会社を設立するときに、最初に悩むことのひとつが、「資本金をいくらにするか」です。2006年の会社法の施行により、最低資本金の制度がなくなったため、資本金は、法律上、1円からでも会社を設立できます。しかし、資本金の額は、会社の信用、税金、許認可、融資など、さまざまな面に影響します。
この記事では、資本金の基本から、金額を決めるときに考えたいポイントを、税金や登記の費用、許認可、融資、運転資金の面から解説します。「資本金は1円でもよい」ことと、「1円にして問題ない」ことは、別の話です。自社の事業に合った金額を決めるための、判断材料として、お役立てください。
なお、制度や税率は、改正されることがあります。この記事は、2026年10月時点で、国税庁、e-Gov法令検索などの情報をもとにしています。実際に設立するときは、最新の情報を確認し、専門家にご相談ください。
Contents
資本金とは?

資本金とは、会社を設立するときや、事業を運営するときに、株主(出資者)が会社に払い込んだ、事業の元手となるお金のことです。会社法第445条は、株式会社の資本金の額は、設立または株式の発行にあたって、株主となる者が会社に払い込み、または給付した財産の額とする、と定めています。ただし、払い込まれた額の2分の1を超えない額は、資本金に計上せず、資本準備金として計上することもできます。
借入金との違い
金融機関などから借りたお金は、「借入金」として、貸借対照表の負債の部に記載され、返済する必要があります。一方、資本金は、返済する必要のないお金です。そのため、資本金が多いほど、返済の負担が少なく、安定した事業の運営がしやすくなります。
資本金は、使ってもよいお金
資本金は、会社の事業のために使うお金です。会社の口座に入れたまま、使ってはいけないというわけではありません。事務所の賃貸の費用、設備の購入、仕入れ、人件費などに使えます。資本金が、会社の元手として、事業のために使われた結果、決算で、資本金の額を下回る純資産になっても、法律上は、問題になりません。
資本金はいくらから設立できる?

以前は、株式会社の設立には1,000万円、有限会社の設立には300万円の資本金が必要でした。2006年に会社法が施行され、この最低資本金の制度が廃止されました。現在は、資本金が1円でも、株式会社を設立できます。
会社法第27条は、株式会社の定款に、「設立に際して出資される財産の価額またはその最低額」を、記載しなければならないと定めています。つまり、定款には、設立時に出資される財産の価額か、その最低額を、決めて記載します。
資本金が少なすぎると、起こりやすいこと
資本金を、極端に少なくした場合は、次のようなことが起こる可能性があります。
- 取引先や、金融機関からの信用が、低くなる
- 創業直後の運転資金が不足し、すぐに借入や、役員からの貸付が必要になる
- 許認可の要件を満たせない
- 銀行の法人口座の開設や、融資の審査で、事業の準備が不足していると、見られる
資本金は、「最低いくらでよいか」ではなく、「事業を始めてから、軌道に乗るまでの、資金をどのくらい確保するか」の視点で、考えることが大切です。
資本金の額で変わる税金:消費税

資本金の額は、税金にも影響します。特に、消費税への影響が大きいため、注意が必要です。
資本金1,000万円以上だと、設立1期目から課税事業者
消費税は、原則として、基準期間(2期前の事業年度)の課税売上高が1,000万円以下の場合は、納税義務が免除されます。しかし、設立したばかりの会社には、基準期間がありません。この場合は、消費税法第12条の2の「新設法人の特例」が、適用されます。
この特例では、基準期間がない法人のうち、事業年度の開始の日における資本金の額または出資の金額が、1,000万円以上である法人(新設法人)は、納税義務が免除されません(e-Gov法令検索で確認)。つまり、資本金を1,000万円以上にすると、設立1期目から、消費税の課税事業者になります。
資本金を1,000万円未満にすれば、設立1期目と2期目は、原則として、基準期間がないため、免税事業者になる可能性があります。ただし、次に説明する「特定新規設立法人」などに当てはまる場合は、免除されません。
資本金1,000万円未満でも、課税事業者になる場合
国税庁のタックスアンサーによると、資本金が1,000万円未満の新設法人でも、特定新規設立法人に該当する場合は、納税義務が免除されません。特定新規設立法人とは、その事業年度の基準期間がない、資本金1,000万円未満の法人のうち、他の者に支配されていて、その支配している者(判定対象者)の基準期間に相当する期間の課税売上高が、5億円を超えるものなどをいいます。なお、令和6年10月1日以後に開始する課税期間からは、売上金額、収入金額その他の収益の額の合計額が50億円を超える場合も、該当するとされています。
特定新規設立法人に該当する場合は、「消費税の特定新規設立法人に該当する旨の届出書」を提出する必要があります。親会社がある会社や、個人株主が、大きな売上のある会社を経営している場合は、特に注意してください。
免税事業者になれても、課税事業者を選ぶほうが有利な場合がある
設備投資が大きく、消費税の還付を受けたい場合などは、あえて課税事業者を選ぶほうが、有利になることがあります。インボイス制度への登録を考えている場合にも、課税事業者の判断が必要です。資本金を決める前に、税理士と、消費税の方針を決めておくと、安心です。
資本金の額で変わる税金:法人税などの税率と、登記の費用

