これから事業を始める方や、開業して間もない方にとって、補助金は、資金の負担を軽くできる、魅力的な制度です。融資と違って、原則として、返済が不要なため、初期の投資を抑えたい創業者に、人気があります。
しかし、創業や開業の補助金には、「採択されなければ、もらえない」「後払いで、先に資金が必要」「公募の期間が短い」といった特徴があり、仕組みを知らずに進めると、思ったように活用できないことがあります。
この記事では、創業・開業で使える補助金の種類と、特徴、申請の流れ、注意点、融資との組み合わせ方を解説します。以前は「創業補助金」という名前の制度がありましたが、現在は、複数の制度から、自分に合ったものを選ぶ形になっています。2026年10月時点で確認できる内容を、まとめました。
Contents
創業補助金とは?現在の考え方

かつては、創業する方向けの「創業促進補助金」や、事業を引き継いだ方向けの「第二創業促進補助金」といった制度があり、補助率が3分の2、補助金額が、100万円から200万円といった内容で、募集されていました。これらの制度は、応募の期間が限られ、採択率も低かったため、難易度の高い補助金として知られていました。
現在は、「創業補助金」という名前の、ひとつの制度は、案内されていません。創業者は、次のような、複数の制度の中から、自分の事業に合ったものを探して、活用する形になっています。
| 種類 | 主な内容 |
|---|---|
| 小規模事業者持続化補助金(創業型) | 創業後間もない小規模事業者の、販路の開拓や、業務の効率化の取り組みを支援する |
| 設備投資や、新事業向けの補助金 | ものづくり補助金や、新事業進出に関する補助金など。年度ごとに、名称や枠が見直される |
| IT・デジタル化に関する補助金 | ソフトウェアや、クラウドサービスの導入を支援する(以前の「IT導入補助金」の流れをくむ制度) |
| 自治体の創業支援の補助金・助成金 | 都道府県や、市区町村が、独自に行う、創業時の費用の補助 |
| 雇用に関する助成金 | 従業員を雇ったときなどに、条件を満たすと、支給される。補助金とは別の仕組み |
制度の内容や、公募の時期は、年度ごとに変わります。申請を考えるときは、必ず、公式サイトで、最新の公募要領を確認してください。
小規模事業者持続化補助金(創業型)

創業直後の事業者が、最も検討しやすい補助金のひとつが、小規模事業者持続化補助金の「創業型」です。
制度の概要
2026年度の公募要領では、創業型の主な内容は、次のように案内されています。
- 対象:創業後1年以内の小規模事業者(開業日が、公募の締切から、さかのぼって1年以内の事業者)など
- 条件:市区町村などが実施する「特定創業支援等事業」による支援を、受けていること
- 補助率:3分の2
- 補助の上限:200万円(特例を活用した場合は、最大250万円)
通常の枠(一般型)の補助上限は、50万円ですが、創業型は、上限が高く設定されています。ただし、公募ごとに、要件や、金額が見直されることがあります。申請の締切や、対象となる開業の期間は、公募のたびに変わるため、最新の公募要領を確認しましょう。
特定創業支援等事業とは
特定創業支援等事業は、市区町村や、商工会議所、金融機関などが連携して行う、創業者向けの継続的な支援です。経営、財務、人材育成、販路開拓の、4つの分野の知識を学ぶ、セミナーや、個別の相談などで構成され、一定の期間にわたって、支援を受けます。支援を受けると、市区町村から、証明書が発行されます。
この証明書は、補助金の申請の条件になるほか、会社設立時の登録免許税の軽減や、創業融資の優遇などにも使える場合があります。創業を考えている段階で、お住まいの市区町村に、早めに確認しておくと、さまざまな場面で役立ちます。
補助の対象となる経費
持続化補助金の対象になる経費は、販路の開拓や、業務の効率化に、使うものです。たとえば、次のような経費が、対象になる場合があります。
- チラシや、パンフレットの作成費、広告費
- ホームページの作成費、ウェブサイトの関連費
- 店舗の改装費(一定の条件を満たす場合)
- 機械装置の購入費
- 展示会への出展費
対象になる経費や、金額の上限は、公募要領で決められています。申請する前に、確認しましょう。
設備投資や、新事業向けの補助金

