事業を、誰かに引き継ぐとき、「子どもや、親族に、継がせるべきか」「長年、会社を支えてきた、従業員に、任せるべきか」と、悩む経営者は、少なくありません。どちらにも、メリットと、課題があり、会社や、家族の状況によって、最適な選択は、変わります。
この記事では、親族に引き継ぐ「親族内承継」と、役員や、従業員に引き継ぐ「従業員承継」を、比較しながら、それぞれの特徴、メリット、課題、税金や、資金の面、個人保証の扱い、選ぶときの判断のポイントを、解説します。どちらが正しいということはなく、会社と、後継者の状況に、合った方法を、選ぶことが、大切です。
なお、制度や数字は、改正されることがあります。この記事は、2026年10月時点で、中小企業庁、国税庁などの公表資料をもとにしています。実際の判断では、最新の情報を確認し、専門家にご相談ください。
Contents
事業承継の、3つの類型

中小企業庁の事業承継ガイドラインでは、事業承継の類型を、次の3つに、分類しています。
| 類型 | 内容 |
|---|---|
| 親族内承継 | 経営者の子どもや、配偶者、兄弟姉妹など、親族に、引き継ぐ |
| 役員・従業員承継 | 会社の、役員や、従業員に、引き継ぐ |
| 社外への引継ぎ(M&A) | 外部の、会社や、個人に、引き継ぐ |
この記事では、このうち、親族内承継と、役員・従業員承継を、中心に、比較します。社外への引継ぎについては、別の記事で、解説しています。中小企業庁の資料では、近年、親族内承継の割合が、減少し、親族以外への承継の割合が、増えていることが、示されています。
親族内承継のメリットと課題

メリット
- 従業員や、取引先、金融機関などの、関係者から、理解や、支持を、得やすい
- 経営者の、家族として、会社の理念や、価値観を、継承しやすい
- 早い時期から、後継者を、育成しやすい
- 株式や、事業用の資産を、一体として、承継しやすい(贈与や、相続を通じて)
- 事業承継税制など、親族への承継に、使える制度が、ある
課題
- 後継者の能力や、意欲が、十分でない場合がある(血縁だけでは、経営の力は、決まらない)
- 後継者となる子が、継ぐことを、望んでいない場合がある
- 相続人が複数いる場合、遺産の分け方や、遺留分をめぐる、争いが、起こりやすい
- 贈与税や、相続税の負担が、大きくなる場合がある
- 公私混同が、起こりやすく、会社と家計の、区別が、あいまいになりがち
役員・従業員承継のメリットと課題

メリット
- 会社の事業や、社風、取引先を、よく知っている人に、引き継げる
- 後継者に、能力と意欲がある場合、経営の連続性を、保ちやすい
- 従業員の、雇用や、会社の、理念を、守りやすい
- 親族に、後継者がいない場合でも、事業を、続けられる
課題
- 株式を買い取る資金を、後継者が、用意するのが、難しい場合が、多い
- 経営者の、個人保証を、引き継ぐことへの、後継者の、不安が、大きい
- 家族や、親族の理解が、必要(経営者の家族との、関係が、課題になることがある)
- 従業員から、経営者に、立場が変わることで、他の従業員との関係が、難しくなる場合がある
- 承継の後も、親族が、株式を、持ち続けると、経営が、複雑になることがある
比較表:親族内承継と、従業員承継

| 項目 | 親族内承継 | 役員・従業員承継 |
|---|---|---|
| 関係者の理解 | 得やすい | 後継者の人柄や、実績による |
| 後継者の資金 | 贈与や、相続で、移すことが多い | 株式の買い取り資金が、課題になりやすい |
| 税金 | 贈与税、相続税が、課題。事業承継税制が、使える | 売買の場合は、売り手に、譲渡所得の税金。事業承継税制は、親族以外の後継者でも、使える場合がある |
| 相続の争い | 起こりやすい(遺留分など) | 経営者の親族と、後継者の間の、調整が必要 |
| 個人保証 | 後継者が、引き継ぐ場合が、多い | 後継者が、引き継ぐことへの、不安が、大きい |
税金や、資金の面から見る、承継の方法

