会社を設立したばかりの経営者にとって、「法人税はいつから払うのか」「申告と納付はいつまでにすればよいのか」は、早めに知っておきたい大切なポイントです。税金の期限を守れないと、加算税や延滞税がかかるだけでなく、青色申告の優遇を受けられなくなることもあります。
結論からいうと、法人税は設立してすぐに払うのではなく、最初の事業年度が終わった後、その年度の決算をもとに申告して納めるのが基本です。申告と納付の期限は、原則として事業年度の終了日の翌日から2か月以内です。
この記事では、法人税の基本から、新しい会社が法人税を払い始めるタイミング、申告と納付の期限、法人税と一緒に払う税金、2026年4月から始まった防衛特別法人税、納付の方法、期限に遅れたときの対応まで、順を追って解説します。
Contents
法人税とは?課税対象と税金の仕組み

法人税は、会社が1年間の事業で得た所得(もうけ)にかかる国の税金です。ここでいう所得は、売上から経費を引いた利益そのものではなく、会計上の利益に、税法のルールにもとづく調整(加算や減算)を行って計算した「課税所得」のことです。
法人税の課税対象
法人税の課税対象は、株式会社、合同会社、合資会社、合名会社など、法人格をもつ会社です。会社の規模に関係なく、1人で経営する小さな会社も対象になります。
一般社団法人や公益法人などの非営利の団体も、収益事業を行っている場合は、その収益事業から生じた所得に法人税がかかります。
法人税の計算の流れ
法人税の計算は、次の流れで行います。
| 順番 | 内容 |
|---|---|
| 1 | 決算で、会計上の利益を確定する |
| 2 | 税法のルールで、加算(交際費の超過分など)と減算を行い、課税所得を計算する |
| 3 | 課税所得に税率をかけて、法人税額を計算する |
| 4 | 税額控除などを差し引き、納める税額を確定する |
| 5 | 申告書を作成して、期限までに申告・納付する |
会計上の利益と課税所得は、一致しないことが多くあります。たとえば、接待交際費には、経費(損金)にできる金額に上限があります。決算で利益が出ていても、税法上の調整によって課税所得が変わるため、正確に計算するには専門的な知識が必要です。
新設法人は法人税をいつから払う?

新しく設立した会社が法人税を払うのは、設立の日ではなく、最初の事業年度が終わった後です。設立した直後に、法人税を払う必要はありません。
最初の事業年度の考え方
会社は、定款で定めた決算日ごとに、1年間を1つの区切り(事業年度)として、損益を計算します。設立した日から最初の決算日までが、最初の事業年度です。たとえば、4月10日に設立して、決算日を3月末とした会社の最初の事業年度は、4月10日から翌年の3月31日までの約1年間です。
事業年度は最長で1年間と決められています。決算日は会社が自由に決められますが、一度決めた決算日を変更するには、手続きが必要です。設立するときに、売上が多くなる時期や、事務作業の負担を考えて、決算日を決めておきましょう。
設立から納付までのスケジュールの例
次の表は、4月10日に設立して、決算日を3月末にした会社の例です。
| 時期 | やること |
|---|---|
| 設立の日から2か月以内 | 法人設立届出書などを、税務署や自治体に提出する |
| 設立から3か月以内(または最初の事業年度の終了日のうち早い日の前日まで) | 青色申告の承認申請書を、税務署に提出する |
| 最初の決算日(翌年3月31日) | 1年間の帳簿を締めて、決算を行う |
| 決算日の翌日から2か月以内(5月31日まで) | 法人税などを申告し、納付する |
赤字のときも申告は必要
最初の事業年度が赤字で、法人税がかからない場合でも、申告書の提出は必要です。赤字の場合でも、法人住民税の均等割は、最低でも年7万円程度かかります。税金がゼロだから申告しなくてよい、というわけではありません。
また、青色申告の承認を受けている会社は、赤字を翌年以降に繰り越して、将来の黒字と相殺できます。この繰り越しを使うためには、赤字の年も、期限内に申告書を出しておくことが重要です。
法人税の申告期限と納付期限

