売上が落ち込み、毎月の借入金の返済が重くなってきたとき、選択肢の一つになるのがリスケ(返済条件の変更)です。
ただし、取引している金融機関が複数ある場合、1つの金融機関と合意できただけでは資金繰りは安定しません。金融機関ごとに検討の進み方や必要な資料が異なり、信用保証協会の保証が付いた借入では保証協会の審査も必要になります。さらに、補助金を受けて取得した設備がある会社では、店舗の撤退や設備の移設が補助金の返還につながることもあります。
この記事では、複数の金融機関とリスケを進めるときの流れと注意点、金融機関が求める経営改善計画の作り方、中小企業活性化協議会や経営改善計画策定支援(405事業)などの支援制度、補助金で取得した財産を処分するときの注意点を解説します。
Contents
リスケとは?返済の条件を変えて資金繰りを立て直す手続き

リスケは「リスケジュール」の略で、借入金の返済計画を組み直すことをいいます。金融機関と話し合い、返済の条件を変えてもらいます。代表的なのは次のような方法です。
- 一定期間(たとえば6か月)、元金の返済を止めて利息だけを支払う
- 毎月の返済額を減らし、その分だけ返済期間を延ばす
- 返済の開始時期を後ろにずらす
リスケは借入金を減らしてもらう手続きではなく、返済の時期を先に延ばしてもらう手続きです。利息は払い続ける必要があり、返済の総額が減るわけではありません。その間に収益力を回復させ、元の返済ペースに戻すことが前提になります。
金融庁は、資金繰りに困っている事業者から返済条件の変更の相談があった場合、金融機関が実情に応じて柔軟に対応するよう、継続して求めています。返済が苦しくなってから延滞するよりも、延滞する前に相談するほうが、金融機関との信頼関係を保ちやすく、選べる方法も多くなります。
リスケをすると何が変わるか
リスケの期間中は毎月の返済額が減り、手元の資金を事業の立て直しに回せます。一方で、条件を変更している間は、新しい融資を受けにくくなるのが一般的です。リスケは時間を買うための手段であり、その時間で何をするかを決めておかなければ、期間が終わった後に同じ問題が起こります。
複数の金融機関とリスケを進めるときの流れ

借入先が複数ある会社では、すべての金融機関に足並みをそろえてもらうことが大切です。一部の金融機関だけが返済を止め、ほかの金融機関には通常どおり返済を続けると、返済を止めた金融機関から見て不公平になり、合意を得にくくなります。一般的な流れは次のとおりです。
1.メインバンクに最初に相談する
最も借入残高が大きい金融機関(メインバンク)に、最初に状況を説明します。メインバンクがリスケに応じる方針を示すと、ほかの金融機関も検討を進めやすくなります。合意できたら、合意した条件と期間をほかの金融機関に伝えられるよう、内容を記録しておきましょう。
2.すべての金融機関に同じ条件で依頼する
ほかの金融機関にも、同じ時期に、同じ基準で決めた条件で依頼します。各金融機関への返済額は、借入残高(または担保などで保全されていない残高)の割合に応じて配分する考え方(残高プロラタ)が多く使われます。金融機関ごとに説明の内容が違うと信頼を損なうため、説明に使う資料と数字はそろえておくことが欠かせません。
3.金融機関ごとの検討の進み方を把握する
金融機関によって、支店で判断できる場合と、本部の専門部署で検討する場合があります。専門部署での検討は時間がかかることがあり、結論が返済日に間に合わないこともあります。政府系金融機関からの借入も、同じように窓口で相談できます。金融機関ごとに次の点を一覧にしておくと、漏れを防げます。
| 確認すること | 内容 |
|---|---|
| 次の返済日 | 結論が出る前に返済日が来る場合、その回をどう扱うか |
| 検討する部署 | 支店で判断するか、本部の専門部署で検討するか |
| 保証協会の有無 | 信用保証協会の保証付きの借入かどうか |
| 必要な資料 | 資金繰り表、返済予定表、経営改善計画書など |
| 提出期限と面談日 | いつまでに何を出すか、次の面談はいつか |
4.保証協会付きの借入は協会の承諾も必要
信用保証協会の保証が付いた借入の条件を変更するには、金融機関の判断に加えて、保証協会の承諾が必要です。手続きは通常、金融機関を通じて行われるため、その分だけ時間がかかります。返済日が近い場合は、早めに金融機関に相談し、手続きにかかる期間を確認しておきましょう。
金融機関が求める資料と経営改善計画の作り方

