会社を設立して2期目を迎えるころになると、「1期目は税理士に任せていたが、2期目からは自分で帳簿をつけたい」「決算書に役員貸付金が残っていて、どう解消すればよいかわからない」といった悩みが出てきやすくなります。
特に役員貸付金は、金融機関の融資審査などで会社の評価を下げる原因になりやすい項目です。放置すると、事業を広げたいときに資金調達で不利になることがあります。
この記事では、2期目の決算に向けた帳簿づくりの進め方、税理士を変更するときに引き継ぐ資料、役員貸付金が生まれる理由と解消方法、きれいな決算書をつくるための日頃の経理のポイントを解説します。
Contents
2期目の決算に向けた帳簿作成の進め方

2期目の決算では、1期目の決算の数字を引き継いだうえで、2期目の1年間の取引をすべて帳簿に記録する必要があります。帳簿の作り方には、大きく分けて次の2つの方法があります。
会計ソフトで自分で帳簿をつける
クラウド会計ソフトを使えば、銀行口座やクレジットカードの明細を自動で取り込み、仕訳を作ることができます。ExcelやGoogleスプレッドシートで取引を管理している場合は、そのデータをCSV形式で会計ソフトに取り込む方法もあります。ただし、取り込むデータの形式が会計ソフトの指定と合っていないと、うまく取り込めなかったり、勘定科目がずれたりすることがあります。取り込んだ後に、残高が通帳や明細と一致しているかを必ず確認しましょう。
記帳代行を依頼する
自分で帳簿をつける時間が取れない場合や、取り込みがうまくいかない場合は、税理士事務所などに記帳代行を依頼する方法があります。料金は仕訳の数に応じて決まることが多いため、取引の量が少ない会社ほど費用を抑えやすくなります。最初の年は記帳代行を依頼し、慣れてきたら自分で帳簿をつけるように切り替えることもできます。
会計ソフトを税理士と共有する
クラウド会計ソフトの多くは、税理士とデータを共有する機能を備えています。共有しておけば、資料をやり取りしなくても税理士が帳簿を確認でき、間違いがあれば早めに指摘を受けられます。自分で帳簿をつける場合でも、毎月または定期的に税理士の確認を受ける体制にしておくと安心です。
税理士を変更するときに引き継ぐ資料

1期目と2期目で依頼する税理士が変わる場合は、前の税理士から資料を引き継ぐ必要があります。資料がそろわないと、2期目の決算の準備を始められません。
| 引き継ぐ資料 | 必要な理由 |
|---|---|
| 1期目の総勘定元帳 | 1期目の取引の内容と、期末の残高を確認するため |
| 法人税・地方法人税・地方税の申告書の控え | 1期目の申告の内容や、繰り越す欠損金などを確認するため |
| 1期目の決算書と勘定科目内訳明細書 | 期首の残高と、売掛金や借入金などの内訳を確認するため |
| 固定資産台帳 | 減価償却を2期目以降も正しく続けるため |
| 税務署などへの届出書の控え | 青色申告の承認や事業年度、消費税の届出の状況を確認するため |
| e-Taxの利用者識別番号など | 2期目の申告を電子申告で行うため |
前の税理士に資料を依頼してから届くまでに時間がかかることもあります。決算月が近づいてから慌てないよう、税理士の変更を決めたら早めに資料の引継ぎを依頼しましょう。
役員貸付金とは?決算書に残る理由