事業の立ち上げや、新しい事業への進出で、設備投資が大きくなる場合は、ものづくり補助金や、新事業進出に関する補助金が、候補になります。補助の上限額が大きく、数千万円規模の制度もあります。
ただし、こうした補助金は、事業計画書の内容が、細かく審査され、賃上げの計画などの、要件が設けられていることが多くあります。創業直後の事業者は、実績が少ないため、準備や、計画づくりに時間がかかります。また、制度の名称や、枠、募集の時期は、年度ごとに見直されています。申請を考えるときは、事務局の公式サイトで、最新の情報を確認してください。
自治体の創業支援の補助金・助成金

都道府県や、市区町村は、独自の創業の支援制度を設けている場合があります。たとえば、創業の費用の一部を補助する制度や、創業の拠点(事務所の家賃)を補助する制度などです。
自治体の制度は、地域によって、内容が大きく異なります。国の補助金と、併用できる場合もあるため、事業を行う地域の、自治体や、商工会議所の窓口に、問い合わせてみましょう。自治体の制度は、国の制度に比べて、競争が少ない場合もあるため、見落とさずに、チェックすることをおすすめします。
補助金の基本的な仕組みと、注意点

補助金を活用するときは、次の点に、注意が必要です。
採択されなければ、もらえない
補助金は、要件を満たして申請しても、審査に通る(採択される)とは限りません。採択率は、制度や、公募の回によって、異なります。審査は、事業計画書の内容にもとづいて行われるため、計画書の完成度が、結果を左右します。
後払いが原則
補助金は、原則として、事業を実施して、支払いを終えたあとに、実績の報告を行い、確定した金額が、あとから支払われる、後払いの仕組みです。そのため、補助の対象となる費用は、いったん、全額を自分で、支払う必要があります。つなぎの資金として、融資が必要になる場合もあります。
交付決定の前の発注は、対象外
多くの補助金では、補助金の交付が決まる前(交付決定の前)に、発注や、契約、支払いを行った経費は、補助の対象になりません。補助金を活用する場合は、スケジュールを、慎重に管理する必要があります。
補助率と、補助上限額
補助率とは、事業に使った金額のうち、補助金が占める割合です。たとえば、補助率が3分の2の場合、300万円を使うと、200万円が補助され、残りの100万円は、自己負担です。さらに、補助の上限額を超える部分は、補助されません。補助率と上限額の両方を、確認しておきましょう。
公募の期間が限られている
補助金の申請は、募集の期間が、決まっています。期限を過ぎると、受け付けてもらえません。募集の開始から、締切まで、1か月程度しかない場合もあるため、事前に、計画書を準備しておくことが大切です。
事業のあとの報告義務がある
補助金を受けたあとも、事業の状況を報告する義務があります。補助金で取得した設備は、一定の期間、処分に制限があります。無断で、売却や、転用をすると、補助金の返還を求められることがあります。
補助金の申請から受け取りまでの流れ

補助金の、一般的な流れは、次のとおりです。
| 順番 | 内容 |
|---|---|
| 1 | 使える補助金を調べ、公募の要領を確認する |
| 2 | 事業計画書などの、申請の書類を準備する |
| 3 | 電子申請などで、申請する(締切に注意) |
| 4 | 審査を受け、採択の発表を待つ |
| 5 | 交付の申請を行い、交付決定を受ける |
| 6 | 事業を実施して、費用を支払う |
| 7 | 実績を報告し、補助金が支払われる |
| 8 | 事業の状況を、一定の期間、報告する |
電子申請は、本人のIDで行う
多くの補助金は、電子申請で、行います。電子申請には、事業者本人の「GビズIDプライム」のアカウントが、必要になります。アカウントの取得には、時間がかかることがあるため、補助金の申請を考えたら、早めに、取得の準備を始めましょう。IDは、事業者本人が管理するもので、他人に預けたり、代わりに送信してもらったりするものではありません。
補助金の審査で評価されやすい事業計画書とは

