します。
- 被保険者の負担分:標準報酬月額に、保険料率を乗じた額の、半額(給与から控除される)
- 事業主の負担分:同額
- 事業主は、事業主負担分と、被保険者負担分を、あわせた、保険料を、納付する義務がある
保険料は、標準報酬月額(役員報酬や給与を、一定の区分に当てはめた額)と、保険料率によって、決まります。保険料率は、年度や、都道府県によって、変わる場合があるため、日本年金機構や、協会けんぽの公表資料で、最新の料率を、確認してください。
社長一人の会社の場合
社長一人の会社でも、会社が、事業主負担分を、負担し、役員報酬から、被保険者負担分を、控除する形になります。そのため、個人事業主の時の、国民健康保険料や、国民年金保険料と比べて、負担額が、変わります。役員報酬の額によって、社会保険料の額が変わるため、役員報酬を決めるときは、社会保険料の負担も、あわせて、試算してください。役員報酬の決め方については、別の記事「会社設立後の初給料の注意点!役員報酬の決め方とルールを解説」で、解説しています。
個人事業主のときとの違い

個人事業主のときと、法人になってからの、社会保険の違いを、整理します。
| 項目 | 個人事業主(5人未満の場合) | 法人(社長一人でも) |
|---|---|---|
| 医療保険 | 国民健康保険(または、国民健康保険組合) | 健康保険(協会けんぽなど) |
| 年金 | 国民年金(基礎年金のみ) | 厚生年金保険(基礎年金に、上乗せ) |
| 保険料の負担 | 全額、本人が負担 | 事業主と被保険者で、折半(会社が半分を負担) |
| 家族の扱い | 家族ごとに、国民健康保険料がかかる場合がある | 一定の条件を満たす、被扶養者は、保険料がかからない |
| 将来の年金 | 基礎年金のみ | 厚生年金が、上乗せされる |
法人になると、社会保険料の負担が、増える場合がありますが、将来の年金額が、増える、傷病手当金などの給付を、受けられる、被扶養者の保険料が、かからないなどの、メリットもあります。
新規適用の手続きに必要な書類のチェックリスト

新規適用の手続きの前に、次の点を、確認しておくと、スムーズです。
- 登記事項証明書(法人の登記が完了したあとに、取得する)
- 健康保険・厚生年金保険新規適用届(様式は、日本年金機構のホームページで、入手できる)
- 健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届(役員、従業員ごとに作成する)
- 役員、従業員の、マイナンバー(個人番号)、または、基礎年金番号の分かる書類
- 被扶養者がいる場合は、健康保険被扶養者(異動)届と、関連する書類
- 事業所の、所在地、代表者、事業の内容などの、基本情報
提出する書類の、種類や、添付書類は、状況によって、異なります。年金事務所の、窓口や、日本年金機構の案内で、最新の内容を、確認してください。電子申請を、利用できる場合も、あります。
役員報酬と、社会保険料のバランス

社会保険料は、標準報酬月額によって、決まるため、役員報酬の額を、決める際は、社会保険料の負担も、考える必要があります。
- 役員報酬を、高く設定すると、社会保険料の負担も、増える(会社の負担分と、本人の負担分の、両方が増える)
- 役員報酬を、低く設定すると、社会保険料の負担は、小さくなるが、将来の年金額や、傷病手当金などの、給付も、小さくなる
- 役員報酬は、定期同額給与として、事業年度を通して、同額で支払うのが、基本(国税庁のタックスアンサーによる)。社会保険料の額も、標準報酬月額の改定の時期まで、同額になる
会社の利益、経営者個人の、所得税と住民税、社会保険料の、全体を、見て、最適な役員報酬の額を、探ることが、大切です。税理士に、試算を依頼して、比べてください。
従業員を雇う場合に、あわせて必要な手続き

従業員を、雇用する場合は、社会保険のほかに、次のような手続きも、必要になります。
- 雇用保険:ハローワークで、適用事業所の設置の届出と、被保険者の資格取得の手続きを、行う
- 労災保険:労働基準監督署で、保険関係の成立の届出などを、行う
- 源泉所得税:給与支払事務所等の開設届出書を、税務署に、提出する(開設の日から1か月以内。国税庁の案内による)
これらの手続きにも、期限があります。従業員を、雇う予定が、ある場合は、設立の前から、スケジュールを、確認しておいてください。社会保険や、労働保険の手続きは、社会保険労務士に、依頼することも、できます。
社会保険の加入で、期待できるメリット

社会保険への加入は、費用の負担が増える一方で、次のようなメリットが、あります。
- 将来の年金:国民年金の基礎年金に、加えて、厚生年金が、上乗せされる
- 病気やけがの保障:病気やけがで、働けない場合に、傷病手当金などの給付を、受けられる場合がある
- 出産の保障:出産に関する給付を、受けられる場合がある
- 家族の保障:一定の条件を満たす、家族は、被扶養者として、保険料の負担なく、健康保険に加入できる
- 採用への効果:社会保険に加入している会社は、求職者から、安心して、働ける会社と、見られやすい
給付の内容は、制度の改正や、個人の状況によって、変わります。詳細は、日本年金機構や、協会けんぽの案内で、確認してください。会社設立の際には、負担と、メリットの両方を、理解して、役員報酬や、事業の計画を、立てることをおすすめします。
手続きの流れ(会社設立の場合)

設立の登記を、完了する
法務局で、設立の登記が、完了したら、登記事項証明書を、取得します。
新規適用届と、被保険者資格取得届を、作成する
日本年金機構の様式で、作成します。役員や、従業員の、マイナンバー(個人番号)や、基礎年金番号が、必要になります。
年金事務所に提出する
管轄の年金事務所に、窓口、郵送、電子申請で、提出します。事実発生から、5日以内に、提出する必要があります。
被保険者証などを、受け取る
審査のあと、健康保険の被保険者証(またはマイナ保険証の利用の案内など)や、保険料の納付書などが、交付されます。
毎月、保険料を納付する
毎月、保険料を、期限までに、納付します。給与から、被保険者負担分を、控除します。
社会保険の加入で、よくある質問

Q1. 社長一人で、報酬をゼロにすれば、社会保険に、入らなくてもよいですか?
法人の役員が、報酬を受けていない場合は、被保険者にならない場合があります。ただし、実態や、条件によって、判断が異なるため、年金事務所に、確認してください。また、報酬をゼロにする場合は、その事業年度の、役員報酬の扱いも、慎重に、検討する必要があります。
Q2. 手続きを、遅れて、行った場合は、どうなりますか?
期限を過ぎても、届出は、受け付けられますが、事実発生の日にさかのぼって、保険料の納付が、必要になる場合があります。気付いたら、速やかに、年金事務所に、相談してください。
Q3. 社会保険労務士に、依頼できますか?
できます。社会保険労務士は、社会保険や、労働保険の手続きの、専門家です。設立の初期は、手続きが、多く、期限も短いため、専門家に、依頼する会社も、多くあります。
会社設立のお悩みはストラーダグループへ

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※本記事は、2026年10月時点の情報をもとに作成しています。制度や手続きは変更されることがあるため、手続きの前に、日本年金機構などの公式情報をご確認ください。




