会社を経営すると、避けて通れない税金が、「法人税」です。「法人税とは、何にかかる税金なのか」「税率は、どのくらいなのか」「どのように、計算し、いつまでに、納めるのか」と、疑問を持つ経営者や、会社の経理担当者は、多くいます。
この記事では、国税庁の公表資料をもとに、法人税の基本を、解説します。法人税の仕組み、税率、所得の計算の考え方、申告と納付の期限、中小企業向けの特例、納付が遅れた場合の扱いを、順に整理します。法人税は、会社の「利益」に課税される税金で、利益が出ていない年度は、原則として、かかりませんが、赤字の場合でも、申告は必要です。
なお、税制は、改正されることがあります。この記事は、2026年10月時点の国税庁の公表情報をもとにしています。実際の申告では、最新の情報を確認し、税理士にご相談ください。
Contents
法人税とは?

法人税とは、法人(会社など)の、所得(もうけ)に対して、課税される国税です。個人の所得に課税される所得税に、相当する税金です。会社は、事業年度(会計の期間)ごとに、所得を計算し、法人税を、申告して納めます。
法人税の納税義務者
法人税を納めるのは、株式会社や、合同会社などの、普通法人のほか、協同組合など、公益法人等、人格のない社団などです。法人の種類によって、課税される範囲や、税率が、異なる場合があります。ここでは、一般的な、中小企業の、普通法人を、中心に、解説します。
法人税と、あわせて納める税金
会社が、所得に対して、納める税金は、法人税だけではありません。次のような税金も、あわせて、申告し、納付します。
- 地方法人税:法人税額を基準に、計算される国税
- 法人事業税、特別法人事業税:事務所のある都道府県に納める税金
- 法人住民税:事務所のある都道府県と市区町村に納める税金(均等割は、赤字でも納める)
法人税の税率

国税庁のタックスアンサー(令和8年4月1日現在法令等)によると、法人税の税率は、法人の区分に応じて、決まっています。普通法人の場合は、次のとおりです。
| 法人の区分 | 所得の区分 | 税率 |
|---|---|---|
| 資本金1億円以下の法人など(一定の法人を除く) | 年800万円以下の部分 | 15% |
| 同上 | 年800万円を超える部分 | 23.2% |
| 上記以外の普通法人 | 全体 | 23.2% |
なお、所得金額が年10億円を超える事業年度については、年800万円以下の部分に、適用される税率が、17%となります。以前の記事などでは、税率が「23.4%」と紹介されていることがありますが、これは、平成30年3月以前に開始した事業年度の税率で、現在は、23.2%です。
軽減税率の対象にならない法人
資本金が1億円以下でも、次のような法人は、軽減税率の対象から、除かれます。
- 資本金の額が5億円以上の法人など、大法人との間に、その大法人による完全支配関係がある普通法人
- 相互会社、外国相互会社、投資法人、特定目的会社、受託法人
法人税の所得の計算の考え方

法人税の課税の対象となる「所得」は、会計上の利益と、必ずしも一致しません。税法のルールに従って、計算されます。
益金と、損金
法人税の所得は、「益金(税務上の収益)」から、「損金(税務上の費用)」を、差し引いて、計算します。
- 益金:売上、受取利息、資産の売却益など
- 損金:売上原価、給与、家賃、減価償却費、租税公課など、事業のために必要な費用
会計上の利益に、税法のルールに基づく、加算(益金算入、損金不算入)と、減算(益金不算入、損金算入)の調整を行って、税務上の所得を、求めます。この調整を、「申告調整」といいます。
損金にならない、主な支出
会計上は、費用であっても、税務上、損金にならない(または、一部しかならない)支出があります。主なものは、次のとおりです。
- 交際費等:資本金1億円以下の法人は、年800万円までの定額控除、または、飲食費の50%までの、損金算入のいずれかを、選べる(国税庁のタックスアンサーによる)。参加者1人あたり10,000円以下の飲食費は、一定の書類を保存すれば、交際費等から除かれる
- 役員給与:定期同額給与などに、該当しないものは、損金にならない。また、不相当に高額な部分も、損金にならない
- 法人税、住民税などの、一部の税金や、罰金、科料など
少額の減価償却資産の特例
中小企業者などは、青色申告書を提出する場合に、一定の少額の減価償却資産を、取得した事業年度に、全額、損金にできる特例があります。国税庁によると、令和8年4月1日以後に取得した資産については、取得価額が40万円未満のものが、対象となり、適用期限が、令和11年3月31日までです。対象となる取得価額の合計額は、年300万円が上限で、常時使用する従業員数が400人以下の法人が、対象です。
欠損金の繰越控除
事業年度に、赤字(欠損金)が出た場合は、青色申告であれば、その赤字を、翌期以降に、繰り越して、将来の所得から、差し引けます。国税庁のタックスアンサーによると、確定申告書を提出する法人の、各事業年度開始の日前10年以内に開始した事業年度で、青色申告書を提出した事業年度に生じた欠損金額は、各事業年度の所得金額の計算上、損金の額に算入されます。たとえば、繰越欠損金が150万円で、その事業年度の、繰越欠損金控除前の所得金額が100万円の場合は、100万円が、損金に算入されて、その事業年度の所得は0になります。残りの50万円は、さらに翌期以降に、繰り越せます。
法人税額の計算(例)

