原材料費や人件費の上昇、為替や国際情勢の変動など、企業を取り巻く経営環境は、年々読みにくくなっています。こうした時代には、決算が終わってから数字を振り返るだけの守りの財務管理では、対応が後手に回りがちです。財務戦略を経営の中心に置き、数字をもとに先手を打つ姿勢が、会社の安定と成長を左右します。
この記事では、財務と会計の専門家である公認会計士の役割を、税理士との違いも含めて整理したうえで、財務戦略、資金調達、経営効率化の重要なポイントを解説します。あわせて、公認会計士にアウトソーシングするメリットや、よくある経営の悩みへの解決の進め方も紹介します。
ストラーダグループには、経営と財務の両面から企業を支える公認会計士が在籍しており、日本橋・水天宮前・人形町・茅場町を中心に、数字に基づいた提案で企業の成長を支援しています。
Contents
公認会計士とは?税理士との違い

「会計の専門家」と聞くと、税理士を思い浮かべる方が多いかもしれません。税理士は、税務申告や税金の相談を中心に、企業の税金まわりを支える専門家です。一方、公認会計士は、監査と会計の専門家として、企業の財務全体に関わります。
公認会計士の仕事は法律で定められている
公認会計士法第1条は、公認会計士の使命を、「監査及び会計の専門家として、独立した立場において、財務書類その他の財務に関する情報の信頼性を確保すること」などと定めています。また、第2条は、公認会計士の業務を次のように定めています(e-Gov法令検索で確認)。
- 財務書類の監査または証明(第2条第1項):公認会計士だけが行える独占業務です
- 財務書類の調製、財務に関する調査や立案、財務に関する相談(第2条第2項):公認会計士の名称を用いて行える業務です
このうち、企業の決算書や財務情報の信頼性を第三者の立場で確認する監査は、公認会計士の独占業務です。数字の正しさを保証するだけでなく、財務の調査や立案、相談を通じて、経営判断や成長戦略に数字をどう活かすかを一緒に考えられる点が、公認会計士の特徴です。
税理士との違いを整理する
2つの資格の違いを、表にまとめます。
| 項目 | 公認会計士 | 税理士 |
|---|---|---|
| 主な独占業務 | 財務書類の監査・証明 | 税務代理・税務書類の作成・税務相談 |
| 得意な領域 | 財務分析、資金調達、企業価値評価、内部統制 | 税務申告、節税、相続・事業承継の税務 |
| 主な根拠法 | 公認会計士法 | 税理士法 |
どちらか一方だけが優れているということではなく、目的によって使い分けるのが基本です。毎年の税務申告を任せたいなら税理士、財務の戦略づくりや資金調達の支援を受けたいなら公認会計士、というのが大まかな目安です。
なお、税理士法第3条は、税理士となる資格を持つ人として、税理士試験の合格者などのほか、弁護士と公認会計士も挙げています。つまり、公認会計士は、税理士として登録して税務の業務を行うこともできます。ただし、同条第3項に、研修に関する定めがあるため、詳しい条件は日本税理士会連合会などで確認してください。
公認会計士試験は難関の国家試験
公認会計士になるには、公認会計士試験に合格する必要があります。公認会計士・監査審査会が公表している資料によると、近年の試験の状況は、次のとおりです。
| 試験年度 | 出願者数 | 最終合格者数 | 合格率(合格者÷出願者) |
|---|---|---|---|
| 2022年(令和4年) | 18,789人 | 1,456人 | 約7.7% |
| 2023年(令和5年) | 20,317人 | 1,544人 | 約7.6% |
| 2024年(令和6年) | 21,573人 | 1,603人 | 約7.4% |
| 2025年(令和7年) | 22,056人 | 1,636人 | 約7.4% |
出願者のうち、実際に論文式試験を受けた人を基準にした合格率は、令和7年が35.1%です。出願者を基準にした合格率は約7%台と低く、公認会計士は、会計と監査の高い専門性を持つ専門家といえます。
公認会計士の基本的な仕事内容