法人税の申告期限と納付期限は、原則として同じ日です。事業年度の終了日の翌日から2か月以内に、申告と納付を済ませます。
決算月ごとの期限の目安
| 決算月 | 申告・納付の期限 |
|---|---|
| 3月末 | 5月31日 |
| 6月末 | 8月31日 |
| 9月末 | 11月30日 |
| 12月末 | 翌年2月末日 |
期限の日が土日や祝日に当たる場合は、その次の平日が期限になります。ただし、期限の直前は金融機関や税務署の窓口、電子申告のシステムが混み合いやすいため、余裕をもって準備しましょう。
申告期限を1か月延長できる特例
決算が期限内に確定しない特別な事情がある会社は、税務署に申請して、申告の期限を1か月延ばす特例を使えます。たとえば、定款で、定時株主総会を事業年度の終了後3か月以内に開催すると定めている会社が、これにあたります。この特例を使うには、事業年度の終了日までに、申請書を出しておく必要があります。
注意したいのは、延びるのは申告の期限だけで、納付の期限は延びないことです。2か月を過ぎてから納めると、延びた期間の日数に応じた利子税がかかります。この特例を使う場合も、納める税額を見積もって、2か月以内に納付しておくのが安全です。
中間申告が必要になる場合
事業年度が6か月を超える会社は、前の事業年度の法人税額が20万円を超えている場合に、事業年度の途中で「中間申告」をして、税金の一部を前払いする必要があります。中間申告の期限は、事業年度開始から6か月が経った日から2か月以内です。
最初の事業年度には、前の事業年度がないため、中間申告は不要です。2期目に入ると、最初の事業年度の法人税額が20万円を超えている場合に、中間申告が必要になる可能性があります。うっかり忘れやすいため、2期目の期中に、見込みを確認しておきましょう。
法人税と一緒に払う税金

会社の利益に対しては、法人税のほかにも、いくつかの税金がかかります。それぞれ、申告と納付の先が異なります。
| 税金 | 内容 | 納付先 |
|---|---|---|
| 法人税 | 所得にかかる国の税金 | 税務署 |
| 地方法人税 | 法人税額にかかる国の税金(法人税額の10.3%) | 税務署 |
| 法人事業税 | 所得などにかかる都道府県の税金 | 都道府県 |
| 法人住民税 | 法人税額にかかる税金と、赤字でもかかる均等割 | 都道府県・市区町村 |
| 消費税 | 売上にかかる消費税から、仕入にかかる消費税を引いた額 | 税務署 |
これらの税金の申告と納付の期限は、原則として、法人税と同じ事業年度終了後2か月以内です。
消費税は、資本金が1,000万円未満の新しい会社の場合、原則として設立後の最初の2年間は、納税が免除されます(親会社の規模などによる例外があります)。ただし、インボイスの発行事業者として登録すると、免除されなくなります。
2026年4月から始まった防衛特別法人税
防衛力を強化するための財源として、2026年4月1日以後に始まる事業年度から、防衛特別法人税が課されています。税額は、次の式で計算します。
- 防衛特別法人税額 =(基準法人税額 - 500万円)× 4%
基準法人税額は、税額控除を差し引く前の法人税額です。年500万円の控除があるため、法人税額が年500万円までの会社は、納める税額はありません。中小企業の場合は、軽減税率の15%が適用されるため、課税所得がおおむね2,400万円を超えるあたりから対象になります。多くの中小企業では、納税額がゼロになる見込みです。
ただし、納める税額がゼロの場合でも、申告書の提出は必要です。決算月によって適用が始まる事業年度が異なるため、自社がいつから対象になるのかは、税理士に確認しておきましょう。
法人税の税率と税額の計算例

法人税の税率は、会社の規模と所得の金額によって異なります。
| 資本金 | 所得金額 | 法人税率 |
|---|---|---|
| 1億円超 | 全額 | 23.2% |
| 1億円以下 | 年800万円以下の部分 | 15%(過去3年間の平均所得が15億円を超える会社は19%) |
| 1億円以下 | 年800万円を超える部分 | 23.2% |
中小企業の15%の税率は、期限のある特例措置として適用されています。税制改正で内容が変わることがあるため、申告するときは、その年の最新の内容を確認してください。
税額の計算例
次の数字は説明のための仮の例です。資本金1,000万円の会社で、課税所得が1,200万円だった場合の法人税は、次のように計算します。
- 800万円以下の部分:800万円 × 15% = 120万円
- 800万円を超える部分:400万円 × 23.2% = 92万8,000円
- 法人税額の合計:212万8,000円
このほかに、地方法人税、事業税、住民税がかかります。会社が実際に負担する税金の総額は、所得のおよそ2割から3割台が目安です。利益が出たら、その分の納税資金を確保しておくことが大切です。納税資金を使ってしまい、納付のときに資金が足りなくなる会社も少なくありません。
特例や控除による節税
法人税には、一定の要件を満たすと税額を減らせる制度があります。代表的なものに、中小企業が機械装置などを導入したときの税額控除や特別償却、研究開発を行った場合の税額控除、従業員の賃金を引き上げた場合の税額控除などがあります。
これらの制度は、適用を受けるための届出や申請が必要な場合があり、年度ごとに内容が変わります。設備の購入や賃上げを行う前に、使える制度があるか、税理士に確認しておきましょう。
法人税の納付方法

