起業のときに、資金が足りない場合の、調達方法のひとつとして、「クラウドファンディング」が、挙げられます。インターネットを通じて、事業の計画を、多くの人に知ってもらい、共感した人から、少額ずつ、資金を集める仕組みです。
この記事では、日本証券業協会の公表情報などをもとに、クラウドファンディングの種類(寄付型、購入型、投資型)と、起業時に、利用するときの、メリット・注意点を、整理します。株式投資型クラウドファンディングの、制度の内容(上限額など)や、融資との違い、利用の流れも、あわせて解説します。
なお、制度の内容は、改正されることがあります。この記事は、2026年10月時点の公表情報をもとにしています。利用する際は、各サービスの、最新の条件を、ご確認ください。
Contents
クラウドファンディングとは

日本証券業協会の案内によると、クラウドファンディングとは、「群衆(crowd)」からの「資金調達(funding)」の語を用いた造語で、一般に、新規成長企業などが、あるプロジェクトを行うために必要な資金を、インターネットを通じて、多くの人から、少額ずつ集める仕組みをいいます。
起業の段階から、利用することは、可能です。事業や商品への、共感を集めやすい事業ほど、向いているといわれています。
クラウドファンディングの種類

日本証券業協会の案内では、クラウドファンディングは、さまざまな枠組みで行われており、次の種類があるとされています。
| 種類 | 内容 | 起業での利用 |
|---|---|---|
| 寄付型 | 寄付として、資金を提供するのみ。見返りは、求めない | 社会的な活動や、支援を目的とするプロジェクトで使われることが多い。一般の営利事業では、あまり使われない |
| 購入型 | 支援者が、資金を提供し、製品やサービスなどを受け取る | 新商品や、新サービスの、開発・販売の資金として、利用しやすい |
| 投資型 | 支援者が、資金を提供し、株式やファンド(事業に対する出資)を取得する | 事業への出資を、募る方法。金融商品取引法の規制対象 |
投資型は、金融商品を取り扱うため、金融商品取引法の規制対象です。金融商品を勧誘するためには、金融商品取引業者としての登録が、必要です。そのため、起業する側が、自分で、投資を募るのではなく、登録を受けた業者のサービスを通じて、行うのが、一般的です。
購入型クラウドファンディング

購入型は、支援者が、資金を提供する代わりに、商品やサービスなどの「リターン」を、受け取る仕組みです。新しい商品の、開発や、製造、飲食店の開業、イベントの開催などで、利用されます。
メリット
- 商品を、市場に出す前に、反応を確かめられる
- 資金調達と同時に、事業の宣伝や、ファンづくりができる
- 融資のように、経営者の個人保証が、不要な場合が多い
- 支援者は、顧客になる可能性が高い
注意点
- 目標金額に達しないと、資金を、受け取れない仕組み(All or Nothing方式)のサービスもある
- リターンの、製造や、発送にかかる費用が、かかる
- サービス運営会社に、手数料を、支払う必要がある
- 支援者への、リターンの提供や、進捗の報告など、継続した対応が、必要になる
株式投資型クラウドファンディング

株式投資型クラウドファンディングとは、日本証券業協会の案内によると、新規・成長企業へのリスクマネーの、円滑な供給を目的として、2015年5月に創設された、非上場株式の発行を通じた、資金調達の制度です。金融商品取引法などの改正と、日本証券業協会の自主規制規則の整備により、創設されました。
制度の主なポイント
日本証券業協会の制度概要によると、主なポイントは、次のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 取り扱う業者 | 金融商品取引業者として登録を受けた、クラウドファンディング業者 |
| 審査 | 業者が、株式を発行する会社の財務状況、事業計画の妥当性、資金使途などを審査し、適当と認めたものだけを取り扱う |
| 発行者の調達額の上限 | 同一の会社が、1年間に調達できる金額は、5億円未満 |
| 投資家1人の投資上限 | 同一の会社が発行する株式について、年間200万円を超えない範囲で、投資者の財産の状況に応じた額、または、50万円のいずれか高い額 |
| 株式の性質 | 取引所に上場しておらず、流通取引を前提としていないため、換金性が著しく乏しい |
以前は、発行総額が1億円未満、投資家1人あたり50万円以下とされていました。現在は、制度が改正され、上の表のとおりになっています。古い情報を見るときは、数字が現在と異なる場合があるため、最新の内容を確認してください。
メリットと、注意点
株式を発行して、資金を集めるため、融資と違って、返済の義務は、ありません。一方、株主が増えることになり、株主への、定期的な情報提供や、株主との関係づくりが、必要になります。株式の発行や、株主の管理には、手続きと費用がかかります。
融資との違い