リスケの相談では、「なぜ返済が苦しくなったのか」「この先どうやって立て直すのか」を、数字で説明することが求められます。社長の頭の中に構想があっても、文書になっていなければ金融機関は判断できません。将来の計画を文書と数字にすることが、リスケの合意を得るための出発点です。
資金繰り表
資金繰り表は、月ごとの現金の入りと出を一覧にした表です。売上の入金、仕入や人件費などの支払い、借入金の返済を月別に並べ、毎月末の残高を見通します。会計ソフトのデータを使えば、過去の実績をもとに作ることができます。少なくとも今後6か月から1年分を作り、どの月に資金が足りなくなるかを明らかにしておきましょう。
返済予定表
金融機関ごと、借入ごとに、残高・金利・毎月の返済額・最終の返済期限をまとめた表です。リスケ後の条件で、毎月の返済額がどう変わるかも示します。
経営改善計画書
経営改善計画書は、会社の現状と課題、改善の取り組み、今後の数値計画をまとめた書類です。一般的には次の内容を盛り込みます。
- 会社の概要と、業績が悪くなった原因(売上の減少、原価の上昇、人件費の増加など)
- 具体的な改善策(不採算部門の整理、人員配置の見直し、仕入の見直し、価格の改定など)
- 改善策を実行する時期と担当者(アクションプラン)
- 今後3年から5年程度の損益計画、資金繰り計画、返済計画
- 金融機関にお願いしたい内容(リスケの期間と条件)
業績が悪くなった原因は、できるだけ具体的に分けて書きます。たとえば、「集客が減った」「原材料の価格が上がった」「店舗を増やした結果、人件費に見合う売上が上がらない店舗がある」というように原因を分けると、それぞれに対応する改善策が示しやすくなります。
改善策は数字で効果を示す
次の数字は説明のための仮の例です。3店舗を運営し、年間の売上が1億2,000万円、営業損失が600万円の会社があるとします。このうち1店舗が毎年900万円の赤字を出している場合、その店舗の賃貸契約を終了すれば、それだけで営業損益は300万円の黒字に転じる計算になります。ただし、店舗の赤字に本部の費用の配分が含まれている場合、その分は撤退後も残ります。また、退店にかかる原状回復の費用や、契約の解約予告の期間も考える必要があります。このように、改善策ごとに「いつから」「いくら」効果が出るかを示すことで、金融機関は計画の実現性を判断しやすくなります。
リスケの期間中には、毎月の試算表や資金繰りの実績を金融機関に報告し、計画との差を説明することも大切です。計画どおりに進んでいれば、リスケの期間が終わった後の条件の相談も進めやすくなります。
経営改善を後押しする公的な支援制度

資金繰りや返済に悩む中小企業向けには、国の支援制度が用意されています。代表的なものを紹介します。
中小企業活性化協議会
中小企業活性化協議会は、国が各都道府県に設置している公的な相談窓口です。2022年に、それまでの中小企業再生支援協議会と経営改善支援センターが統合して発足しました。相談は無料で、収益力の改善から事業の再生、再チャレンジまで、状況に応じた支援を受けられます。
協議会の再生支援では、金融機関の調整を含めた計画づくりを支援します。状況によっては、借入金の一部の免除(債権放棄)などの抜本的な金融支援を検討することもあります。一方、リスケ期間中に黒字化できる見込みがある会社であれば、自社と専門家で経営改善計画を作り、金融機関と直接交渉する方法も考えられます。どの方法が合うかは、借入の規模や赤字の程度によって変わるため、早めに相談して判断することをおすすめします。
なお、協議会の支援内容は見直されることがあります。2026年には再生支援の実施要領が改定され、10月からは収益力改善支援のうち金融支援を伴うメニューが廃止されました。最新の内容は、中小企業庁の公式サイトや各都道府県の協議会で確認してください。
経営改善計画策定支援(405事業)
経営改善計画策定支援は、国が認定した経営革新等支援機関(認定支援機関)の支援を受けて経営改善計画を作るときに、専門家に支払う費用の一部を国が負担する制度です。開始当初の予算額にちなんで「405事業」と呼ばれています。利用するには、認定支援機関に計画づくりへ関わってもらう必要があります。
通常枠では、計画の策定にかかる費用と、計画を作った後の伴走支援にかかる費用について、それぞれ3分の2を国が負担します。上限は、計画策定が200万円、伴走支援が100万円とされています。この制度は、リスケなどの金融支援を伴う計画が対象で、原則として、取引しているすべての金融機関の同意が必要です。
金融支援を必要としない段階では、より簡単な計画を作る早期経営改善計画策定支援もあります。補助の上限額や手続きは改定されることがあるため、利用する前に中小企業庁の手引きで最新の内容を確認してください。自治体によっては、国の負担に上乗せして補助する制度もあります。
補助金で取得した財産がある場合の注意点

