創業するときに、最初に考える資金調達の方法が、日本政策金融公庫(以下、公庫)の創業融資です。公庫の創業向けの融資は、2024年4月に制度が見直され、「新規開業・スタートアップ支援資金」を中心とした仕組みになっています。
この記事では、公庫の公式サイトの情報をもとに、新規開業・スタートアップ支援資金の対象者、融資の限度額、返済期間、利率の区分を整理します。あわせて、2024年4月の変更点、申し込みから融資までの流れ、審査で見られるポイント、申し込み前に準備しておきたいことも、順を追って解説します。
なお、融資の条件や利率は、変更されることがあります。この記事は2026年10月時点で、公庫の公式サイトに掲載されている情報をもとにしています。申し込みの前には、必ず公式サイトで最新の内容をご確認ください。
Contents
日本政策金融公庫の創業融資とは?

公庫は、国が出資する政策金融機関で、民間の金融機関が貸しにくい、創業期の事業にも融資を行っています。創業融資を取り扱うのは、公庫の国民生活事業です。
創業期の方(新たに事業を始める方、または事業開始後、税務申告を2期終えていない方)は、公庫のQ&Aによると、原則として無担保・無保証人で、各種の融資制度を利用できます。
新規開業・スタートアップ支援資金の概要
公庫の公式サイトに掲載されている、新規開業・スタートアップ支援資金の概要は、次のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象となる方 | 新たに事業を始める方、または、事業開始後おおむね7年以内の方 |
| 資金の使いみち | 新たに事業を始めるため、または、事業開始後に必要とする設備資金と運転資金 |
| 融資限度額 | 7,200万円 |
| 返済期間 | 設備資金:20年以内(うち据置期間5年以内)、運転資金:10年以内(うち据置期間5年以内) |
| 利率 | 基準利率。条件に該当する場合は、特別利率 |
対象になるのは、「新たに営もうとする事業について、適正な事業計画を策定しており、その計画を遂行する能力が、十分あると認められる方」とされています。申し込みでは、創業計画書の提出などにより、事業計画の内容が確認されます。
また、ご契約のときの金利が、最後まで適用される固定金利である点も、特徴です。返済の計画を立てやすくなります。
2024年4月の変更点:新創業融資制度から、新規開業・スタートアップ支援資金へ

2024年4月に、公庫の創業向けの融資は、見直されました。それまで、無担保・無保証人で使える融資として利用されていた「新創業融資制度」は、2024年3月末で終了し、無担保・無保証人での融資は、「新規開業・スタートアップ支援資金」を中心に、利用できる形に整理されました。
主な変更点
- 融資の限度額:7,200万円に拡大された
- 返済の期間:運転資金は、7年から10年に延びた
- 据置期間:運転資金の据置期間は、2年から5年以内に延びた
- 自己資金の要件:新創業融資制度にあった、創業資金の10分の1以上という自己資金の要件は、なくなった
ここで注意したいのは、自己資金の要件はなくなったものの、審査では、自己資金の有無や、それを貯めてきた経緯が見られるという点です。公庫のQ&Aでも、自己資金は重要な要素のひとつだが、それ以上に、創業計画全体がしっかりしているかが重要になる、と説明されています。公庫が実施した「新規開業実態調査」では、創業資金の総額に占める自己資金の割合は、平均で2割程度と紹介されています。この数字は、あくまで平均の目安で、必要な自己資金の額を決めるものではありません。
利率は?基準利率と特別利率の違い

