法人を設立し、事業を行っていく中で避けて通れないのが「法人税」です。経営者や経理担当者にとって、法人税の仕組みや税率、申告や納付の流れを正しく理解しておくことは、健全な財務運営に欠かせません。
本記事では、法人税の基本的な仕組みから、具体的な税率や計算方法、実務上の注意点、さらには知っておきたい節税対策までを分かりやすく解説します。
Contents
法人税とは?仕組みと基本をわかりやすく解説
まずは「法人税とは何か」という基本的な定義から、法人がどのような条件で課税対象になるのか、さらに法人税の種類やその内訳、実効税率について解説します。
法人税の定義と課税対象
法人税とは、法人の所得に対して課される国税のことを指します。法人が1年間の事業活動で得た利益(所得)に応じて税額が決まり、原則として毎年1回、法人税申告書を提出し、納税する必要があります。
法人税の納税義務があるのは、次のような法人です。
- 株式会社
- 有限会社
- 合同会社(LLC)
- 一般社団法人・財団法人(営利活動を行っている場合)
- 医療法人・学校法人など特別法人(一定の条件により課税)
なお、法人税は「法人税法」に基づいて課税されます。個人が支払う所得税とは異なり、法人格を有する団体の経済活動に課税される点が特徴です。
法人税の種類と実効税率の仕組み
法人が支払う税金は法人税だけではありません。法人にかかる主な税金は、国税と地方税に分かれており、これらを合算したものが「法人実効税率」と呼ばれます。法人にかかる主な税金と概要は以下の通りです。
税目 | 概要 |
---|---|
法人税(国税) | 法人の所得に対して課される基本税 |
地方法人税(国税) | 法人税の一部として課される追加的な税 |
法人住民税(地方税) | 地方自治体に支払う税。法人税額をもとに計算 |
事業税(地方税) | 所得や付加価値などを基準に課税される税 |
これらを合算した「実効税率」は法人が実際に負担する全体的な税率を示します。目安は以下の通りです
税目 | 概要 |
---|---|
法人税(国税) | 所得に対して課される基本税。課税所得に一定の税率で課税。 |
地方法人税(国税) | 法人税に上乗せされる税。税率は法人税額の10.3%。 |
法人住民税(地方税) | 「法人税割」と「均等割」で構成。自治体に納付。 |
事業税(地方税) | 所得・付加価値・資本を基準に課税。外形標準課税あり。 |
このように、実効税率は法人の規模や所得により異なります。節税を考えるうえでも、どの税目がどれだけの負担になるのかを理解しておくことが重要です。
法人税率とその計算方法
節税対策を検討する前提としても、まず正確な税率や計算方法を理解することが重要です。ここからは法人税率の基本的な考え方から、中小法人に適用される軽減税率、そして法人税の実際の計算手順や必要書類について詳しく解説します。
法人税率の基本と中小企業への適用
法人税には、所得に応じて異なる税率が設定されています。大企業と中小法人では適用される税率が異なり、中小企業に対しては税制上の優遇措置が設けられています。法人税の税率は2025年現在以下の通りです。
所得区分 | 税率(適用対象) |
---|---|
年800万円以下の所得 | 15%(中小法人:資本金1億円以下) |
年800万円超の所得 | 23.2%(中小法人・大法人共通) |
※中小法人の判定は、原則として資本金1億円以下かつ大企業の子会社等でないことが条件です。
また、地方法人税が加算されるため、実質的な負担率はもう少し高くなります。法人住民税や事業税と合わせた実効税率で考えると、以下のようになります。
法人の区分 | 実効税率の目安 |
---|---|
中小法人(所得800万円以下) | 約23.2% |
大法人(所得にかかわらず) | 約29.7〜30.6% |
このように、企業の規模や所得額により、負担する税率は大きく異なります。
法人税の計算方法と必要書類
法人税の計算は、まず会社の決算書をもとに課税所得を算出し、その所得に税率をかけて税額を求めるという流れで行います。実際の税額計算には、会計上の利益と税務上の所得に差が出るため、一定の調整が必要です。
法人税計算の基本ステップは以下の通りです。
- 1.決算書から当期純利益を確認
- 2.税務調整で課税所得を算出
