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2026.11.2 家族信託

家族信託で認知症に備える仕組みと資産承継の進め方【司法書士無料相談】

家族信託で認知症に備える仕組みと資産承継の進め方【Opus 5.5】

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「親が認知症になったら、実家や賃貸物件を売ることも修繕することもできなくなるのでは」。高齢の親を持つ方から、こうした不安の声をよく伺います。判断能力が低下した方の財産は、家族であっても自由に動かせません。その結果、建物の修繕や売却、借入れによる建替えといった判断が止まってしまうことがあります。

こうしたリスクに備える方法として注目されているのが家族信託(民事信託)です。親が元気なうちに、信頼できる家族に財産の管理を託しておくことで、将来判断能力が低下しても、契約で決めた範囲で財産の管理・処分を続けられます。

本稿では、司法書士の立場から、家族信託の仕組み、成年後見制度との違い、契約を結ぶタイミング、税金との関係、あわせて検討されることの多い生前贈与や共有不動産の論点までを整理します。法令や税制は、信託法の条文、国税庁、法務省の公表資料で確認できた内容に基づいて記載しています。

家族信託とは?認知症による「財産の凍結」に備える仕組み

家族信託とは?認知症による「財産の凍結」に備える仕組み

家族信託は、信託法に基づく信託の仕組みを、家族の財産管理に活用するものです。営業として信託を引き受ける信託会社ではなく、家族が財産の管理を引き受ける点が特徴です。

委託者・受託者・受益者の三者で成り立つ

信託法第3条は、信託の方法として、契約による方法(信託契約)、遺言による方法、自己信託の3つを定めています。家族信託で多いのは信託契約で、次の三者が登場します。

  • 委託者:財産を託す人(例:親)
  • 受託者:財産を預かり、目的に従って管理・処分する人(例:子)
  • 受益者:信託財産から生じる利益を受ける人(多くの場合、委託者である親自身)

委託者と受益者を同じ親にしておけば、財産の名義は子に移っても、賃料などの利益は引き続き親が受け取ります。「名義(管理する権限)」と「利益(受け取る権利)」を分けられることが、信託の大きな特徴です。

判断能力が低下すると何が起きるか

民法では、意思能力がない状態で行った法律行為は無効とされています。不動産の売買契約や賃貸借契約、金融機関との借入れなどは、本人の意思能力を前提とした手続きです。そのため、所有者である親の判断能力が大きく低下すると、家族が代わりに売却や契約を進めることはできません。

家族信託で受託者に管理・処分の権限を移しておけば、その後に親の判断能力が低下しても、受託者が信託の目的に沿って手続きを行えます。

受託者には法律上の義務がある

受託者は、財産を自由に使えるわけではありません。信託法は、受託者に対し、信託の本旨に従って事務を処理する義務と善良な管理者の注意義務(第29条)、受益者のために忠実に行動する忠実義務(第30条)、信託財産を自分の財産と分けて管理する分別管理義務(第34条)を課しています。受託者になる家族には、これらの義務を果たす覚悟と、記録を残す習慣が求められます。

成年後見制度との違い:家族信託はどんな場面に向いているか

成年後見制度との違い:家族信託はどんな場面に向いているか

判断能力の低下に備える制度としては、成年後見制度もあります。どちらが適しているかは、守りたいものと、やりたいことによって変わります。

法定後見制度

法務省の説明によると、法定後見制度は、本人の判断能力が不十分になった後に、家庭裁判所が選任した成年後見人等(成年後見人・保佐人・補助人)が本人を法律的に支援する制度です。権限は基本的に法律で定められています。本人の財産を守ることが目的のため、積極的な資産の組替えや、相続対策を目的とした財産の移動には向きません。

任意後見制度

任意後見制度は、本人に判断能力があるうちに、将来の支援者と支援の内容を契約で決めておく制度です。本人の判断能力が不十分になった後、家庭裁判所に任意後見監督人の選任を申し立て、選任されて初めて契約の効力が生じます。法務省の説明では、法定後見は後見監督人等を必要に応じて選任するのに対し、任意後見は全件で任意後見監督人が選任されます。

