日本政策金融公庫(以下、公庫)の創業融資は、創業期の資金調達で、最も多く利用される制度のひとつです。ただし、「申し込めば、誰でも借りられる」というものではなく、審査があります。公庫のホームページにも、審査の結果、希望に沿えないことがあると明記されています。
審査で見られるのは、実績ではなく、これからの事業の計画が、現実的で、返済できる見込みがあるかどうかです。その内容を伝えるための書類が、「創業計画書」で、面談では、その内容について、質問を受けます。創業計画書を、どれだけ具体的に、分かりやすく書けるかが、審査の大きなポイントになります。
この記事では、公庫の創業融資を受けるために、押さえておきたいポイントを、創業計画書の項目ごとに整理します。面談で聞かれやすい質問と、準備のコツも紹介します。
なお、融資の条件は、変更されることがあります。この記事は、2026年10月時点で、公庫の公式サイトに掲載されている情報をもとにしています。申し込みの前に、公式サイトで、最新の情報を確認してください。
Contents
公庫の創業融資の基本

創業期の方が、主に使うのは、「新規開業・スタートアップ支援資金」です。公庫の公式サイトによると、概要は次のとおりです。
- 対象:新たに事業を始める方、または、事業開始後おおむね7年以内の方
- 融資限度額:7,200万円
- 返済期間:設備資金は20年以内(うち据置期間5年以内)、運転資金は10年以内(うち据置期間5年以内)
- 条件:新たに営もうとする事業について、適正な事業計画を策定しており、その計画を遂行する能力が、十分あると認められる方
創業期の方は、公庫のQ&Aによると、原則として、無担保・無保証人で、各種の融資制度を利用できます。申し込みから融資が決まるまでの期間は、平均的には、3週間程度です。制度の詳しい内容は、別の記事「公庫の創業融資とは?新規開業・スタートアップ支援資金の条件」でも、解説しています。
審査のポイント:何を見られているのか

公庫は、貸したお金を、返してもらえるかどうかを、判断します。そのために、次のような点を、総合的に見ています。
1. 事業の経験と、実績
これから始める事業に、関連する経験や、職歴、資格があるかが、見られます。経験がある分野での創業は、見通しが立てやすく、評価されやすくなります。
2. 自己資金
自己資金の額と、それを貯めてきた経緯が、見られます。公庫のQ&Aでは、自己資金は、重要な要素のひとつだが、それ以上に、創業計画全体が、しっかりしているかが重要と、説明されています。公庫が、融資先の創業企業を対象に実施した調査(新規開業実態調査)では、創業資金の総額に占める自己資金の割合は、平均で2割程度と、紹介されています。
3. 事業の見通し(売上と利益)
売上の見込みが、現実的か、根拠があるかが、見られます。楽観的な数字を並べるのではなく、客数、単価、営業日数など、積み上げて計算した数字が、求められます。
4. 返済の見込み
利益から、借入の返済ができるかどうかが、見られます。返済の期間や、据置期間をふまえて、無理のない資金計画になっているかが、重要です。
5. 人柄と、誠実さ
面談では、経営者の人柄や、事業への熱意、説明の一貫性も、見られます。質問に、誠実に、具体的に答えることが、大切です。
創業計画書の書き方

