学生時代に学生納付特例を利用していた、収入が少ない時期に保険料の免除や納付猶予を受けていた、うっかり支払いを忘れていた――。こうした理由で、国民年金保険料の過去の分を後から納めることがあります。
過去の分を納めたとき、「確定申告で控除を受けられるのか」「何年分まとめて払っても大丈夫なのか」と迷う方は少なくありません。結論からいうと、過去の分の国民年金保険料も、実際に支払った年の社会保険料控除の対象になります。
この記事では、国民年金の追納や未納分の納付と確定申告の関係、控除を受けるために必要な書類、家族の分を支払った場合や前納した場合の扱い、年末調整で控除する方法まで、分かりやすく解説します。
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国民年金の過去の分は支払った年に控除できる

国民年金保険料は、所得税の計算で「社会保険料控除」の対象になります。社会保険料控除は、その年中に実際に支払った金額の全額を所得から差し引ける制度です。
保険料がどの年度の分かではなく、いつ支払ったかで判断するため、過去の分をまとめて支払った場合も、支払った年の控除として申告できます。たとえば、令和8年中に令和8年分の保険料12か月分と、過去の分12か月分を支払った場合は、合計24か月分の保険料が令和8年分の社会保険料控除の対象です。
控除額に上限はないため、まとめて支払った年は所得税や住民税の負担が大きく軽くなることがあります。
過去の分を納める2つの方法(追納と未納分の納付)

国民年金保険料の過去の分を納める方法は、その期間が「免除・猶予を受けていた期間」か「単に払っていなかった期間(未納)」かによって異なります。
| 区分 | 対象となる期間 | さかのぼれる期間 |
|---|---|---|
| 追納 | 保険料の免除、納付猶予、学生納付特例を受けていた期間 | 過去10年以内 |
| 未納分の納付 | 手続きをせずに払っていなかった期間 | 納付期限から2年以内 |
免除・猶予・学生納付特例を受けていた場合は「追納」
保険料の免除や納付猶予、学生納付特例の承認を受けていた期間の保険料は、10年以内であれば後から納める(追納する)ことができます。追納をすると、その期間は保険料を納めた期間として扱われ、将来受け取る老齢基礎年金の額が増えます。
ただし、免除などの承認を受けた期間の翌年度から数えて3年度目以降に追納する場合は、当時の保険料に一定の加算額が上乗せされます。追納を考えている場合は、早めに納めるほど負担を抑えられます。追納の申込みは、年金事務所で手続きします。
手続きをせずに払っていなかった場合は2年以内
免除などの手続きをせずに保険料を払っていなかった期間(未納期間)は、納付期限から2年を過ぎると時効により納められなくなります。未納のままにしておくと、将来の年金額が減るだけでなく、障害年金や遺族年金を受け取れない可能性もあります。払い忘れに気づいたら、2年以内に早めに納めましょう。
保険料を納めることが経済的に難しい場合は、未納のままにせず、免除や納付猶予の申請を検討しましょう。承認を受けた期間は、後から追納できるうえ、障害年金などの受給資格の面でも未納とは扱いが異なります。
追納のメリットと手続きの流れ

追納は義務ではありませんが、将来の年金と税金の両面でメリットがあります。
追納の主なメリット
- 老齢基礎年金の受給額が、追納した月数に応じて増える
- 支払った保険料の全額が社会保険料控除の対象になり、所得税・住民税が軽くなる
- 免除期間(全額免除の場合は年金額の2分の1のみ反映)や、学生納付特例・納付猶予の期間(年金額に反映されない)を、満額の納付期間にできる
老齢基礎年金は、原則として20歳から60歳までの40年間(480か月)すべて保険料を納めると満額を受け取れます。学生納付特例や納付猶予の期間は、受給資格期間には数えられるものの、追納しなければ年金額には反映されません。将来の年金を少しでも増やしたい場合は、追納を検討する価値があります。
追納の手続きの流れ
追納をするには、まず年金事務所に「国民年金保険料追納申込書」を提出します。申込書は、年金事務所の窓口のほか、日本年金機構のホームページから入手でき、郵送でも提出できます。マイナポータルから電子申請することも可能です。
申込みが受け付けられると、日本年金機構から追納用の納付書が送られてきます。納付書を使って、金融機関やコンビニエンスストアなどで納付します。追納できる期間のうち、原則として古い月の分から順に納める仕組みになっています。
付加保険料や国民年金基金の掛金も控除の対象
国民年金に上乗せして支払う付加保険料(月400円)も、国民年金保険料と同じく社会保険料控除の対象です。また、国民年金基金の掛金も社会保険料控除として全額を差し引けます。iDeCo(個人型確定拠出年金)の掛金は、社会保険料控除ではなく「小規模企業共済等掛金控除」の対象になるため、申告書に記入する欄が異なる点に注意しましょう。
控除を受けるために必要な書類

