起業するときに銀行から融資を受けたいと考えても、「事業の実績がないのに貸してもらえるのか」「銀行は何を見て判断するのか」が分からず、不安に感じる方は多いのではないでしょうか。
この記事では、銀行が融資を判断するときの基本的な考え方と、創業時に重視されるポイント、創業時に利用しやすい融資の種類、審査に通りやすくするための準備までを分かりやすく解説します。日本政策金融公庫の創業向け融資が2024年(令和6年)に見直された点も紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
Contents
銀行が融資を判断するときの基本的な考え方

銀行は、すでに事業を行っている会社に融資をする場合、通常は直近3期分程度の決算書の提出を求めます。決算書の数字から売上や利益、財務の安全性などを分析し(定量評価)、あわせて事業の将来性や経営者の資質、業界の動向など数字に表れない部分(定性評価)も確認したうえで、会社の信用度を評価します。
この評価をもとに、融資をするかどうか、金利をどのくらいにするか、担保や保証が必要かどうかなどが決まります。決算書は、銀行にとって会社の通知表のようなものといえます。
創業時の融資で銀行が重視する3つのポイント

創業時は決算書がないため、銀行は次のような点を中心に、融資をして返済してもらえるかを判断します。
事業計画書の説得力
創業時の審査で最も重視されるのが事業計画書です。誰に、どのような商品やサービスを、いくらで販売するのか、売上や経費の見込みにどのような根拠があるのかを具体的に示す必要があります。売上の見込みは、客単価×客数×営業日数のように計算の根拠を示すと、説得力が増します。すでに取引が決まっている顧客や、試験的に販売した実績があれば、あわせて示しましょう。
経営者の経歴と経験
銀行は、経営者がその事業をやり遂げられる人物かどうかを見ています。創業時は会社としての実績がないため、経営者自身の経験や能力が、事業の成功を判断する大きな手がかりになります。始める事業と同じ業界での勤務経験や、管理職としての経験、関連する資格、取引先との人脈などは、大きなアピール材料になります。未経験の分野で起業する場合は、どのように準備してきたかを具体的に説明しましょう。
自己資金の準備状況
自己資金は、経営者が計画的に起業の準備をしてきたかどうかを示す材料になります。日本政策金融公庫の創業向け融資では、以前は「創業資金総額の10分の1以上の自己資金」が要件とされていましたが、2024年の見直しでこの要件はなくなりました。
ただし、自己資金の重要性がなくなったわけではありません。毎月コツコツと積み立ててきた預金は、計画性や事業への本気度を示すものとして評価されます。一方で、申込みの直前に他人から借りてきたお金や、出どころを説明できないお金は、自己資金として評価されにくいため注意が必要です。
創業計画書に書くべき主な項目

事業計画書のなかでも、創業時の融資では「創業計画書」の内容が審査の中心になります。日本政策金融公庫の創業計画書の様式を参考にすると、主に次のような項目を記載します。銀行や信用金庫で制度融資を申し込む場合も、求められる内容はほぼ同じです。
| 項目 | 書くべき内容の例 |
|---|---|
| 創業の動機 | なぜこの事業を始めるのか、どのような強みを生かすのか |
| 経営者の略歴 | これまでの勤務先や担当業務、身につけた技術や資格 |
| 取扱商品・サービス | 商品やサービスの内容、価格、セールスポイント、競合との違い |
| 取引先・取引関係 | 販売先や仕入先の見込み、支払いや回収の条件 |
| 従業員 | 雇用する予定の人数や、家族従業員の有無 |
| お借入の状況 | 住宅ローンや自動車ローン、カードローンなど個人の借入れ |
| 必要な資金と調達方法 | 設備資金と運転資金の内訳、自己資金や借入れなどの調達方法 |
| 事業の見通し | 開業当初と軌道に乗った後の売上、経費、利益の見込みと根拠 |
必要な資金の合計と、調達方法の合計が一致しているかも確認されるポイントです。数字の整合性が取れていないと、計画全体の信頼性が下がってしまうため、提出前に必ず見直しましょう。
創業時に利用しやすい融資の種類