決算書の監査・レビューで企業の信頼性を高める
決算書は、会社の経営成績や財政状態を表す大切な資料です。公認会計士は、第三者の立場でその信頼性を確認します。金融機関や株主、取引先との関係では、信頼できる決算書があるかどうかが、評価や融資の判断に影響します。
法律で監査が義務づけられていない中小企業でも、金融機関への説明や、M&A、親会社への報告などの場面で、第三者による確認が役立つことがあります。
財務分析と改善提案で経営をサポート
単に数字を集計するだけでなく、過去の数字から課題を洗い出し、将来に向けた改善策を提案することも、公認会計士の大切な仕事です。「売上は伸びているのに利益が出ない」「利益は出ているのに現金が足りない」といった経営者の悩みを、数字の面から整理し、具体的な打ち手につなげます。
資金調達や事業計画の実現を支える
金融機関からの融資や、補助金の申請、投資家への説明では、数字の裏づけがある計画書が欠かせません。公認会計士は、収支計画や資金計画、返済のシミュレーションを含む計画書を作成し、金融機関との交渉を支えます。専門用語をかみ砕いて説明する場面でも、経営者の右腕として力を発揮します。
財務戦略で押さえたい経営指標

財務戦略を立てるには、まず、自社の数字を正しく読むことが必要です。代表的な指標を紹介します。
収益性を見る指標
- 売上総利益率(粗利率):売上総利益÷売上高。商品やサービスそのものの稼ぐ力を示します
- 営業利益率:営業利益÷売上高。本業での利益の水準を示します
- 損益分岐点売上高:固定費÷(1-変動費率)で求められる、利益がゼロになる売上高です
損益分岐点売上高が現在の売上高に近いと、売上が少し落ちるだけで赤字になるおそれがあります。固定費を見直し、損益分岐点を下げることは、経営を安定させる基本の取り組みです。
安全性を見る指標
- 自己資本比率:自己資本÷総資産。高いほど、借入に頼らない安定した経営といえます
- 流動比率:流動資産÷流動負債。短期の支払い能力を示します
- 手元流動性:現預金が、月商の何か月分あるかを示します
特に中小企業では、黒字でも資金が尽きて倒れる「黒字倒産」を避けるため、手元の現金が十分にあるかを、毎月確認することが大切です。
効率性を見る指標
- 総資産回転率:売上高÷総資産。資産を効率よく使えているかを示します
- 売上債権回転期間:売掛金が回収されるまでの期間の目安です
- 棚卸資産回転期間:在庫が売れるまでの期間の目安です
業種によって適正な水準は異なるため、同じ業種の平均や、自社の過去の数字と比べながら、改善の余地を探します。
経営効率化の重要ポイント

固定費・間接費の適正化を図る
経営の無駄を省くには、まず、固定費や間接費を丁寧に見直すことが重要です。家賃、人件費、通信費、保険料、ソフトウェアの利用料など、改善の余地がある項目は少なくありません。使っていないサービス契約を整理したり、部署ごとの費用の配分を見直したりするだけで、年間の費用が大きく変わることもあります。
数字の裏側を読み解く力を持つ
財務データは、単なる数字の羅列ではありません。数字に裏打ちされた根拠をもとに経営判断をすることで、社内外の信頼が高まり、安定した経営の基盤をつくれます。経営の透明性が高まれば、従業員や取引先の安心感にもつながります。
財務情報をタイムリーに活用する
決算の数字が出るのが、期末から数か月後では、課題への対応が遅れます。月次で試算表を作成し、売上や費用の動きを毎月確認する「月次決算」の体制を整えると、課題を早期に発見し、迅速に対応できます。クラウド会計ソフトを活用すれば、銀行口座やクレジットカードの明細を自動で取り込めるため、数字の確定までの時間を短縮できます。
部門別・商品別の収益性を分析する
すべての部署や商品が利益を出しているとは限りません。部門、商品、顧客ごとに収益を分けて把握すると、収益性が低い分野や、費用がかさんでいる分野が見えてきます。全体では黒字でも、一部の事業が足を引っ張っていることは、よくあります。
資金調達の基本と、公認会計士ができるサポート