法人税の納付は、次のような方法でできます。
- 電子納税:e-Taxを使い、インターネットバンキングなどで納付する
- ダイレクト納付:e-Taxで事前に届出をして、預金口座から納付する
- 金融機関や税務署の窓口で、納付書を使って現金で納付する
- クレジットカード納付:国税のクレジットカード納付のサイトで納付する(決済手数料がかかる)
- QRコードによる納付:納付額が30万円以下の場合に、コンビニなどで納付する
納付の期限までに、確実に入金されることが大切です。インターネットバンキングで納付するときは、振込の限度額の設定を事前に確認しておきましょう。電子申告と電子納税を組み合わせると、税務署の窓口に行く手間が省け、期限前の混雑も避けられます。
法人税を滞納・期限に遅れたときの影響と対処法

申告や納付の期限に遅れると、本来の税金に加えて、次のようなペナルティがかかります。
期限に遅れたときのペナルティ
- 延滞税:納付が遅れた日数に応じてかかる(納期限の翌日から2か月間は低い割合、それ以降は高い割合)
- 無申告加算税:期限までに申告しなかった場合にかかる
- 過少申告加算税:申告した税額が少なかった場合にかかる
- 重加算税:事実を隠したり、仮装したりした場合にかかる重い税金
さらに、青色申告の承認が取り消されることもあります。青色申告の承認を受けている会社は、赤字の繰り越しなどの優遇を受けられますが、期限を守らないなどの場合には、承認が取り消されることがあります。
また、滞納が続くと、税務署から督促を受け、預金や売掛金などの財産が差し押さえられることがあります。取引先の売掛金が差し押さえられると、取引先に滞納が知られ、会社の信用にも大きく影響します。融資や補助金の審査でも、不利になることがあります。
納付が難しいときの対処法
資金が足りず、納付が難しいときは、期限を過ぎる前に、税務署に相談しましょう。事情によっては、次のような制度を利用できます。
- 納税の猶予:一時的に納税が難しい事情がある場合に、納付を先に延ばす制度
- 換価の猶予:すでに滞納している場合に、財産の差押えや売却を猶予する制度
- 分割での納付:納付を分けて少しずつ払う方法
いずれの制度も、利用するには申請が必要で、審査があります。相談が遅れるほど、使える選択肢が少なくなります。期限の前に早めに相談することが、状況を悪化させないための基本です。
初年度に慌てないための準備

最初の事業年度は、税金の申告と納付に慣れていないため、期限に間に合わなくなる会社が少なくありません。次の準備をしておくと、決算の時期に慌てずに済みます。
設立後の届出を忘れない
会社を設立したら、税務署や自治体に、設立の届出をします。特に、青色申告の承認申請書は、期限を過ぎると最初の事業年度には間に合わないため、設立後すぐに準備しましょう。
日々の帳簿をつけておく
法人税の申告は、日々の取引を記録した帳簿が土台になります。決算の直前に、1年分の取引をまとめて入力すると、時間がかかり、ミスも増えます。会計ソフトを使い、毎月、取引を入力する習慣をつけましょう。クラウド会計ソフトであれば、銀行口座やクレジットカードの取引を自動で取り込めるため、入力の手間を減らせます。
納税資金を計画的にためる
決算の時点で利益が出ていたら、その利益に応じた税金を、2か月以内に納める必要があります。毎月の試算表を見て、見込みの税額を確認し、納税の資金を別にためておきましょう。期中に利益の見通しを立てておくと、節税の対策もとりやすくなります。
税理士を活用する
法人税は、税法の改正が毎年のように行われるため、自社だけで最新の内容を追い続けるのは簡単ではありません。税理士に依頼すると、決算や申告書の作成だけでなく、利用できる特例の確認、納税資金の見込み、節税の提案まで、まとめて相談できます。税理士の選び方や依頼できる内容は、会社の状況によって変わるため、設立の段階から相談しておくと、後の負担が減ります。
法人税の期限でよくある誤解

法人税の期限や納付については、次のような誤解がよく見られます。
- 設立したらすぐに、法人税を払う必要がある → 設立の直後ではなく、最初の決算の後に申告して納めます。
- 赤字なら、申告しなくてもよい → 赤字でも申告書は必要です。また、法人住民税の均等割は赤字でもかかります。
- 申告の期限を延ばせば、納付の期限も延びる → 延びるのは申告だけで、納付の期限は延びません。延びた期間には、利子税がかかります。
- 納税額がゼロなら、申告は不要である → 防衛特別法人税も含め、納める税額がゼロの場合でも、申告書の提出は必要です。
- 期限に間に合わなくても、あとで払えば問題ない → 延滞税や加算税がかかり、青色申告の承認が取り消されることもあります。
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※本記事は、2026年10月時点の情報をもとに作成しています。税制や手続きは改正されることがあるため、申告や納付の前に、国税庁などの公式情報をご確認ください。