事業の実績がない創業時に、銀行が保証なしで直接融資をする「プロパー融資」を受けるのは難しいのが一般的です。創業時には、主に次の融資が利用されます。
日本政策金融公庫の創業向け融資
日本政策金融公庫は、国が出資する政府系の金融機関で、創業者向けの融資に力を入れています。創業向けの「新規開業・スタートアップ支援資金」は、新たに事業を始める人や事業開始後おおむね7年以内の人が対象で、融資限度額は7,200万円(うち運転資金4,800万円)です。女性、35歳未満または55歳以上の人などは、金利が低い特別利率の対象になります。
信用保証協会を利用した制度融資
制度融資は、都道府県や市区町村、信用保証協会、銀行や信用金庫などが連携して行う融資です。信用保証協会が保証をつけることで、実績のない創業者でも銀行から融資を受けやすくなります。自治体によっては、利子の一部を補助する利子補給や、信用保証料の補助を受けられることもあります。
| 項目 | 日本政策金融公庫 | 制度融資(銀行・信用金庫) |
|---|---|---|
| 保証 | 信用保証協会の保証は不要 | 信用保証協会の保証がつく(保証料がかかる) |
| 特徴 | 創業向けの制度が充実し、手続きが比較的シンプル | 利子補給などを受けられる場合があり、銀行との取引実績を作れる |
創業融資を申し込んでから融資を受けるまでの流れ

創業時の融資は、申し込んでからお金が振り込まれるまでに一定の時間がかかります。開業の予定日や、店舗の契約、設備の支払いの時期から逆算して、余裕をもって準備を始めましょう。
相談と必要書類の準備
まずは日本政策金融公庫の支店や、取引を希望する銀行・信用金庫に相談します。制度融資の場合は、自治体の窓口で先に相談やあっせんの手続きが必要なこともあります。創業計画書のほか、見積書、本人確認書類、自己資金を確認できる通帳、法人の場合は登記事項証明書などを用意します。
申込みと面談
書類を提出すると、担当者との面談が行われます。面談では、創業計画書の内容をもとに、事業の内容や経験、売上の見込みの根拠、資金の使い道などを質問されます。計画書に書いた内容を、自分の言葉で説明できるようにしておくことが大切です。店舗を構える事業では、担当者が店舗の予定地を確認しに来ることもあります。
審査と融資の実行
面談の後、審査が行われ、結果が通知されます。融資が決まると、契約の手続きを経て、指定した口座にお金が振り込まれます。日本政策金融公庫では申込みから融資まで1か月程度、信用保証協会の審査が加わる制度融資では1〜2か月程度かかることが多いため、開業日に間に合うように計画しましょう。
創業時の融資が難しくなりやすいケース

次のような場合は、創業時の融資の審査が厳しくなりやすいため、申し込む前に対策を考えておきましょう。
計画の根拠があいまいな場合
「頑張れば売れるはず」といった根拠のない売上の見込みや、業界の平均と比べて極端に高い利益率の計画は、説得力がありません。同じ業種の一般的な数字と比べて、無理のない計画になっているかを確認しましょう。
事業の経験がまったくない場合
事業と関係のない経歴だけで起業する場合は、事業をやり遂げられるかどうかを判断しにくくなります。開業前に同じ業界で働いてみる、研修を受ける、経験者を仲間に加えるなど、経験不足を補う工夫を伝えましょう。
税金や返済の滞納がある場合
住民税や国民健康保険料などの滞納や、ローン・クレジットカードの延滞があると、お金の管理がきちんとできていないと判断されやすくなります。滞納がある場合は、申込みの前に解消しておくことが大切です。
許認可が必要な事業で準備ができていない場合
飲食店の営業許可や建設業の許可など、許認可が必要な事業では、許可を受けられる見込みがあるかも確認されます。必要な許認可と取得の時期を事前に確認し、計画書にも記載しておきましょう。
銀行融資の審査に通りやすくするための準備

