定年を迎えたあとや、定年が近づいたときに、「自分の経験を生かして、起業したい」と考える方は、増えています。このとき、「資金は、どうすればよいのか」「シニア向けの融資制度は、あるのか」と、気になる方も、多いでしょう。
この記事では、日本政策金融公庫(日本公庫)の公式案内をもとに、定年後の起業で利用できる融資制度(新規開業・スタートアップ支援資金)と、シニアの方が受けられる優遇を、整理します。あわせて、シニア起業で気をつけたい点や、資金の準備の考え方も、解説します。
なお、融資制度の内容は、変更されることがあります。この記事は、2026年10月時点の公表情報をもとにしています。申し込みの前に、日本政策金融公庫の最新の案内を、ご確認ください。
Contents
シニアの起業で利用できる、日本公庫の融資

新規開業・スタートアップ支援資金
日本政策金融公庫の国民生活事業では、新たに事業を始める方や、事業開始後おおむね7年以内の方を対象とした、「新規開業・スタートアップ支援資金」が、取り扱われています。公庫のホームページに掲載されている、主な内容は、次のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象 | 新たに事業を始める方、または、事業開始後おおむね7年以内の方(適正な事業計画を策定し、計画を遂行する能力が十分あると認められる方に限る) |
| 融資限度額 | 7,200万円 |
| 返済期間 | 設備資金は20年以内(うち据置期間5年以内)、運転資金は10年以内(うち据置期間5年以内) |
| 担保・保証人 | 相談しながら決める(創業期の方は、原則として、無担保・無保証人で、利用できる) |
| 利率 | 基準利率。ただし、一定の要件に該当する方は、特別利率 |
55歳以上の方は、特別利率の対象
公庫の案内によると、新規開業・スタートアップ支援資金では、女性の方、35歳未満または55歳以上の方が必要とする資金(原則として、土地にかかる資金を除く)は、特別利率Aの対象とされています。つまり、55歳以上の方は、年齢の要件を満たせば、優遇された利率で、融資を受けられる可能性があります。
なお、以前は、「女性、若者/シニア起業家支援資金」という名称で、案内されていた制度があります。現在は、公庫のホームページで、新規開業・スタートアップ支援資金の中で、案内されています。古い情報を見るときは、制度の名称や、融資限度額、対象となる期間(以前は「おおむね5年以内」など)が、現在と異なる場合があるため、最新の情報を確認してください。
創業期の方向けの優遇
公庫の「創業融資のご案内」によると、新たに事業を始める方や、事業開始後、税務申告を2期終えていない方には、次のような特徴があります。
- 原則として、無担保・無保証人で、各種融資制度を利用できる
- 創業支援貸付利率特例制度により、各種融資制度に定める利率から、0.65%引き下げ(雇用の拡大を図る場合は、0.9%引き下げ)
- 設備資金は20年以内、運転資金は原則10年以内と、長期で返済できる(新規開業・スタートアップ支援資金の場合)
ただし、審査の結果によっては、希望に沿えない場合があります。年齢に関係なく、事業計画の内容や、経営者の経験などが、総合的に確認されます。
そのほかの優遇が受けられる場合

公庫の新規開業・スタートアップ支援資金には、年齢以外にも、特別利率が適用される要件があります。定年後の起業でも、該当する可能性があるものを、挙げます。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 創業塾などの受講 | 創業塾や、創業セミナーなど(産業競争力強化法に規定される、認定特定創業支援等事業)を受け、認定市区町村が発行する証明書を取得した方(有効な証明書の場合に限る)は、特別利率A |
| 会計の基準の適用と、支援機関の助言 | 「中小企業の会計に関する基本要領」または「中小企業の会計に関する指針」を適用している(する予定の)方で、自ら事業計画書を策定し、認定経営革新等支援機関(税理士、公認会計士、中小企業診断士など)の指導・助言を受けている方は、特別利率A |
| 技術・ノウハウなどに、新規性がある | 他企業で利用されていない知的財産権に係る技術を利用して行う事業など、一定の要件に当てはまる方は、特別利率 |
| Uターン等による、地方での創業 | 東京圏から、東京圏以外の道府県などで、新たに事業を始める方などが対象 |
定年後に、地元へ戻って起業するケースなどでは、要件に当てはまる場合があります。詳しい条件は、公庫の案内で、確認してください。
経営者保証免除などの、特例制度