国民年金保険料の社会保険料控除を受けるには、支払ったことを証明する書類が必要です。
社会保険料(国民年金保険料)控除証明書
日本年金機構から、毎年11月上旬ごろに「社会保険料(国民年金保険料)控除証明書」が送られてきます。その年の1月1日から9月30日までに納付した保険料が記載されています。10月1日から12月31日までの間に、その年に初めて保険料を納付した場合は、翌年2月上旬ごろに送られます。
確定申告や年末調整では、この控除証明書を提出するか、記載内容を申告書に転記します。過去の分の納付が証明書に反映されていない場合は、納付したときの領収書を保管しておき、控除の証明として使えるようにしておきましょう。
マイナポータル連携なら入力の手間を減らせる
e-Taxで確定申告をする場合は、マイナポータルと連携すると、国民年金保険料の控除証明書のデータを申告書に自動で取り込めます。証明書を紛失してしまった場合も、日本年金機構に再発行を依頼できるほか、「ねんきんネット」から電子データを取得することもできます。
確定申告書への書き方
確定申告書では、第二表の「社会保険料控除」の欄に、保険料の種類として「国民年金」と記入し、その年に支払った金額を書きます。追納した分や過去の未納分も、その年に支払った金額に含めて合計します。健康保険料や国民年金基金の掛金などほかの社会保険料がある場合は、種類ごとに行を分けて記入し、その合計額を第一表の「社会保険料控除」の欄に書き写します。
e-Taxや国税庁の「確定申告書等作成コーナー」を使う場合は、画面の案内に沿って保険料の種類と金額を入力すれば、自動で集計されます。控除証明書の内容をマイナポータル連携で取り込んだ場合は、追納した分が含まれているかを念のため確認しておきましょう。
家族の国民年金を支払った場合も控除できる

社会保険料控除は、自分の保険料だけでなく、生計を一にする配偶者や親族の保険料を支払った場合も、支払った人の控除として申告できます。
「生計を一にする」とは、同じ家で暮らして生活費を共にしている場合だけでなく、仕事や進学で離れて暮らしていても、生活費や学費を常に送金している場合も含まれます。
たとえば、子どもが学生時代に学生納付特例を受けていた期間の保険料を、親が代わりに追納した場合、生計を一にしていれば、親の社会保険料控除として申告できます。この場合も、子ども名義の控除証明書や領収書が必要です。
ただし、同じ保険料を親と子の両方で控除することはできません。誰が実際に支払ったのかを明確にし、支払った人が控除を受けるようにしましょう。
国民年金を前納した場合の控除

国民年金保険料は、6か月分、1年分、2年分をまとめて前払い(前納)すると、割引を受けられます。
2年前納は2つの方法から選べる
2年分を前納した場合、社会保険料控除の受け方は次の2つから選べます。
- 納付した年に、全額をまとめて控除する
- 各年分の保険料に振り分けて、それぞれの年に控除する
2年前納では、その年の4月分から翌々年の3月分までを前払いします。たとえば令和8年4月に2年前納をし、各年に振り分ける方法を選んだ場合は、令和8年分(4月〜12月分)、令和9年分(1月〜12月分)、令和10年分(1月〜3月分)に分けて控除します。
なお、6か月前納や1年前納の場合は、支払った年に全額を控除します。
途中で厚生年金に加入した場合の注意点
前納した期間の途中で就職して厚生年金に加入すると、国民年金保険料の前納分のうち、加入後の期間の分が還付されます。支払った年に全額を控除していた場合は、還付された分だけ控除額が多すぎたことになるため、修正申告が必要になることがあります。就職や転職の予定がある場合は、各年に振り分けて控除する方法を選んでおくと、手続きが簡単になります。
会社員は年末調整でも控除できる

会社員の方が、自分や家族の国民年金保険料を支払った場合は、確定申告をしなくても、勤務先の年末調整で控除を受けられます。年末調整の「保険料控除申告書」の社会保険料控除の欄に記入し、控除証明書を添付して提出しましょう。
年末調整で申告し忘れた場合は、翌年の確定申告で控除を受けられます。また、確定申告をする必要がない方でも、払いすぎた税金を取り戻すための還付申告は、その年の翌年1月1日から5年間行うことができます。過去に追納したのに控除を受けていなかった場合は、5年以内であれば還付申告で取り戻せる可能性があります。
国民年金の追納と確定申告に関するよくある質問

追納したのに控除証明書が届かない場合は?
控除証明書が届かない場合や、追納した分が記載されていない場合は、納付したときの領収書で控除を受けられます。領収書を紛失してしまった場合は、年金事務所に相談して納付の事実を確認しましょう。
追納すると住民税も安くなる?
社会保険料控除は住民税の計算でも使われるため、確定申告や年末調整で控除を受けると、翌年度の住民税も軽くなります。確定申告をすれば、その内容が市区町村にも伝わるため、住民税の申告を別に行う必要はありません。
退職して収入がない年に追納しても意味はある?
収入が少なく所得税がかからない年に追納しても、社会保険料控除による節税の効果はほとんどありません。ただし、追納によって将来の年金額が増えるというメリットは変わりません。また、配偶者などが生計を一にしていて代わりに支払えば、支払った人の控除として申告できるため、家族の中で所得の多い人が支払う方法も考えられます。
何年分かをまとめて追納するのと、毎年少しずつ追納するのはどちらが得?
社会保険料控除に上限はありませんが、所得税は所得が高い部分ほど税率が高くなる仕組みです。所得が多い年にまとめて追納すると、税負担が軽くなる効果が大きくなる場合があります。ただし、3年度目以降は加算額がかかるため、時期の判断は総合的に考える必要があります。
国民年金の過去の分を納めたら忘れずに控除を受けよう

国民年金保険料の過去の分は、追納(免除・猶予・学生納付特例の期間は10年以内)や、未納分の納付(2年以内)によって後から納めることができます。どちらの場合も、実際に支払った年の社会保険料控除として、全額を所得から差し引けます。
控除を受けるには、控除証明書や領収書が必要です。生計を一にする家族の分を支払った場合も控除の対象になり、2年前納の場合は控除の時期を選べます。会社員の方は年末調整でも控除できるので、忘れずに申告しましょう。
国民年金の確定申告については、次の記事もあわせてご覧ください。
確定申告や年金保険料控除のお悩みはストラーダグループへ

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