家族信託が向いているケース

家族信託は、信託契約で目的や受託者の権限を自由に設計できるため、賃貸不動産の管理・修繕・建替え・売却など、資産を動かす必要がある場面に向いています。一方で、家族信託でできるのは信託した財産の管理・処分に限られ、介護サービスの契約や施設入所の手続きといった身上保護は対象外です。必要に応じて任意後見と組み合わせることも検討します。

比較の視点 家族信託 法定後見 任意後見
開始の時期 契約の効力発生時(元気なうちから) 判断能力の低下後、家庭裁判所の審判で開始 判断能力の低下後、任意後見監督人の選任で開始
担い手の決め方 委託者が受託者を選ぶ 家庭裁判所が選任 本人が契約で選ぶ
対象 信託した財産の管理・処分 財産管理と身上保護 契約で定めた範囲
監督 契約で信託監督人等を置くことも可能 家庭裁判所が監督 任意後見監督人が監督
資産の組替え 信託目的の範囲で柔軟に可能 本人保護の観点から慎重 契約の範囲内

家族信託の設計で決めておくべきこと

家族信託の設計で決めておくべきこと

家族信託は自由度が高い分、契約書の内容がそのまま将来の運用を左右します。設計段階で次の点を具体的に決めておきます。

信託する財産の範囲

自宅、賃貸不動産、金銭など、どの財産を信託するかを決めます。すべての財産を信託する必要はありません。将来売却や建替えの可能性がある不動産や、受託者が管理すべき金銭を中心に、目的に合った範囲を選びます。

信託の目的と受託者の権限

「委託者の生活の安定」「賃貸不動産の適切な維持管理」など、信託の目的を明確にします。そのうえで、受託者が売却できるのか、建替えのために借入れや担保設定ができるのかを、契約書に具体的に書いておきます。権限があいまいだと、いざ売却や借入れをしようとしたときに、取引先や金融機関から手続きを止められるおそれがあります。

受益者の死亡後の承継先

信託契約では、当初の受益者が亡くなった後に受益権を取得する人(第二受益者)や、信託終了時に財産を受け取る人を定めておけます。信託法第91条は、受益者の死亡により順次ほかの者が受益権を取得する定めのある信託(いわゆる受益者連続型信託)について、信託がされた時から30年を経過した時以後に受益権を取得した受益者が死亡するまで、または受益権が消滅するまでの間、効力を有すると定めています。遺言では難しい「次の次」の承継先まで指定できることが、家族信託の特徴のひとつです。

信託の登記と金銭の管理

不動産を信託する場合は、所有権の移転とあわせて信託の登記を行います。信託法第14条により、登記をしなければ、その財産が信託財産に属することを第三者に対抗できません。金銭を信託する場合は、受託者の固有の財産と混ざらないよう、信託専用の口座で管理します。信託専用口座の取扱いは金融機関によって異なるため、早めに確認しておくことが大切です。

契約を結ぶタイミングと判断能力の確認

契約を結ぶタイミングと判断能力の確認

家族信託で最も大切なのは、委託者である親が契約の内容を理解し、自分の意思で判断できるうちに契約を結ぶことです。

「まだ大丈夫」のうちに準備を始める

信託契約も契約である以上、委託者に意思能力が必要です。判断能力が大きく低下した後では、契約自体を結べない可能性があります。物忘れが気になり始めた段階や、医師から認知症の診断を受ける前の段階で、家族で話し合いを始めることをおすすめします。診断の有無だけで一律に可否が決まるわけではありませんが、判断能力に疑問が生じると、契約の有効性を後から争われるリスクが高まります。

公正証書で作成しておく意味

信託契約は、法律上は当事者の合意で成立し、公正証書でなければならないわけではありません。ただし、公証人が関与して公正証書で作成しておけば、契約時に本人の意思を確認した経過が残り、後日の紛争予防や、金融機関での口座開設の手続きにも役立ちます。実務では公正証書で作成するケースが多くみられます。

家族全員で話し合う

受託者を誰にするか、財産をどう承継させるかは、ほかの家族の利害にも関わります。委託者・受託者だけで進めず、推定相続人となる家族にも内容を共有しておくことで、将来の不信感や争いを防ぎやすくなります。

家族信託と税金:節税策ではないことを理解する

家族信託と税金:節税策ではないことを理解する

家族信託は財産管理のための仕組みであり、それ自体で相続税が少なくなるものではありません。相続税対策を考える場合は、生前贈与などほかの方法と組み合わせて検討します。