親族内承継の場合
経営者が、生前に、株式を、子どもなどに、贈与すれば、贈与税が、課されます。経営者が、亡くなって、相続で、承継すれば、相続税が、課されます。国税庁によると、贈与税には、年間110万円の基礎控除があり、贈与を受ける人と、贈与する人の関係によって、一般税率と、特例税率が、適用されます。
また、非上場株式の、贈与や、相続については、法人版事業承継税制(特例措置)があり、一定の要件を満たすと、納税が猶予されます。国税庁の資料によると、特例措置は、特例承継計画の提出が、令和9年9月30日まで、相続や贈与の実施が、令和9年12月31日までと、期限が、決まっています。
従業員承継の場合
従業員(後継者)が、経営者から、株式を、買い取る場合は、売買の代金を、用意する必要があります。後継者に、資金が、ない場合は、次のような方法が、検討されます。
- 金融機関から、後継者個人が、融資を受ける
- 会社が、自己株式を、買い取る
- 分割して、支払う(分割払いの売買)
- 持株会社を、設立して、買い取る
売り手の経営者個人が、株式を売却した場合は、国税庁によると、非上場株式の、譲渡所得は、申告分離課税で、税率は20%(所得税15%、住民税5%)で、このほか、復興特別所得税が、課されます。売却の価格は、第三者との取引であれば、当事者の交渉で決まりますが、親族や、関係者との取引では、税務上の時価が、問題になることがあります。
個人保証の扱い

会社の借入について、経営者が、個人保証を、している場合は、承継のときに、後継者が、保証を引き継ぐかどうかが、大きな課題になります。特に、従業員承継では、後継者が、保証を引き継ぐことを、ためらい、承継が進まないことがあります。
対策としては、金融機関と、早めに、話し合い、保証の扱いを、決めておくことが、大切です。経営者保証の、扱いについては、「経営者保証に関するガイドライン」に基づく、対応が、広がっています。また、信用保証協会の、保証付き融資では、経営者以外の、第三者の個人連帯保証を、原則として、求めない方針が、監督指針に、示されています。承継の前に、会社の財務を、整え、経営者保証に頼らない、体制を、目指すことも、有効です。
想定ケースで考える

判断のイメージを、つかむために、想定のケースを、紹介します。実在の会社を、示すものでは、ありません。
ケースA:親族内承継が、向いているケース
長男が、すでに、同じ会社で、10年以上、働いていて、取引先とも、信頼関係が、あります。長男本人にも、承継の意思があり、他の相続人(次男、長女)とも、承継の方針に、合意できています。この場合は、親族内承継が、スムーズに、進む可能性が、高いといえます。生前に、株式を、計画的に、承継し、他の相続人への、財産の配分についても、事前に、話し合っておくことが、大切です。
ケースB:従業員承継が、向いているケース
子どもは、他の仕事に、就いていて、承継の意思が、ありません。一方で、会社には、長年、営業を、担当してきた、取締役がいて、取引先や、従業員からの信頼も、厚く、承継に、前向きです。この場合は、従業員承継が、有力な選択肢です。株式の買い取り資金や、個人保証の扱いが、課題になるため、事前に、金融機関や、専門家と、相談して、計画を、立てます。
従業員承継を進めるときの、手順

役員や、従業員に、承継する場合の、一般的な手順は、次のとおりです。
1. 後継者の候補と、意思を、確認する
候補者に、承継の話を、持ちかけ、本人の意思や、不安に思っていることを、聞きます。経営者としての、覚悟や、能力についても、時間をかけて、確認します。
2. 家族の理解を、得る
経営者の、家族(配偶者や、子ども)に、承継の方針を、説明し、理解を、得ておきます。承継後に、株式や、経営をめぐる、トラブルを、防ぐためです。
3. 株式の評価と、買い取りの条件を、決める
株式の評価額を、算定し、売買の価格、支払いの方法、時期などの、条件を、決めます。税務上の、時価の確認も、必要です。
4. 資金の調達方法を、決める
後継者が、株式を、買い取る資金を、どのように用意するかを、決めます。金融機関からの融資、会社の自己株式の取得、分割払いなどを、検討します。
5. 個人保証や、借入の扱いを、整理する
金融機関と、経営者保証の扱いについて、話し合い、後継者の負担を、できるだけ、小さくする方法を、探ります。
6. 承継を、実行し、関係者に、伝える
株式の譲渡や、代表者の変更の手続きを、行い、従業員や、取引先に、承継を、伝えます。承継のあとも、経営者と、後継者の役割を、明確にして、スムーズな、移行を、図ります。
株式の買い取り資金の、イメージ(想定)