資金調達には、大きく分けて、返済が必要な「デットファイナンス」と、返済が不要な「エクイティファイナンス」があります。
- デットファイナンス:金融機関からの融資、社債の発行など。返済の義務があり、利息がかかります
- エクイティファイナンス:投資家に株式を発行して出資を受ける方法。返済の義務はありませんが、株主が増え、経営への影響が生じます
- 補助金・助成金:条件を満たせば受け取れる公的な支援です。申請の期限や要件があり、後払いが一般的です
金融機関から融資を受けるときは、数字と根拠が重視されます。公認会計士は、次のような形で支援します。
- 収支計画、資金計画、返済のシミュレーションを含む事業計画書の作成
- 資金繰り表の作成と、数か月先までの現金残高の予測
- 金融機関との面談の準備や、同席しての説明
- 融資、補助金、出資など、複数の方法を比べたうえでの提案
補助金や融資の制度は、毎年のように内容が変わります。制度の最新の要件や期限は、必ず公式の情報で確認してください。
公認会計士のアウトソーシングを利用するメリット

経理・財務をプロに任せて本業に集中できる
経理担当者の採用や教育には、時間も費用もかかります。公認会計士が在籍する会社に経理や財務の業務を任せれば、安定した品質の業務を受けられ、経営者は本業に集中できます。
数字を「判断材料」に変えられる
数字を並べるだけでなく、「何が問題なのか」「次にどうすべきか」が分かる形で報告を受けられるのが、専門家に任せる大きな利点です。経営の意思決定のスピードと正確さが高まります。
社内リスクを抑えながら専門性を確保できる
経理担当者が急に退職したり、ミスが発生したりしたときのリスクを、外部委託によって抑えられます。専門家によるチェックや、業務の標準化が行われると、入力ミスや計算の誤りを減らせ、不正の兆候にも早く気づけます。
経営戦略に寄り添うコンサルティングを受けられる
経理を代行するだけでなく、定期的な財務報告をもとに、戦略の見直しや新規事業の評価、コスト構造の改善などの提案も受けられます。専門家が継続して伴走することで、経営者は将来を見据えた判断をしやすくなります。
よくあるお悩みと公認会計士による解決アプローチ

ケース1:売上は順調でも、資金繰りが苦しい
売上の入金が遅く、支払いのタイミングが偏っていると、手元の資金が不足しやすくなります。たとえば、毎月末に固定費の支払いが集中し、売上の入金は翌月中旬以降になるケースです。
こうした資金のずれを把握するため、公認会計士は資金繰り表を作成し、入金と支払いの予定を一覧にします。数か月先までの現金残高を試算し、融資の申し込みや支払い条件の見直しなど、具体的な対策を提案します。
ケース2:成長のために設備投資をしたいが、融資が通らない
金融機関は、「数字」と「根拠」を重視します。公認会計士は、収支計画、資金計画、返済のシミュレーションを含む事業計画書を作成し、金融機関との交渉も支えます。
ケース3:経理担当者が退職して、業務が止まりそう
公認会計士による経理代行サービスを活用すれば、引き継ぎの空白を防ぎつつ、専門性も確保できます。繁忙期だけのスポット支援にも対応できます。
ケース4:金融機関や取引先に、財務の状況を説明しにくい
月次の試算表や、資金繰り表、事業計画書を整えることで、数字の裏づけを持って説明できます。経営者が自社の数字を自分の言葉で説明できると、金融機関や取引先からの信頼も高まります。
数字を武器に変える経営へ

会計は、記録や保管のためだけにあるものではありません。どの分野に投資すべきか、どこに改善の余地があるかといった経営判断は、正確な数字をもとに導かれます。会計を「戦略的な意思決定を支える情報」として活かすことが、変化の大きい時代を乗り切る力になります。
財務戦略や資金調達のお悩みはストラーダグループへ

ストラーダグループでは、豊富な知識と経験を持つ公認会計士が、日本橋、水天宮前、人形町、茅場町のエリアを中心に、企業の課題に寄り添いながら、経営者の視野を広げるサポートを行っています。経理業務の効率化や財務の見直しをお考えの際は、お気軽にストラーダの公認会計士までご相談ください。税理士法人をはじめとするグループの専門家と連携して、税務、財務、資金調達まで、一貫してご相談いただけます。
※本記事は、2026年10月時点の情報をもとに作成しています。制度の内容や統計の数字は変更されることがあるため、手続きの前に、公認会計士・監査審査会、日本政策金融公庫、国税庁などの公式情報をご確認ください。