公庫の創業融資の利率は、「基準利率」と、条件に該当する場合の「特別利率」に分かれています。実際に適用される利率は、使いみち、返済期間、担保の有無などによって異なります。最新の利率は、公庫の公式サイトの「貸付利率表」で確認してください。
特別利率が適用される主な条件
新規開業・スタートアップ支援資金では、次のような条件に該当する方が、必要とする資金(原則として、土地にかかる資金を除く)に、特別利率が適用されます。公式サイトに掲載されている主な条件は、次のとおりです。
- 特別利率A:女性の方、35歳未満または55歳以上の方
- 特別利率A:創業塾や創業セミナーなど(認定特定創業支援等事業)を受け、認定市区町村が発行する証明書を取得した方(有効な証明書の場合に限る)
- 特別利率A:「中小企業の会計に関する基本要領」または「中小企業の会計に関する指針」を適用している、または適用する予定の方で、自ら事業計画書を策定し、認定経営革新等支援機関(税理士、公認会計士、中小企業診断士など)の指導や助言を受けている方
- 特別利率A・B・C:技術やノウハウなどに、新規性が見られる方(条件あり)
ここに挙げた条件は、一部です。特別利率には、A、B、Cの区分があり、複数の条件に該当する場合は、さらに有利な区分が適用されることがあります。条件の詳細や、他の条件は、公式サイトで確認してください。
税理士などの認定経営革新等支援機関の活用
特別利率の条件のひとつに、認定経営革新等支援機関(税理士、公認会計士、中小企業診断士など)の指導や助言を受けて、事業計画書を作成することが含まれています。税理士などの専門家に、創業計画書の作成を相談することは、特別利率の対象になる可能性を広げるとともに、計画の説得力を高めることにも、つながります。
併用できる特例制度と、関連する融資

公庫の公式サイトによると、新規開業・スタートアップ支援資金は、次の特例制度と併用できるとされています。
- 経営者保証免除特例制度
- 創業支援貸付利率特例制度
- 賃上げ貸付利率特例制度
このほか、条件に応じて、次のような区分の融資もあります。
- 女性、若者/シニア起業家支援関連:女性、または35歳未満・55歳以上の方向け
- 再挑戦支援関連:廃業歴などがあり、再び創業する方向け。前の事業の債務の返済に必要な資金も使え、運転資金は15年以内(うち据置期間5年以内)
- 中小企業経営力強化関連:中小会計を適用して創業する方向け
該当する区分がある場合は、公庫の担当者に相談し、有利な条件で利用できるかを確認するとよいでしょう。
申し込みから融資までの流れ

公庫の創業融資の、一般的な流れは、次のとおりです。
1. 事前相談
お近くの公庫の支店、または、商工会議所などで、創業の計画を相談します。公庫のQ&Aでは、創業予定地が未定のままでは、収支計画が立てられないため、まず、出店地を決めてから申し込むよう案内されています。
2. 申し込みの書類の準備
創業計画書をはじめ、申し込みに必要な書類を準備します。法人で申し込む場合は、履歴事項全部証明書または登記簿謄本が必要です。なお、個人で創業する場合と、法人で創業する場合で、融資を受けるうえで、どちらが有利ということは特にありません。
3. 申し込みと面談
個人で申し込む場合は、創業予定地を管轄する支店、法人で申し込む場合は、法人登記上の本店所在地を管轄する支店が、窓口になります。申し込みのあと、担当者との面談で、事業の内容や、資金の計画について、説明します。
4. 審査と融資の決定
公庫のQ&Aによると、申し込みから融資が決まるまでの期間は、平均的には、3週間程度です。ただし、条件によっては、時間がかかる場合もあります。審査の結果、希望に沿えない場合もあります。
5. 融資の実行
契約の手続きのあと、融資が実行されます。
注意:資本金の払い込みには使えない
公庫のQ&Aでは、法人設立のための資本金の払い込みにあてる資金は、融資の対象外と説明されています。法人を設立して創業する場合は、設立の登記を終えた法人が、融資の対象になります。資本金は、自己資金などで、用意する必要があります。
審査で見られるポイントと、準備しておきたいこと

創業融資の審査では、事業の実績がないため、計画の内容や、経営者の経験、自己資金などが、総合的に見られます。
創業計画書の内容
創業の動機、事業の内容、取引先や販売の見込み、必要な資金とその調達の方法、売上や利益の見通しなどを、具体的に書きます。数字には、根拠が必要です。たとえば、売上の見込みは、客数と単価、営業日数などから、積み上げて計算します。
経験と実績
これから行う事業に関わる、経験や、職歴、資格などは、評価の対象になります。経験が少ない場合は、経験者を従業員として採用する計画や、専門家の支援を受ける計画を、示すと、説得力が高まります。
自己資金
自己資金の額と、それを貯めてきた経緯も、見られます。通帳の履歴などで、コツコツと貯めてきたことが分かると、計画性が評価されやすくなります。
許認可の確認
業種によっては、許認可が必要です。公庫のQ&Aでは、飲食店には保健所の営業許可、酒類販売業には税務署の免許が必要など、事例が紹介されています。自分が創業する業種に、許認可が必要かを、事前に調べておきます。
創業融資のよくある質問