個人の信用状況を整える
銀行は、経営者個人のクレジットカードやローンの返済状況も確認します。延滞がある場合や、消費者金融からの借入れが多い場合は、審査に通りにくくなります。税金や公共料金の滞納がないかも、申込みの前に確認しておきましょう。
資金の使い道と必要額を明確にする
借りたお金を何に使うのかを、設備資金と運転資金に分けて具体的に示しましょう。設備資金は見積書をもとに金額を示し、運転資金は仕入れや人件費などの何か月分に充てるのかを説明できるようにしておきます。必要以上に多く申し込むと、計画の説得力が下がることもあります。
事業用の口座を作り、お金の流れを分ける
開業したら、事業用の口座を作り、事業のお金と個人のお金を分けて管理しましょう。売上の入金や経費の支払いを事業用の口座に集めておくと、銀行に事業の状況を説明しやすくなり、取引の実績にもなります。
試算表を毎月作る
開業後は、帳簿をきちんと付けて毎月の試算表を作り、売上や利益を確認しましょう。創業融資を受けた後も、計画どおりに進んでいるかを銀行に報告できるようにしておくと信頼が高まり、事業を広げるときの追加の融資や、将来のプロパー融資につながります。
銀行との付き合い方と融資を受けた後の注意点

創業時の融資は、銀行との長い付き合いの始まりです。融資を受けた後は、決められた返済を確実に続けることが何より大切です。業績が計画を下回りそうなときは、返済が難しくなる前に早めに銀行に相談しましょう。返済条件の見直しなどを相談できることもあります。
また、決算が終わったら、決算書を持って銀行に業績を報告すると、事業の状況を理解してもらいやすくなります。良いときも悪いときも情報を共有する姿勢が、銀行からの信頼につながります。
融資とあわせて検討したい資金調達の方法

創業時の資金は、融資だけでまかなうとは限りません。融資とあわせて、次のような方法も検討しておくと、資金計画に余裕が生まれます。
補助金・助成金
国や自治体の補助金・助成金は、原則として返済の必要がない資金です。ただし、多くは事業を実施して経費を支払った後に受け取る「後払い」のため、支払いの時点では自己資金や融資で立て替える必要があります。補助金を受け取るまでのつなぎの資金も含めて計画することが大切です。
家族や親族からの借入れ
家族や親族からお金を借りる場合は、借用書(金銭消費貸借契約書)を作り、返済の金額や期日を決めて、実際に返済を続けることが大切です。返済の取り決めがなかったり、返済の実態がなかったりすると、贈与とみなされて贈与税がかかるおそれがあります。
出資
会社を設立する場合は、家族や知人、投資家から出資を受ける方法もあります。出資は返済の必要がない一方で、出資した人が株主として経営に関わる権利を持つため、誰にどのくらい出資してもらうかは慎重に決めましょう。
銀行融資の条件を知って創業時の資金調達を進めよう

銀行は、通常は決算書をもとに融資を判断しますが、創業時は決算書がないため、事業計画書の説得力、経営者の経歴、自己資金の準備状況などを重視します。創業時は、日本政策金融公庫の創業向け融資や、信用保証協会を利用した制度融資を活用するのが一般的です。
創業計画書には、創業の動機や経営者の経歴、売上の見込みとその根拠、必要な資金と調達方法を、数字の整合性が取れた形でまとめることが大切です。申込みから融資の実行までは1〜2か月程度かかることもあるため、開業の予定日から逆算して早めに準備を始めましょう。また、補助金や親族からの借入れなど、融資以外の資金調達の方法もあわせて検討しておくと安心です。
事業計画をしっかり作り込み、個人の信用状況や資金の使い道を整えたうえで申し込みましょう。創業融資の条件については、「創業融資を受けるための条件とは?種類と審査のポイントを解説」もあわせてご覧ください。
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