公庫の案内には、新規開業・スタートアップ支援資金と併用できる、特例制度として、「経営者保証免除特例制度」「創業支援貸付利率特例制度」「賃上げ貸付利率特例制度」が、挙げられています。担保や、保証人については、相談しながら決めていきます。
定年後の起業では、退職金などを、事業の資金に、充てる場合が多く、万が一の場合の、家計への影響を、抑えたいという、考えもあります。保証の扱いについて、事前に、支店の窓口で、確認しておくと、安心です。
シニア起業で、気をつけたいこと

1. 退職金や、貯蓄を、すべてつぎ込まない
定年後の起業では、退職金や、貯蓄が、事業の資金になる場合が、多くあります。しかし、事業が計画どおりに、進まなかった場合でも、老後の生活を、続けられるように、生活費や、老後資金は、事業の資金と、分けて確保しておくことが、大切です。
2. 無理のない規模で、始める
体力や、健康面も、考えて、無理のない規模で、始める方法もあります。たとえば、自宅で、始められる事業や、これまでの経験を、生かせる、コンサルティングなどのサービス業は、開業費を、抑えやすい傾向があります。
3. 事業計画を、具体的に作る
公庫の審査では、創業計画書の提出などを通じて、事業計画の内容が、確認されます。これまでの職歴や、経験、取引先の見込み、売上の根拠などを、具体的に、説明できるようにしておきましょう。
4. 公的年金と、社会保険の手続きを、確認する
会社を退職したあとの、健康保険や、国民年金の手続きには、期限があります。また、年金を受給しながら、働く場合は、働き方や、社会保険への加入の有無によって、年金の扱いが、変わる場合があります。年金事務所などに、事前に確認してください。退職後の手続きは、別の記事「起業のための退職手続きは?退職前後のチェックリスト」で、解説しています。
5. 事業承継の視点も持つ
定年後の起業でも、将来、後継者への引き継ぎや、事業の整理を、考えておくと、安心です。
シニアの強みを、生かせる起業の形

定年後の起業では、これまでに、培った経験や、人脈、専門知識を、生かせる事業が、選ばれる傾向にあります。たとえば、次のような形が、考えられます。
| 起業の形 | 特徴 |
|---|---|
| 経験を生かした、コンサルティング・研修 | 設備や在庫が、少なく、開業費を、抑えやすい。人脈や、実績が、強みになる |
| 専門技術を生かした、サービス | これまでの職種の知識や、資格を、そのまま、事業に生かせる |
| 小規模な、店舗の経営 | 内装や設備の費用が、かかるため、資金計画が、重要になる |
| フランチャイズへの加盟 | ノウハウの提供を受けられるが、加盟金や、ロイヤリティなどの、条件を確認する必要がある |
どの形でも、事業計画書で、なぜ、その事業なのか、これまでの経験を、どう生かせるのかを、説明できることが、大切です。
創業計画書で、伝えたいこと

公庫の創業計画書には、創業の動機や、経営者の略歴、取扱商品・サービスの内容、取引先、従業員の状況、必要な資金と調達の方法、事業の見通しなどを、記載します。定年後の起業では、次のような点を、意識して、書くと、説得力が増します。
- これまでの職歴や、経験が、事業にどうつながるか
- 見込みの取引先や、販売先が、すでにあるか
- 売上の見込みの、根拠(客数、単価、契約の見込みなど)
- 必要な資金と、その使い道、自己資金の額と出どころ
- 返済の計画(毎月の返済額と、売上の見込みの関係)
面談では、計画書の内容を、自分の言葉で、説明することが、求められます。計画書は、専門家のサポートを受けて作成しても、内容を、本人が、十分に、理解しておくことが、大切です。
開業後の、資金繰りと体制づくり