補助金の採択は、事業計画書の内容によって、大きく左右されます。評価されやすい計画書には、次のような特徴があります。
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| 補助金の目的に合っている | 公募要領に書かれた、補助金の目的や、審査の項目に、きちんと対応している |
| 課題と、取り組みのつながりが明確 | 事業の現状と課題を整理して、その課題を解決する取り組みを、具体的に示している |
| 数字の根拠がある | 売上や、利益の見込みに、計算の根拠があり、実現できる計画になっている |
| 経費が適切 | 補助の対象となる経費が、見積書で裏付けられ、金額が妥当である |
| 実行できる体制とスケジュール | 実施の体制や、スケジュールが、現実的で、計画どおりに進められる |
公募要領の審査項目に、ひとつずつ答える形で、計画書を作ることが、採択のための基本です。事業の魅力を伝えようとして、補助金の目的から外れた内容を、書いてしまうと、評価されにくくなります。
補助金に取り組む前のチェックリスト

補助金の申請に取り組む前に、次の項目を確認しておきましょう。
- 自分の事業が、補助金の対象の要件(創業後の期間、従業員数、業種など)に合っている
- 公募の期間と、締切の日を、把握している
- 対象になる経費と、補助率、上限額を、確認している
- 市区町村の特定創業支援等事業など、必要な証明書の取得に、間に合う
- 電子申請に必要な、GビズIDのアカウントを、取得している(または、取得の準備を始めている)
- 事業計画書の作成に、必要な時間を確保できる
- 後払いに備えて、補助の対象の費用を、先に支払う資金を用意している
- 交付決定の前に、発注や契約をしないよう、スケジュールを管理できる
採択されなかったときの備え
補助金は、必ず採択されるとは限りません。採択されなかった場合でも、事業を始められるように、補助金がなくても、成り立つ計画にしておくことが大切です。たとえば、融資を主な資金源として、補助金は、追加の資金としてとらえておくと、採択の結果に、事業が左右されません。また、一度、採択されなかった場合でも、計画を見直して、次の公募に、再び申請することが、できる制度もあります。
補助金と、創業融資の組み合わせ方

補助金は、後払いのため、融資と組み合わせて、使うことが、よくあります。
- 設備投資や、開業の費用は、創業融資で、先にまかなう
- 補助金が入金されたら、その資金で、融資の返済や、次の投資に充てる
- 補助金が採択されなかった場合でも、事業を始められるよう、融資を軸に、計画を立てる
補助金は、採択されるかどうか、事前には分からないため、補助金の入金を、前提にした資金計画は、避けることが大切です。融資の詳しい内容は、「創業融資とは?種類・条件・金利・流れを徹底解説」で解説しています。
創業・開業の補助金でよくある誤解

補助金については、次のような誤解がよく見られます。
- 要件を満たせば、必ずもらえる → 審査があり、採択されない場合もあります。予算にも限りがあります。
- 採択されれば、すぐにお金が入る → 後払いです。実績の報告のあとに、支払われます。
- 計画の前に、設備を発注してもよい → 交付決定の前の発注は、対象外になる場合が多くあります。
- 創業補助金は、今も同じ名前である → 以前の制度は、現在は、複数の制度に、変わっています。
- 補助金は、一度受けたら、使い道は自由である → 対象の経費や、報告の義務、処分の制限があります。
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※本記事は、2026年10月時点の情報をもとに作成しています。補助金の制度、金額、公募の時期、要件は、変更されることがあります。申請の前に、事務局や、自治体の公式サイトで、最新の公募要領をご確認ください。補助金は、採択を保証するものではありません。