過去に補助金を受けて店舗の改装や設備の導入をした会社では、店舗の撤退や設備の売却を考えるときに注意が必要です。補助金で取得した財産には処分の制限があり、決められた期間内に処分するには、事前に事務局の承認が必要です。
財産処分にあたる行為
事業再構築補助金の場合、単価50万円(税抜)以上の機械装置などが承認の対象になります。次のような行為が財産処分にあたります。
- 補助事業以外の目的に使うこと(転用)
- 売ること、無償で譲ること(譲渡)
- ほかの財産と交換すること(交換)
- 他人に貸すこと(貸付)
- 借入の担保にすること(担保提供)
- 捨てること(廃棄)
承認を受けずに処分すると、交付決定が取り消され、補助金の全額に加算金を加えて返還しなければならない場合があります。承認を受けて処分する場合も、残りの価値に応じた金額を、補助金の額を上限として事務局に納付するのが一般的です。
撤退か移設かは返還額を確かめてから決める
不採算の店舗から撤退する場合でも、補助金で取得した設備を別の店舗に移して補助事業を続けられるなら、返還の負担を抑えられる場合があります。ただし、移設が認められるか、事業計画の変更として扱われるかは、補助金の種類や個別の事情によって異なります。
撤退や移設を決める前に、事務局に相談し、どの手続きが必要で、返還額がいくらになるかを確かめましょう。返還額は資金繰り表と経営改善計画の両方に影響するため、金融機関への説明の前に確認しておくことが重要です。事務局への手続きには時間がかかることもあるため、早めに動き出すことをおすすめします。
リスケと経営改善でよくある誤解

リスケや経営改善については、次のような誤解がよく見られます。
- リスケをすれば借金が減る → リスケは返済の時期を延ばすもので、借入金の額は減りません。利息も払い続ける必要があります。
- メインバンクと合意すれば、ほかの金融機関も自動的に応じてくれる → 金融機関ごとに判断します。それぞれに説明し、同意を得る必要があります。
- 計画は社長が理解していれば十分 → 金融機関は文書と数字で判断します。資金繰り表や経営改善計画書を用意しましょう。
- 返済日を過ぎてから相談しても同じ → 延滞すると信用が下がり、選べる方法が少なくなります。返済日の前に相談することが大切です。
- 不採算の店舗は早く撤退するほうがよい → 補助金で取得した設備がある場合は、撤退が返還につながることがあります。返還額を確かめてから判断しましょう。
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ストラーダビジネスサポートでは、資金繰り表の作成、経営改善計画の策定、金融機関への説明資料づくりと面談への同席など、返済条件の見直しと経営の立て直しを支援しています。会計ソフトのデータをもとにした資金繰りの見通しづくりから、リスケ期間中の月次の振り返りまで、継続して伴走します。
補助金で取得した財産の処分など、事務局への手続きに必要な書類の作成は、同じフロアのストラーダ行政書士法人が担当し、ビジネスサポートの補助金担当と連携して進めます。税務や決算については、グループの税理士法人と連携して対応します。資金繰りや返済の見直しでお困りの方は、お気軽にご相談ください。
※本記事は、2026年10月時点の情報をもとに作成しています。支援制度の内容や補助の上限額は改定されることがあるため、利用する前に中小企業庁などの公式情報をご確認ください。