信託の設定と相続時の課税

相続税法第9条の2は、適正な対価を負担せずに信託の受益者等となる者がいる場合、その者が信託に関する権利を委託者から贈与(委託者の死亡に基因する場合は遺贈)により取得したものとみなすと定めています。親が委託者兼受益者となる信託では、信託を設定しても利益を受ける人は親のままです。そして、受益者である親が亡くなり、第二受益者が受益権を取得すると、その受益権は相続税の対象となります。受益者をいつ、誰にするかで課税関係が変わるため、設計段階で税理士の確認を受けることが重要です。

暦年贈与の基礎控除と「7年加算」

国税庁によれば、暦年課税の贈与税は、1年間に受けた贈与の合計額から基礎控除額110万円を差し引いて計算します。ただし、相続や遺贈で財産を取得した人が、亡くなった方から生前に贈与を受けていた場合、その贈与財産は相続税の課税価格に加算されます。

この加算対象期間は、令和6年1月1日以後の贈与から、相続開始前3年以内から7年以内へと段階的に延長されています。相続開始が令和13年1月1日以後の場合は、相続開始前7年以内の贈与がすべて加算対象となります。なお、相続開始の日が令和9年1月2日以後の場合、延長された期間(相続開始前3年以内を除く期間)に受けた贈与については、合計100万円までは加算されません。相続人となる子や配偶者への贈与は加算の対象になりやすく、早めに始めるほど効果を見込みやすいといえます。

納税資金の準備も忘れずに

相続税は、原則として金銭で納めます。財産の多くが不動産の場合、納税資金が不足することがあります。家族信託や生前贈与と並行して、納税資金をどう準備するかも検討しておきます。生命保険の活用などを検討する場合は、契約形態によって課税関係が変わるため、専門家に確認してから進めます。

共有不動産や資産管理会社など、あわせて検討したい論点

共有不動産や資産管理会社など、あわせて検討したい論点

家族信託の相談では、ほかの不動産や会社の扱いもあわせて話題になることが少なくありません。

兄弟姉妹との共有不動産

相続で取得した不動産を兄弟姉妹で共有していると、賃料の分配や固定資産税の負担をめぐって不公平感が生じやすくなります。共有不動産全体を売却するには共有者全員の関与が必要なため、親族間の調整が難航することもあります。親族間で持分を売買する場合は、時価を意識した価格設定が欠かせません。相続税法第7条は、著しく低い価額の対価で財産を譲り受けた場合、時価との差額を贈与により取得したものとみなすと定めています。

資産管理会社の活用

不動産の管理を会社で行う方法もあります。既存の会社を活用する場合、不動産業を行うために会社の目的を変更し、その登記を申請します。国税庁の登録免許税の税額表では、登記事項の変更の登記は申請1件につき3万円とされています。会社で不動産を取得・管理する場合は、法人税、役員報酬、相続時の株式評価などの税務面も含めて検討が必要です。

専門家の連携が欠かせない

家族信託の契約書作成と信託の登記は司法書士、相続税や贈与税の試算は税理士、不動産の評価や売却は不動産の専門家というように、相続対策は複数の分野にまたがります。窓口を一本化して、全体の方針を整理しながら進めることが、手戻りを防ぐ近道です。

家族信託と相続対策のお悩みはストラーダグループへ

家族信託と相続対策のお悩みはストラーダグループへ

家族信託は、親が元気なうちに準備を始めることで、将来の財産の凍結を防ぎ、家族の希望に沿った資産承継を実現しやすくする仕組みです。一方で、契約書の設計、信託の登記、金融機関との調整、税金の試算など、検討すべきことは多岐にわたります。

ストラーダグループでは、司法書士法人が信託契約の設計や登記を担当し、グループ内の税理士法人と連携して、相続税・贈与税の観点も含めたご提案を行っています。「うちの場合は家族信託が合うのか」「何から始めればよいか分からない」という段階でも、お気軽にご相談ください。

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この記事の監修者
宮崎 晋
司法書士
大学在学中に行政書試験に合格し、司法書士を目指す。 大学卒業後、司法書士事務所で勤務。 決済に強い事務所、相続関連に強い事務所、商業・法人登記に強い事務所で補助者として経験を積む。
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