役員貸付金とは、会社から役員にお金を貸している状態を表す勘定科目です。決算書では会社の資産として表示されます。
役員貸付金が生まれやすいケース
中小企業では、次のような理由で役員貸付金が生まれることがよくあります。
- 会社の口座から、役員報酬とは別に役員個人の口座へお金を振り込んだ
- 会社のクレジットカードで、私的な買い物の支払いをした
- 使い道がわからない出金があり、決算のときに役員への貸付として処理した
特に、給料として決めた金額より多くの金額を役員個人に振り込んでいると、その差額が役員貸付金として積み上がっていきます。会社のクレジットカードで私的な支払いをした場合は、「役員貸付金/未払金」のように仕訳をして、会社のお金を役員が借りている状態として記録します。
役員借入金との違い
役員貸付金と混同しやすい科目に、役員借入金があります。役員借入金は、役員が会社にお金を貸している状態を表す科目で、決算書では会社の負債として表示されます。たとえば、設立直後に役員が個人のお金で会社の経費を立て替えた場合などに生まれます。役員借入金は、金融機関から実質的に自己資本に近いものとして見てもらえる場合もあり、役員貸付金とは評価の方向が逆になります。同じ役員との間で貸付金と借入金の両方が残っている場合は、契約の内容を確認したうえで、相殺して整理できないかを税理士に相談しましょう。
役員貸付金を放置するリスク
役員貸付金が大きく残っていると、金融機関からは「会社のお金が経営者の個人的な用途に使われているのではないか」と見られやすくなります。融資の審査では、役員貸付金を資産として評価せずに、会社の財務内容を厳しく判断されることがあります。
また、会社が役員にお金を貸して利息を受け取っていない場合や、通常より低い利率にしている場合は、税務上、適正な利息との差額が役員への経済的な利益(給与)として扱われることがあります。この場合、会社側では受け取るべき利息を収益に計上したうえで、同じ額が役員給与として損金にならないことがあり、役員個人にも所得税がかかる可能性があります。役員貸付金がある場合は、金銭消費貸借契約書を作成して返済条件と利率を定め、利息の扱いについても税理士に確認しておきましょう。
役員貸付金の主な解消方法

役員貸付金を解消するには、役員が会社にお金を返すことが基本です。主な方法は次のとおりです。
役員個人のお金で返済する
もっともシンプルな方法は、役員が個人のお金を会社の口座に振り込んで返済することです。一度に全額を返済できない場合は、返済の計画を立てて、毎月一定額を返済していく方法もあります。
役員報酬を見直して返済に充てる
役員報酬を増やし、増えた分を返済に充てる方法もあります。ただし、税務上、役員報酬を損金(経費)にするためには、原則として事業年度の開始から3か月以内に金額を決め、その年度の間は同じ金額を支払う必要があります。期の途中で自由に増やすことはできないため、次の事業年度に向けて計画的に見直しましょう。役員報酬を増やすと、個人の所得税や住民税、社会保険料も増えるため、全体の負担を試算したうえで判断することが大切です。
役員賞与を支給して返済に充てる
役員への賞与は、原則として損金になりませんが、あらかじめ支給する時期と金額を税務署に届け出ておく「事前確定届出給与」の制度を使えば、届け出たとおりに支給した賞与を損金にすることができます。届出には期限があり、原則として、株主総会などの決議の日から1か月を経過する日と、会計期間の開始の日から4か月を経過する日のいずれか早い日までに提出する必要があります。届け出た金額と実際の支給額が異なると、原則として損金にならないため注意が必要です。賞与にも所得税や社会保険料がかかるため、役員報酬を増やす方法と比べて検討しましょう。
役員個人の資産を会社が買い取る
役員が個人で持っている車両や不動産などを会社が買い取り、その代金と役員貸付金を相殺する方法もあります。ただし、事業で使わない資産を買い取ると、会社にとって不要な資産が残るだけになります。また、時価とかけ離れた金額で取引すると、差額が役員への給与や寄附として扱われるおそれがあるため、事業での必要性と適正な価額を確認したうえで判断しましょう。
解消の目標時期を決める
役員貸付金を一度にゼロにするのが難しい場合は、「3期目の決算までに解消する」といった目標時期を決めて、少しずつ減らしていきましょう。融資を受ける予定がある場合は、その時期から逆算して計画を立てると効果的です。なお、帳簿上の処理だけで役員貸付金を別の科目に置き換えることは、実態と合わない決算書になるため避けるべきです。
次の数字は説明のための仮の例です。2期目の決算で役員貸付金が300万円残っていて、2年後の融資の申込みまでに解消したいとします。役員報酬の増額分から毎月10万円を返済すれば、年間で120万円、2年間で240万円が減ります。残りの60万円は、役員個人の預金からまとめて返済するといった組み合わせで計画を立てることができます。返済した事実が通帳に残るよう、現金ではなく振込で返済しておくと、後から説明しやすくなります。
きれいな決算書をつくるための日頃の経理のポイント