従業員承継で、後継者が、株式を、買い取る場合の、資金のイメージを、想定の数字で、示します。この例は、理解のための想定です。
- 株式の評価額(売買の価格):5,000万円
- 後継者が、用意できる自己資金:500万円
- 不足する資金:4,500万円
不足する、4,500万円について、金融機関からの、融資、分割払い、会社による自己株式の取得などを、組み合わせて、調達する方法が、考えられます。たとえば、5年間の分割払いにする場合は、年間に、900万円の支払いが、必要です。後継者の収入や、会社の資金繰りで、無理なく、支払えるかを、確認する必要があります。支払いの負担が、重い場合は、株式の一部を、先に承継して、残りを、段階的に承継する方法も、あります。
承継のあとに、起こりやすい課題と対策

- 前の経営者が、会社に、口を出し続ける:承継後の役割(顧問、相談役など)と、期間を、事前に、決めておく
- 従業員が、新しい経営者に、従わない:承継の方針や、後継者の実績を、丁寧に伝え、時間をかけて、信頼を築く
- 家族が、経営に関与する:家族の役割を、整理し、経営と家計を、区別する
- 株式が、複数の人に、分散している:株式を、後継者に、集約する方法を、検討する
選ぶときの、判断のポイント

親族内承継と、従業員承継の、どちらを選ぶかは、次のようなポイントで、考えます。
- 後継者の候補は、いるか(親族、従業員、それぞれに)
- 候補者に、経営者としての、能力と、意欲が、あるか
- 候補者本人が、承継を、望んでいるか
- 株式の取得や、税金の資金を、用意できるか
- 個人保証や、借入の扱いを、引き継げるか
- 家族や、関係者の理解が、得られるか
どちらも難しい場合は、社外への引継ぎ(M&A)という選択肢があります。複数の選択肢を、比べて、最も、会社と、従業員、取引先のためになる方法を、選ぶことが、大切です。
どちらを選んでも、共通して大切なこと

親族内承継か、従業員承継かに、かかわらず、次の点は、共通して、大切です。
- 早めに、準備を始める:準備には、5年から10年程度かかるとされている(中小企業庁の資料による)
- 後継者を、計画的に、育成する
- 承継の方針を、関係者に、丁寧に伝える
- 会社の財務を、整え、課題を、整理しておく
- 税金や、資金の計画を、立てる
- 専門家や、公的な支援機関に、相談する
親族か、従業員かに関する、よくある質問

Q1. 子どもがいるのに、従業員に、継がせてもよいですか?
よいです。子どもに、継ぐ意思や、能力がない場合に、無理に継がせるよりも、能力と意欲のある、従業員に、継がせる選択は、会社の将来にとって、よい結果になることも、あります。家族の理解を、得ることが、大切です。
Q2. 従業員に継がせるとき、株式は、全部、渡す必要がありますか?
必ずしも、全部を、渡す必要は、ありません。経営の安定のためには、後継者に、議決権の過半数など、十分な株式を、集中させることが、望ましいですが、承継の方法や、時期を、段階的にすることもできます。
Q3. 親族と従業員の、両方を、後継者の候補にしてもよいですか?
可能ですが、後継者の位置づけを、明確にしないと、関係者の間に、不安や対立が、生じることがあります。早い段階で、方針を決め、関係者に、説明することが、大切です。
事業承継のお悩みはストラーダグループへ

ストラーダグループでは、税理士や公認会計士などの専門家が連携して、事業承継のご相談を、サポートしています。親族内承継、従業員承継、M&Aによる承継の、比較の検討、自社株式の評価、税金の試算、事業承継税制の活用まで、一貫してご相談いただけます。初回のご相談は無料です。お気軽にご相談ください。
※本記事は、2026年10月時点の情報をもとに作成しています。制度や数字は変更されることがあるため、手続きの前に、中小企業庁、国税庁などの公式情報をご確認ください。




