創業融資を受けるには、自己資金が必要だと言われています。しかしこれは大きな誤解です。
日本政策金融公庫には「新創業融資制度」があり、要件を満たせば融資が受けられます。ここでは、自己資金なしで受けられる創業融資の要件について解説しましょう。
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創業融資を受けるために必要な2つの要件とは?
創業融資を受けるための要件は次の2つです。
- 対象者の要件
- 自己資金の要件
この2つの要件全てを満たす場合に、日本政策金融公庫の新創業融資制度が受けられます。
創業融資の対象者についての要件
「創業融資」と言いますが、1年目のみが対象というわけではありません。一般的な融資を受けるときには「決算書3期分が必要」といわれます。その影響もあり新たに事業を始める方以外に、事業開始後税務申告を2期終えていない方も対象です。
創業融資の自己資金についての要件
対象者要件と異なりますが、事業開始後税務申告を1期終えていない場合、創業時に創業資金総額の10分の1以上の自己資金を確認できれば、要件クリアです。また次の要件にあてはまる人も自己資金要件を満たします。
- 現在就業している企業と同じ事業を始める人
- 産業競争力強化法に定める認定特定創業支援等事業を受けて事業を始める人
本当に自己資金なし?創業融資で「自己資金」となり得るもの
「創業時に創業資金総額の10分の1以上の自己資金」という要件がありますが、ここで注意が必要です。それは「創業資金」として認められるものしか「自己資金」としてカウントされないということです。
「自己資金はやる気の指標」といわれることもありますが、無理に自己資金を増やす必要もありません。この判断は「預金通帳で支出が確認できる、出所が明確なお金」と考えるとよいでしょう。例えば退職金や保険の満期返戻金であれば、自己資金に充当しても出所が通帳に記載されるので明確です。
創業融資の際の自己資金については「【プロ解説】創業融資を申し込むときの自己資金はいくら必要?」の記事もあわせてご覧になってみてください。
自己資金を増やすための7つの方法とは?
自己資金を増やすためには、下記の7つの方法があります。
- クラウドファンディングなどで出資を募る
- みなし自己資金を申告する
- 保険を解約する
- 現物出資を申告する
- 親族から贈与を受ける
- 資産を売却する
- 退職金をもらう
それでは、順番に解説するので、一緒に見ていきましょう。
クラウドファンディングなどで出資を募る
起業家が資金を集めるひとつの方法は、クラウドファンディングを利用することです。この方法では、インターネットを通じて多くの人に事業計画を紹介し、賛同者から資金を募ることが可能になります。
重要なのは、集めた資金が何のために使われるのか、その目的や計画を明確に伝えることです。事業のビジョンを共有し、支援者との信頼関係を築くことが、成功への鍵となります。
資金調達は多くの方法がありますが、クラウドファンディングは特に直接多くの人々と繋がれる点で有効です。事業を始めるための資金を集めたい起業家にとって、クラウドファンディングは有力な選択肢のひとつと言えるでしょう。
みなし自己資金を申告する
起業前に支出した費用も「みなし自己資金」として申告可能です。これは、事業立ち上げに必要な機器やパソコン、車両などの購入で既存の自己資金を消費した場合、その支出を自己資金として認めてもらえる制度です。
この際、購入に使った自己資金の存在を示す領収書や口座引き落とし履歴などの証明資料が必要になります。融資を申し込む時にこれらの資料を準備することで、スムーズな資金調達の道が開けます。
保険を解約する
保険を解約し、積立金を自己資金に加える手段は、資金調達の選択肢の一つです。保険に積み立ててきた金額を解約により取り戻し、それを事業資金として活用する方法です。
ただし、解約手続きを行い、積立金が実際に口座に入金されるまでは、その資金を自己資金として計上することはできません。融資を申し込む予定がある場合は、手続きに時間がかかることを考慮し、早めに解約の手続きを開始しましょう。
現物出資を申告する
現物出資を事業の自己資金として申告する方法は、起業時に有効です。もし創業にあたり、自分が既に持っている設備や物品を事業で利用する場合、これらを「現物出資」として自己資金に算入できます。
車やパソコン、有価証券、不動産、さらには商品や原材料など、事業に役立つあらゆるものが対象になり得ます。これらの資産を正式に事業用として活用することで、融資を受ける際の自己資金として認められる可能性があります。
親族から贈与を受ける
親族からの贈与は、起業資金として自己資金に加えることができます。借り入れと異なり、贈与された資金は自己資金と認められるため、支援を申し出てくれる親族がいれば、贈与の形を取ることが望ましいです。
ここで重要なのは、贈与契約書を作成することです。これにより、資金が「見せ金」と疑われることなく、正式な自己資金として認識されます。
親族にもこのプロセスを理解してもらい、融資の審査過程で問い合わせがあった際には、適切に説明できるよう準備しておくことが大切です。
資産を売却する
資産売却で資金を確保する方法は、起業のための自己資金を増やす有効な手段です。保有している車や土地、パソコンなどの価値ある動産や不動産が事業に活用できない場合、これらを売却して得た資金を自己資金に加えることが可能です。
この方法は、直接的に現金を生み出し、事業計画の資金調達に役立てることができます。重要なのは、売却により得られる資金を事業の成長に賢く利用することです。資産の価値を見極め、必要な資金を効率的に集めましょう。
退職金をもらう
退職金を受け取り、それを自己資金として活用する方法は、起業資金を準備する際のひとつの選択肢です。会社を辞めて新たな事業を始める場合、退職金は重要な資源になります。
また、実際に退職金を手にしていなくても、「受け取り予定」の退職金を自己資金として計画に組み入れることが可能です。この手続きを行うには、現職の会社から退職金支払いの確約を受け、その証明書を融資の申請資料に添える必要があります。
新創業融資制度以外にもある!創業融資制度4つ
自己資金ゼロでも受けられる創業融資として、下記の3つがあります。
- 中小企業経営力強化資金
- 挑戦支援資本強化特例制度
- 新創業融資制度
これらはどれも、創業融資制度として設置されており要件に該当すれば自己資金なしでも融資がうけられるものです。新創業融資制度の申請書類と同じもので融資の申請ができますので、複数検討しておくことをお勧めします。
ただし注意点があり、複数からの融資をうけると1種類の融資あたりに借りられる金額が少なくなります。「1か所だけの申請では少し不安だ」という場合に、複数申請するのが得策です。
まとめ
この記事では、自己資金ゼロの場合に創業融資を受けられるかについて解説しました。また自己資金を増やす方法と自己資金なしでも受けられる創業融資についてもご紹介しました。
創業融資については、こちらの記事「【徹底ガイド】創業融資とは?種類ごとのメリット・デメリット・流れをご紹介!」で解説しているので、ぜひご覧ください。