役員貸付金を増やさないためには、日頃から会社のお金と個人のお金をはっきり分けることが大切です。
会社のお金と個人のお金を分ける
会社の口座やクレジットカードは事業の支払いだけに使い、私的な支払いには使わないようにしましょう。どうしても私的な支払いが混ざった場合は、早めに個人のお金で精算しておくと、決算のときに役員貸付金として残らずに済みます。
迷う取引は早めに相談する
金額の大きい取引や、事業用か私用か判断に迷う支払いは、その都度税理士に相談しておくと、決算のときにまとめて悩まずに済みます。節税よりも、金融機関から信頼される決算書をつくることを優先したい会社は、毎月の帳簿の確認を受けられる体制を整えておくと安心です。
立替えと精算のルールを決める
役員が個人のお金で会社の経費を立て替えることもあれば、会社のお金で個人の支払いをしてしまうこともあります。どちらも、その都度精算しないまま放置すると、役員貸付金や役員借入金として残ってしまいます。社内で次のようなルールを決めておくと、精算の漏れを防ぎやすくなります。
- 立替えた経費は、領収書を添えて月末にまとめて精算する
- 会社のカードで私的な支払いをした場合は、翌月中に個人の口座から振り込んで返す
- 精算はできるだけ振込で行い、現金のやり取りを減らす
- 精算の内容は、経費精算書などの形で記録に残す
毎月の数字を確認する習慣をつける
帳簿を毎月締めて、売上や経費、預金の残高を確認する習慣をつけると、入力の誤りや使い道のわからない出金に早く気づけます。会社が成長して車両や設備などの大きな買い物を検討するときにも、毎月の数字が整っていれば、資金の計画を立てやすくなります。
2期目の決算で確認しておきたい税金のポイント

2期目は、1期目とは税金の扱いが変わることがあります。帳簿づくりとあわせて、次の点を確認しておきましょう。
消費税の納税義務
設立したばかりの法人は、資本金が1,000万円未満であれば、大きな会社が出資した子会社などの例外を除き、原則として1期目と2期目は消費税の納税義務が免除されます。ただし、2期目については、原則として1期目の開始の日から6か月間(特定期間)の課税売上高と給与等の支払額がいずれも1,000万円を超えると、課税事業者になります。また、インボイス発行事業者の登録をしている場合は、売上の規模にかかわらず消費税の申告が必要です。
法人税の中間申告
1期目の法人税額が一定の金額を超える場合は、2期目の途中で中間申告と納税が必要になります。具体的には、前の事業年度の法人税額をその月数で割って6を掛けた金額が10万円を超えると、中間申告の対象になります。1期目で利益が出た会社は、2期目の途中に納税のための資金が必要になることを想定しておきましょう。
1期目の赤字の繰越し
1期目が赤字だった場合、青色申告をしていれば、その赤字(欠損金)を翌期以降に繰り越して、2期目以降の黒字と相殺できます。この繰越しを受けるには、赤字の年度に青色申告書を提出し、その後も続けて確定申告書を提出していることが必要です。申告を1年でも忘れると繰越しが使えなくなることがあるため、期限内の申告を続けることが大切です。
2期目の決算前に確認したいチェックリスト

決算月を迎える前に、次の項目を確認しておくと、決算の作業がスムーズに進みます。
- 預金の帳簿残高が、決算日時点の通帳や残高証明と一致している
- 売掛金・買掛金の残高が、取引先ごとの請求書と一致している
- 使い道のわからない出金や、仮払金・仮受金のまま残っている取引がない
- 役員個人の支払いが会社の経費に混ざっていない
- 役員貸付金と役員借入金の残高を、役員本人と確認している
- 10万円以上の備品や設備を購入した場合に、固定資産として計上するか、少額減価償却資産の特例などを使うかを決めている
- 決算月の給与や家賃など、未払いになっている費用を把握している
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※本記事は、2026年10月時点の法令をもとに作成しています。個別のご判断は、状況によって異なります。