- 3.所得に応じた法人税率を適用
- 4.地方法人税・住民税・事業税を加算
- 5.税額控除・中間納付分を差し引いて納付額を確定
また、計算に必要となる書類は以下の通りです。
- ・損益計算書(PL)
- ・貸借対照表(BS)
- ・勘定科目内訳書
- ・法人税申告書(別表一式)
- ・前期・当期の帳簿資料
特に、税務調整が必要な項目は、会計と税務で取り扱いが異なるため注意が必要です。
法人税の申告と納付に関する実務知識
法人税の申告と納付は、企業にとって毎年発生する重要な業務のひとつです。期限を守ることはもちろん、必要な書類の準備や手続きの流れを理解しておかないと、加算税や延滞税などのペナルティが発生する可能性もあります。
申告期限と予定納税の流れ
法人税の申告には、明確に定められた期限があります。期限内に申告・納税を完了させるためには、事前のスケジュール管理が欠かせません。また、所得に応じて「予定納税(中間納付)」の義務が発生する場合もあります。
原則として法人税の申告と納付は、事業年度終了日の翌日から2ヶ月以内にしなければなりません。ただし、所轄税務署への申請により「申告期限延長の特例」が認められれば1ヶ月の延長が可能となります。
前事業年度の法人税額が10万円を超えている場合は、中間納付(予定納税)が義務付けられます。この納付は、原則として事業年度開始から6か月を経過した日の翌日から2か月以内に行う必要があります。
納付・還付の方法と電子申告(e-Tax)のポイント
法人税の納付は、いくつかの方法から選ぶことができます。近年では、利便性の高い電子申告(e-Tax)の利用も増えており、業務の効率化に繋がっています。また、過納があった場合には還付手続きを行うことも可能です。
法人税の納付方法は以下の通りです。
- ・金融機関の窓口で納付書を使用して支払い
- ・インターネットバンキング(ダイレクト納付)
- ・勘定科目内訳書
- ・コンビニ納付(条件あり)
- ・e-Taxを利用したオンライン納付
近年利用者が増えているe-Taxのメリットは以下の通りです。
- ・24時間いつでも申告可能
- ・郵送コスト・手間を削減
- ・勘過去のデータを活用しやすい
- ・添付書類の省略が可能になるケースもあり
e-Taxの利用には、事前の電子証明書登録や利用者識別番号の取得が必要となるため、余裕を持って準備しておきましょう。
また、以下のようなケースでは差額分の還付を受けることが可能です。
- ・仮決算による中間納付が多すぎた
- ・税額控除などの適用により本税が減額された
還付は、法人税申告書の「還付請求欄」に記載することで自動的に処理され、所轄税務署での確認後、数週間〜1か月ほどで指定口座に振り込まれます。
法人税の節税対策と賢い経営のコツ
法人税の納税は企業の社会的責任である一方、正しく知識を持つことで、合法的に税負担を軽減する節税も可能です。ただし、節税と脱税は全くの別物。法律の範囲内で、事業の健全な成長に資する「攻めの節税」を実行することが大切です。
合法的な節税の基本と注意点
節税と脱税の違いは以下の通りです。
- 節税:法令の範囲内で税金を減らす正当な行為
- 脱税:意図的な所得隠しや不正経理により税を免れる違法行為
目的が税負担の回避そのものになってしまうと、税務調査で否認されるリスクが高まります。
合法的な節税の基本と注意点
節税策は数多くありますが、ここでは中小企業でも実践しやすい代表的な方法を中心に紹介します。
節税策 | 概要・効果・留意点 |
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減価償却の活用 | 少額資産は即時償却が可能。特別・加速度償却も利用可。初年度の費用圧縮に有効だが、届出が必要な場合あり。 |
福利厚生費の活用 | 健診・食事補助などが損金算入可能。要件を満たせば節税につながるが、制度設計が重要。 |
投資促進税制の利用 | 指定設備の導入で即時償却または税額控除が可能。条件や期限の確認が必須で、税制改正の影響も受けやすい。 |
在庫・未払経費の見直し | 評価や計上の見直しで利益圧縮が可能。過度な圧縮は翌期の利益に影響するため注意が必要。 |
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