創業計画書は、公庫の公式サイトで、書式をダウンロードできます。主な記載の項目と、書くときのポイントを、整理します。
創業の動機
なぜ、この事業を始めるのか、動機を書きます。自分の経験や、地域の課題、顧客の困りごとと、結びつけて書くと、説得力が高まります。「独立したいから」だけでなく、「どのような顧客の、どのような課題を、どう解決したいのか」まで書きます。
経営者の略歴など
これまでの職歴、経験した業務、取得した資格を、具体的に書きます。創業する事業に、関連する経験は、特に、詳しく書きます。たとえば、「飲食店で、店長として、5年間、仕入れや、人の管理を担当した」というように、役割と期間を、はっきり示します。
取扱商品・サービス
何を、いくらで、どのように提供するのかを、具体的に書きます。商品やサービスの、強み、他社との違い、ターゲットとする顧客も、あわせて、書いてください。
取引先・取引関係など
販売先や、仕入先、外注先などを、書きます。すでに、取引の見込みがある場合は、具体的な名前や、条件を書くと、売上の根拠として、評価されやすくなります。
従業員
常勤の役員や従業員、パートやアルバイトの人数を、書きます。創業時の体制と、今後の採用の予定を、整理しておきます。
お借入の状況
個人の借入(住宅ローン、自動車ローン、カードローンなど)の状況も、書きます。借入があること自体が、すぐに、マイナスになるわけではありません。正確に、書くことが、大切です。
必要な資金と調達方法
設備資金と、運転資金に、いくら必要か、その資金を、自己資金、公庫からの借入、他の金融機関からの借入などで、どう調達するかを、書きます。必要な資金の、見積書などの裏づけが、あると、説得力が増します。
事業の見通し(月平均)
創業当初と、軌道に乗ったあとの、売上高、売上原価、経費、利益を、月平均で書きます。売上の見込みは、積み上げ式で、計算してください。たとえば、飲食店なら、「席数×回転数×客単価×営業日数」のように、計算の根拠を示します。経費は、人件費、家賃、水道光熱費、広告宣伝費、借入の返済額なども、漏れなく、含めます。
面談でよく聞かれる質問と、準備のコツ

申し込みのあと、公庫の担当者との面談があります。次のような質問が、よく出るため、あらかじめ、答えを準備しておきましょう。
- なぜ、この事業を始めようと思ったのですか
- これまでの経験は、事業にどう活かせますか
- 売上の見込みの、根拠は何ですか
- 競合との違いは、何ですか
- 自己資金は、どのように貯めましたか
- 借りたお金は、何に使いますか
- 返済は、どのようにする計画ですか
- 計画どおりに進まなかったときは、どうしますか
準備のコツ
- 創業計画書の内容を、自分の言葉で、説明できるようにしておく
- 数字は、根拠を含めて、答えられるようにしておく
- 質問されたことに、簡潔に、具体的に答える
- 分からないことを、ごまかさず、正直に伝える
- 見積書、契約書、通帳などの資料を、そろえて持参する
申し込み前に、確認しておきたいこと

創業予定地を決めておく
公庫のQ&Aでは、創業予定地が未定のままでは、収支計画や、売上の予測が立てられないため、まず、出店地を決めてから、申し込むよう案内されています。
資本金の払い込みには、使えない
法人を設立する場合、資本金の払い込みにあてる資金は、融資の対象外です。設立の登記が終わったあとの法人が、融資の対象になります。
許認可を確認する
飲食店の営業許可、酒類販売業の免許など、事業によって、許認可が必要です。取得の見通しを、あらかじめ、立てておいてください。
特別利率の対象になるか確認する
女性の方、35歳未満または55歳以上の方、創業塾や創業セミナーを受けて、証明書を取得した方などは、特別利率の対象になる場合があります。税理士などの認定経営革新等支援機関の指導や、助言を受けて、事業計画書を作成した場合も、条件によっては、対象になります。公式サイトで、最新の条件を確認してください。
資金計画の書き方(想定例)

「必要な資金と調達方法」は、融資の金額を決める、重要な項目です。次の想定例は、数字の書き方のイメージをつかむためのもので、実際の金額を示すものではありません。
| 区分 | 内容 | 金額 |
|---|---|---|
| 設備資金 | 内装工事、厨房機器、什器 | 600万円 |
| 設備資金 | 保証金(敷金)、物件の取得費 | 150万円 |
| 運転資金 | 当初の仕入れ、人件費、家賃、広告費 | 250万円 |
| 必要な資金の合計 | 1,000万円 | |
| 調達方法 | 自己資金 | 300万円 |
| 調達方法 | 公庫からの借入 | 700万円 |
この例では、必要な資金1,000万円のうち、自己資金が300万円(3割)、借入が700万円です。借入の金額は、返済できる範囲で、決める必要があります。設備資金には、見積書、運転資金には、数か月分の支出の内訳を、根拠として添えます。
運転資金は、どのくらい用意するか
運転資金は、売上が入金されるまでの間の、支払いに充てる資金です。売上の入金が、遅い業種や、仕入れの支払いが、先に来る業種では、より多くの運転資金が、必要になります。一般的には、数か月分の固定費と、仕入れの支払いを、まかなえる額を、目安に、計画を立てます。
売上の見込みを、積み上げて計算する