Q1. 自己資金がなくても、融資を受けられますか?
自己資金の要件は、なくなりましたが、審査では、自己資金が重視される傾向があります。自己資金が少ないと、希望した金額から減額される可能性があります。できるだけ、自己資金を用意しておくことをおすすめします。
Q2. 担保や保証人は必要ですか?
創業期の方は、公庫のQ&Aによると、原則として、無担保・無保証人で、各種の融資制度を利用できます。公式サイトには、経営者保証免除特例制度との併用も、案内されています。
Q3. 個人事業主でも、法人でも申し込めますか?
申し込めます。融資を受けるうえで、個人と法人のどちらが有利ということは、特にありません。
Q4. 創業前でも申し込めますか?
新たに事業を始める方が対象のため、創業前の方も、対象です。ただし、事業計画が具体的で、創業予定地などが決まっていることが前提です。
申し込み前のチェックリスト

申し込みの前に、次の点を確認しておくと、手続きがスムーズに進みます。
- 創業の場所(創業予定地)が決まっているか
- 事業に必要な許認可を調べ、取得の見通しが立っているか
- 創業計画書に、売上や費用の根拠となる数字を、具体的に書けているか
- 必要な資金の総額と、そのうち、自己資金で用意できる金額、借入で調達する金額が、整理できているか
- 通帳の履歴など、自己資金を貯めてきた経緯を、説明できる資料があるか
- 特別利率の対象になる条件(創業セミナーの修了証明書、専門家の支援など)に、該当しないか確認したか
- 法人の場合、設立の登記が終わっているか(資本金の払い込みには、融資は使えない)
公庫の融資とあわせて検討したい資金調達の方法

創業の資金調達は、公庫の融資だけではありません。次のような方法も、あわせて検討すると、資金計画の幅が広がります。
- 自治体の制度融資:自治体、金融機関、信用保証協会が連携して行う融資。保証料や利子の補助がある場合があります
- 補助金・助成金:条件を満たせば、受け取れる公的な支援。後払いが一般的で、申請の期限や要件があります
- 自己資金や、親族からの支援:計画の説得力を高める、基本の資金です
どの方法を、どの順番で使うかは、資金が必要な時期や、金額によって、変わります。創業の前の段階から、専門家に相談して、全体の資金計画を、組み立てておくことをおすすめします。
創業後に、公庫の融資を活かすための考え方

融資は、受けて終わりではなく、返済しながら、事業を成長させることが目的です。借入のあとは、次のような点に気を付けて、事業を進めていきます。
返済の計画を、毎月の資金繰りに組み込む
返済の期間と、据置期間を、うまく使うと、事業が軌道に乗るまでの負担を軽くできます。据置期間の間は、利息のみを支払い、元金の返済は、据置期間が終わってから始まります。据置期間が終わったあとの返済額も、資金繰り表に反映して、無理のない返済になっているかを、毎月確認します。
帳簿を整え、実績を積み重ねる
創業後に、決算書と、試算表を整えておくと、次に融資を申し込むときや、設備を増やすときに、金融機関の信頼を得やすくなります。月次で数字を確認する習慣をつくり、経理は、早い段階から、税理士などの専門家と、整えておくことをおすすめします。
創業融資のお悩みはストラーダグループへ

ストラーダグループでは、起業を考えている方の、創業計画書の作成から、公庫などへの融資の申し込みの準備、創業後の経理や税務まで、税理士などの専門家が連携して、サポートしています。特別利率の条件にも関わる、事業計画の策定についても、ご相談をお受けしています。初回のご相談は無料です。お気軽にご相談ください。
※本記事は、2026年10月時点の情報をもとに作成しています。融資の条件や利率は変更されることがあるため、申し込みの前に、日本政策金融公庫の公式サイトなどで、最新の情報をご確認ください。