開業後は、売上の入金までに、時間がかかることもあるため、運転資金に、余裕を持たせましょう。また、帳簿の作成や、確定申告などの、経理の業務も、必要になります。会計ソフトの利用や、税理士への依頼を、検討しておくと、本業に、集中しやすくなります。
体調や、家族の状況に、変化があった場合に備えて、事業の縮小や、休業、承継などの方針も、あらかじめ、考えておくと、安心です。
個人事業と、法人の選び方

定年後の起業では、個人事業主として始める方法と、会社(法人)を設立して始める方法が、あります。個人事業は、開業の手続きが、比較的簡単で、費用も抑えやすい点が、特徴です。法人は、設立の費用や、手続きが必要ですが、取引先からの信用や、事業の拡大の面で、有利な場合があります。
また、法人にすると、役員も、社会保険(健康保険・厚生年金)への加入が、必要になるのが、一般的です。年金を受給している場合は、働き方や、報酬の額によって、年金の受給額に、影響する場合があります。事前に、年金事務所や、専門家に、確認してください。
融資以外の資金の準備

融資のほかにも、次のような資金の準備方法が、あります。
- 自己資金(退職金、預貯金など):出どころが明確で、通帳などで確認できる形で、準備する
- 補助金・助成金:原則として、後払いで、一時的に、立て替える資金が必要
- 自治体の制度融資:自治体、信用保証協会、金融機関が連携する融資。条件は、自治体ごとに異なる
- 家族からの援助:贈与か借入かを、明確にし、贈与の場合は、贈与契約書を作成する
自己資金の考え方は、別の記事「創業融資は自己資金なしでも受けられる?現在の制度を解説」で、起業に必要な資金の目安は、「株式会社で起業するのに必要な資金は?内訳と目安を解説」で、解説しています。
融資を申し込むときの、流れ

公庫の創業融資の、おおまかな流れは、次のとおりです。
- 創業計画書などの、必要書類を準備する
- インターネットや、窓口などで、申し込む
- 面談(事業の内容や、経歴などについて、質問を受ける)
- 審査
- 融資の決定、契約、融資金の送金
必要書類の詳細は、別の記事「日本政策金融公庫の創業融資の必要書類は?個人・法人別に解説」で、解説しています。公庫の国民生活事業では、全国152支店に、「創業サポートデスク」が、設置されており、創業計画書の立て方や、融資の申し込みの流れなどについて、案内を受けられます。
よくある質問

Q1. 定年後でも、創業融資は、受けられますか?
年齢の上限は、公庫のホームページの案内には、示されていません。新たに事業を始める方で、適正な事業計画を策定し、計画を遂行する能力が、十分あると認められる場合が、対象です。55歳以上の方は、特別利率の対象にもなります。
Q2. シニア起業の、融資の限度額は、いくらですか?
新規開業・スタートアップ支援資金の融資限度額は、7,200万円です。ただし、実際の融資額は、事業計画や、資金の使いみちなどによって、決まります。
Q3. 退職金を、自己資金にしても、よいですか?
退職金は、通帳で、受け取りが確認できれば、自己資金として、準備できます。ただし、老後の生活資金を、残しておくことが、大切です。事業にあてる金額は、慎重に決めてください。
Q4. 融資を受けるために、専門家に相談したほうがよいですか?
事業計画書の作成や、資金計画に、不安がある場合は、税理士などの専門家や、公庫の創業サポートデスクに、相談する方法があります。認定経営革新等支援機関の指導や助言を受けると、利率の優遇が受けられる場合もあります。
定年後の起業のご相談はストラーダグループへ

ストラーダグループでは、定年後の起業を考える方の、会社設立や、資金計画、日本政策金融公庫の創業融資のご相談を、税理士などの専門家が、お受けしています。創業計画書の作成、資金調達の組み立て、設立後の税務まで、状況に合わせて、サポートします。初回のご相談は無料です。お気軽にご相談ください。
※本記事は、2026年10月時点の情報をもとに作成しています。制度の内容は変更されることがあるため、申し込みの前に、日本政策金融公庫の公式情報をご確認ください。