法人税の税率
国税庁のタックスアンサーによると、法人税の税率は、資本金の額が1億円以下の普通法人(一定の法人を除く)は、所得が年800万円以下の部分が15%、年800万円を超える部分が23.2%です。資本金が1億円を超える法人は、一律23.2%です。なお、所得が年10億円を超える事業年度については、年800万円以下の部分の税率が、17%となります。
設立時に、資本金を1億円以下にしておけば、中小法人向けの軽減税率が、適用される場合があります。ただし、資本金が1億円以下でも、資本金5億円以上の大法人による完全支配関係がある法人などは、軽減税率の対象から除かれます。
株式会社の設立登記の、登録免許税
株式会社を設立するときに、法務局に納める登録免許税は、資本金の額に1,000分の7を掛けた金額です。ただし、その額が15万円に満たない場合は、申請1件につき、15万円になります(登録免許税法別表第一第24号(1)イ。国税庁の税額表、法務省の資料などで確認)。
たとえば、資本金が1,000万円の場合は、1,000万円×7/1000=7万円で、15万円に満たないため、15万円です。資本金の額が、約2,142万円を超えると、計算した額が15万円を上回り、資本金が大きくなるほど、登録免許税も増えます。資本金を増やす場合は、この費用も、含めて検討してください。
法人住民税の均等割
法人住民税の均等割は、赤字でも課税される税金で、資本金等の額と、従業者の数に応じて、金額が決まります。資本金等の額が大きくなると、均等割の額が上がる区分があります。実際の金額は、事務所のある自治体によって異なるため、都税事務所や、市区町村の税務窓口で、最新の税率を確認してください。
許認可に必要な資本金の目安

事業によっては、許認可の要件として、一定の財産的な基礎が求められます。ただし、要件は、資本金の額そのものではなく、「純資産」「自己資本」「基準資産」などの形で定められている場合が多く、業種ごとに異なります。
- 建設業:一般建設業の許可では、自己資本が500万円以上あることなどが求められます。特定建設業の許可では、資本金が2,000万円以上かつ自己資本が4,000万円以上など、より厳しい要件があります
- 旅行業:登録の区分(第1種、第2種、第3種、地域限定)ごとに、基準資産額が定められています
- 労働者派遣業:基準資産額や、現金・預金の額などの、財産的基礎の要件があります
具体的な金額や、計算の方法は、改正されることがあります。許認可が必要な事業を始める場合は、設立前に、所管の官庁(国土交通省、都道府県など)や、行政書士に、最新の要件を確認してください。設立後に増資することもできますが、株主総会の決議や、登記の手続きなどの手間と費用が、かかります。
資本金の決め方:運転資金から考える

資本金の額は、事業の内容や、開業時の資金の計画をもとに、決めます。考え方の例を、紹介します。
必要な資金の、全体像を出す
まず、設立にかかる費用、開業の準備にかかる費用、事業が軌道に乗るまでの運転資金を、合計して、必要な資金の全体を出します。
- 設立の費用:定款の認証の費用、登録免許税、専門家の報酬など
- 開業の準備の費用:事務所の敷金や、設備、備品、システムなど
- 運転資金:人件費、家賃、仕入れ、広告費など、売上が入るまでの、数か月分の支出
運転資金は、売上の入金までの期間や、支払いのタイミングによって、必要な額が変わります。一般的には、数か月分の固定費を、目安にして、余裕を持った額を用意しておくと安心です。
資本金と、借入のバランスを考える
必要な資金のうち、資本金(自己資金)でまかなう額と、借入でまかなう額を、決めます。資本金が少なく、借入に頼りすぎると、返済の負担が重くなります。一方、資本金を多くしすぎると、経営者の個人の資金の負担が大きくなります。創業融資を考えている場合は、自己資金の額が、審査で見られるため、資本金を含む、自己資金を、計画的に用意することも、重要です。
消費税・許認可・取引先の信用を、あわせて考える
資本金の額は、ここまで説明した、消費税、許認可、登録免許税、取引先や金融機関からの信用など、さまざまな要素に関わります。たとえば、消費税の免税を重視して、資本金を1,000万円未満にしつつ、許認可の要件は、資本金以外の純資産で、満たす、といった方法もあります。複数の視点で、バランスを取って、決めることが大切です。
資本金に関するよくある質問

Q1. 資本金は、あとから増やせますか?
増やせます。増資の手続きは、新しく株式を発行するなどの方法で行い、株主総会の決議や、登記が必要です。手間と費用が、かかるため、許認可の要件などは、設立のときに、確認しておくことをおすすめします。
Q2. 資本金を、あとから減らせますか?
減資も、可能ですが、債権者保護の手続きなど、複雑な手続きが必要です。簡単に減らせるわけではないため、設立のときに、慎重に決めてください。
Q3. 資本金を、個人の口座に入れたままで設立できますか?
設立の登記では、資本金の払い込みがあったことを、証明する書類が必要です。通常は、発起人の個人の口座に、払い込みを行い、通帳のコピーなどで、証明します。設立登記のあとは、会社の口座に、資金を移して、事業のために、使います。具体的な書類や手順は、法務局や、専門家に確認してください。
Q4. 資本金が1円の会社は、融資を受けにくいですか?
資本金の額だけで、融資の可否が決まるわけではありません。ただし、創業融資では、自己資金の額や、事業計画が、重視されます。資本金が極端に少ないと、事業への本気度や、資金計画の準備が、不十分と判断される可能性があります。
資本金を決める前に確認したいチェックリスト

- 設立から、売上が入るまでの運転資金を、数か月分、試算したか
- 消費税の課税事業者になるかどうかの方針を決め、資本金1,000万円の基準と、特定新規設立法人の判定を、確認したか
- 許認可が必要な事業は、財産的基礎の要件を、確認したか
- 登録免許税など、設立の費用を、資金計画に入れたか
- 創業融資を使う場合、自己資金と借入の、バランスを考えたか
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※本記事は、2026年10月時点の情報をもとに作成しています。制度や税率は変更されることがあるため、手続きの前に、国税庁、法務省、所管の官庁などの公式情報をご確認ください。