売上の見込みは、業種ごとに、次のように、積み上げて計算すると、根拠を示しやすくなります。
- 飲食店:席数×1日の回転数×客単価×営業日数
- 美容院・サロン:施術できる席の数×1日の客数×客単価×営業日数
- 小売店:1日の客数×客単価×営業日数
- コンサルティング・士業:顧問先の数×月額の報酬+スポット案件の件数×単価
- 建設・工事業:月の受注件数×1件あたりの平均単価
計算に使う客数や、回転数の数字は、競合店の観察、前職での経験、取引先の見込みなどを、根拠として、示します。創業当初は、客数が少ないことを、前提に、少なめの数字から始めて、徐々に増える形で、計画を立てると、現実的な計画と、評価されやすくなります。
審査で、不利になりやすいケース

次のようなケースは、審査で、不利になりやすいため、注意してください。
- 創業計画書の数字に、根拠がない、または、楽観的すぎる
- 事業に、関連する経験が、ほとんどない(経験者の採用や、専門家の支援の計画もない)
- 自己資金が、ほとんどなく、貯めてきた経緯も、説明できない
- 税金や、社会保険料、公共料金などの、支払いの遅れがある
- 他の借入の返済が、遅れている(クレジットカードやローンの延滞を含む)
- 面談での、説明が、創業計画書の内容と、食い違っている
特に、個人の信用情報に、延滞の記録があると、審査に影響するおそれがあります。申し込みの前に、支払いの状況を、確認しておくことをおすすめします。
融資を受けたあとのポイント

融資が実行されたら、計画に沿って、事業を進めることが、大切です。融資を受けたお金は、申し込みのときに、説明した、使いみちに、使う必要があります。また、月々の返済を、確実に行い、毎月の試算表で、資金繰りを確認しましょう。実績が積み上がれば、次の融資や、設備の拡大の際に、金融機関から信頼を得やすくなります。
創業融資のよくある質問

Q1. 申し込みは、創業前でもできますか?
できます。公庫の対象は、新たに事業を始める方で、事業開始後おおむね7年以内の方も、含まれます。ただし、事業計画が、具体的で、創業予定地などが決まっていることが、前提です。
Q2. 個人事業主と法人のどちらで、申し込むのが有利ですか?
公庫のQ&Aによると、融資の申し込みについて、個人と法人とで、大きな違いは、特になく、融資を受けるうえで、どちらが有利ということは、ありません。個人で申し込む場合は、創業予定地を管轄する支店、法人で申し込む場合は、法人登記上の本店所在地を管轄する支店が、窓口になります。
Q3. 審査に落ちたら、再び、申し込めますか?
再度、申し込むことは、可能です。ただし、前回の審査で、どこに課題があったのかを、整理し、計画の見直しや、自己資金の積み増し、経験の補強などを行ってから、申し込むことをおすすめします。同じ内容のまま、申し込んでも、結果が変わらない可能性があります。
Q4. 専門家に、創業計画書の作成を頼むメリットは?
税理士などの専門家は、数字の根拠や、資金繰りの見通しなど、審査で見られるポイントを、踏まえて、計画書を作成する支援ができます。また、認定経営革新等支援機関の指導や、助言を受けて、事業計画書を作成した場合は、条件によって、特別利率の対象になる場合があります。
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ストラーダグループでは、創業計画書の作成のご相談から、公庫などへの融資の申し込みの準備、面談の対策、創業後の経理や税務まで、税理士などの専門家が連携して、サポートしています。初回のご相談は無料です。お気軽にご相談ください。
※本記事は、2026年10月時点の情報をもとに作成しています。融資の条件は変更されることがあるため、申し込みの前に、日本政策金融公庫の公式サイトなどで、最新の情報をご確認ください。