クラウドファンディングと、金融機関の融資は、仕組みや、性質が、異なります。
| 項目 | 融資 | クラウドファンディング |
|---|---|---|
| 返済 | 必要(利息も支払う) | 購入型は、返済ではなく、リターンの提供。投資型(株式)は、返済不要 |
| 審査 | 金融機関が、事業計画や、返済能力を審査する | サービス運営会社の審査があり、そのうえで、支援者の共感が必要 |
| 費用 | 利息、保証料など | サービスの手数料、リターンの製造・発送費など |
| 宣伝効果 | ほとんどない | 事業や商品の宣伝になる |
| 資金が入る時期 | 審査を経て、融資の実行まで | 募集期間の終了後(目標金額に達した場合) |
起業の資金調達では、融資とクラウドファンディングを、組み合わせて、利用する方法も、考えられます。たとえば、日本政策金融公庫の創業融資を利用しながら、新商品の開発資金の一部を、購入型のクラウドファンディングで、集めるといった方法です。
利用の流れ

クラウドファンディングを、利用するときの、おおまかな流れは、次のとおりです。
- 目的と、必要な金額を、決める(何のために、いくら必要か)
- サービス(運営会社)を、選ぶ(手数料、実績、種類などを比較)
- プロジェクトの内容を、作成し、運営会社の審査を受ける
- リターンの内容や、募集の期間を、決める
- 募集を開始し、情報の発信を続ける
- 募集の終了後、資金を受け取り、リターンを提供する
- 支援者へ、進捗や結果を、報告する
サービスを選ぶときの、ポイント

クラウドファンディングのサービスは、複数あり、それぞれ、特徴が異なります。選ぶときは、次の点を比較しましょう。
| 比較する点 | 確認する内容 |
|---|---|
| 種類 | 購入型、投資型など、自分の目的に合う種類か |
| 手数料 | 手数料率や、決済の費用、振込手数料など、実際に手元に残る金額 |
| 募集の方式 | 目標金額に達した場合のみ、資金を受け取る方式か、集まった分だけ受け取る方式か |
| 掲載の審査 | 審査の基準と、期間 |
| 掲載の実績・利用者数 | 同じ分野の、プロジェクトの実績や、支援者の数 |
| サポート | プロジェクトの作成や、告知の支援があるか |
投資型の場合は、サービスを運営する会社が、金融商品取引業者として登録されているかを、確認してください。
起業の資金調達の、全体像

起業の資金調達には、クラウドファンディングのほかにも、さまざまな方法があります。組み合わせて、考えると、資金計画を、立てやすくなります。
| 方法 | 特徴 |
|---|---|
| 自己資金 | 返済や、利息が不要。出どころを、説明できる形で、準備する |
| 融資(日本政策金融公庫など) | 返済が必要。創業期は、原則として、無担保・無保証人で、利用できる制度がある |
| 補助金・助成金 | 返済は不要な場合が多いが、原則として、後払い |
| クラウドファンディング | 共感を集めて、資金を調達できる。手数料や、リターンの費用がかかる |
| 出資(エンジェル投資家など) | 返済は不要だが、株主が増え、経営に関与される場合がある |
起業の資金の目安は、別の記事「株式会社で起業するのに必要な資金は?内訳と目安を解説」で、日本政策金融公庫の創業融資は、「創業融資は自己資金なしでも受けられる?現在の制度を解説」で、解説しています。
募集を始める前の、準備チェックリスト

募集を始める前に、次の準備ができているかを、確認しましょう。
- 必要な資金の総額と、使い道を、項目ごとに、整理した
- リターンの内容と、製造・提供にかかる費用、納期を、見積もった
- 手数料を差し引いた、手元に残る金額を、計算した
- プロジェクトの説明文や、写真、動画などの、素材を準備した
- 告知の方法(SNS、メール、知人への連絡など)を、決めた
- 募集の終了後に、必要な、経理や、税務の処理を、確認した
準備が不十分なまま、募集を始めると、目標金額に達しなかったり、リターンの提供が、遅れたりするおそれがあります。余裕を持って、準備を進めましょう。
成功させるためのポイント

クラウドファンディングで、資金を集めるためには、次の点が、重要です。
- 共感を呼ぶ、ストーリーを伝える:なぜ、その事業を始めるのかを、具体的に、伝える
- リターンの設計:支援者にとって、魅力的で、実現できる内容にする
- 事前の告知:募集の開始前から、SNSなどで、関心を持つ人を、増やしておく
- 目標金額の設定:必要な金額と、集められる見込みを、考えて決める
- 情報発信:募集期間中も、進捗を、こまめに発信する
個人を顧客とする事業は、共感を得やすく、成果を出しやすい傾向があります。一方、企業を相手にする事業は、クラウドファンディングに、向かない場合もあります。事業の性質に合うかどうかを、考えて、判断しましょう。
税金・経理の注意点

クラウドファンディングで、調達した資金は、種類によって、経理や税務上の扱いが、異なります。購入型で受け取る資金は、商品やサービスの対価として、売上などになる場合があります。株式投資型で調達する資金は、出資として扱われ、資本金などに、なります。
リターンの製造費や、サービスの手数料は、事業の費用になります。取り扱いは、内容や、会計の方針によって異なるため、早めに、税理士に確認しておきましょう。個人事業主が、購入型で資金を集めた場合の、所得の区分や、申告の方法も、確認が必要です。
支援者との、コミュニケーション

募集の期間中だけでなく、終了後も、支援者との、やり取りは、続きます。進捗の報告や、リターンの発送の連絡、感謝のメッセージなどを、こまめに、行うことで、支援者との信頼関係が、深まります。支援者は、そのまま、将来の顧客や、応援してくれる存在になる可能性があります。事業を、続けていくための、大切な財産になるため、丁寧な対応を、心がけましょう。
よくある失敗

次のような失敗に、注意しましょう。
- 目標金額に、達しなかった(告知が足りない、リターンに魅力がない)
- 資金を、集めたが、リターンの製造や、発送が、遅れてしまった
- 手数料や、リターンの費用を、見込まず、手元に残る資金が、少なかった
- 支援者への、報告を怠り、信頼を失った
- 投資型で、株主との関係を、考えずに、株式を発行した
よくある質問

Q1. 起業前でも、クラウドファンディングは、利用できますか?
利用できます。サービスによって、掲載の条件や、審査の基準が、異なります。事業計画や、プロジェクトの内容を、整理して、運営会社に、確認してください。
Q2. 資金が、集まらなかった場合は、どうなりますか?
目標金額に達しなかった場合に、資金を受け取れない方式のサービスが、あります。また、不成立でも、運営会社の手数料などが、かかる場合があるため、事前に、サービスの規約を、確認してください。
Q3. クラウドファンディングだけで、起業の資金を、まかなえますか?
集められる金額は、事業の内容や、告知の状況によって、大きく異なります。融資や、自己資金と、組み合わせて、資金計画を、立てるのが、一般的です。
Q4. 株式投資型クラウドファンディングで、株主が増えても、経営権は、守れますか?
発行する株式の数や、議決権の割合によって、異なります。資本政策(誰が、どれだけ、株式を持つか)を、事前に、専門家と、検討しておくことが、大切です。
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※本記事は、2026年10月時点の情報をもとに作成しています。制度の内容は変更されることがあるため、利用の前に、日本証券業協会などの公式情報をご確認ください。