法人税額の計算の、イメージを、数字で示します。この例は、理解のための想定です。資本金が1億円以下の普通法人(軽減税率の対象)で、所得金額が、1,000万円の場合を、考えます(所得が年10億円以下の場合)。
- 年800万円以下の部分:800万円×15%=120万円
- 年800万円を超える部分:(1,000万円-800万円)×23.2%=46万4,000円
- 法人税額の合計:166万4,000円
この法人税額に、加えて、地方法人税、法人事業税、特別法人事業税、法人住民税がかかります。実際の、税負担の合計は、これらを、あわせた額で、考える必要があります。
申告と納付の期限

法人税の申告と納付は、原則として、各事業年度の終了の日の翌日から、2か月以内に、行います。たとえば、決算日が3月31日の会社は、5月31日(休日の場合は、その翌日)が、期限です。法人税、地方法人税、法人事業税、法人住民税などは、いずれも、この期限が、基本になります。
申告期限の延長
定款などの定めや、特別の事情で、決算が、確定する時期が、遅れる場合は、申請をして、承認を受けることで、申告書の提出期限を、延長できる制度があります。ただし、延長されるのは、申告書の提出の期限で、納付の期限は、延長されません。延長した期間は、利子税がかかります。
中間申告
事業年度が6か月を超える会社は、前の事業年度の税額などに応じて、事業年度の途中で、中間申告をして、税金の一部を、納める必要がある場合があります。設立1期目は、前の事業年度がないため、原則として、必要ありません。
申告が遅れた場合の、ペナルティ

申告や納付が、期限に遅れたり、申告の内容に、誤りがあったりすると、次のような、ペナルティが課される場合があります。
- 延滞税:納付の期限の翌日から、納付する日までの日数に応じて、課される
- 無申告加算税:期限までに、申告しなかった場合に、課される
- 過少申告加算税:修正申告や、更正により、追加の税金が、生じた場合に、課される(国税通則法第65条)
- 重加算税:事実を隠蔽、または、仮装していた場合に、課される(国税通則法第68条)
- 青色申告の承認の取り消し:申告書の提出が遅れた場合などに、特典を失うおそれがある
赤字の場合でも、法人税の申告書は、提出する必要があります。申告しないと、欠損金の繰越控除などの、特典を、受けられなくなるおそれがあります。
法人税の申告書の主な構成

法人税の申告書は、複数の様式(別表)で、構成されています。主なものを、紹介します。
- 別表一:法人税額の計算の、全体をまとめる、申告書の中心となる様式
- 別表四:会計上の利益に、申告調整を行い、税務上の所得を、計算する様式
- 別表五:利益積立金額や、資本金等の額、納税充当金の動きを、示す様式
- 決算書(貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書など)と、勘定科目の内訳明細書
- 法人事業概況説明書:事業の概況を、説明する書類
申告書の作成には、専門的な知識が必要なため、多くの会社は、税理士に、依頼しています。会計ソフトと、申告書の作成ソフトを、連携させると、決算書から、申告書を、効率よく作成できます。
決算から、申告までの流れ

決算から、法人税の申告までの、一般的な流れを、整理します。
1. 決算の準備(決算日の前後)
決算日までに、帳簿を、締めて、棚卸、売掛金や買掛金の確認、固定資産の確認、未払いの費用の計上などを、行います。決算の前に、試算表で、利益の見込みを、確認し、必要に応じて、対策を検討します。
2. 決算書の作成
貸借対照表、損益計算書などの、決算書を作成します。会計上の利益が、確定します。
3. 申告書の作成
会計上の利益に、申告調整を行い、税務上の所得を、計算し、法人税額を、求めます。地方法人税、法人事業税、法人住民税なども、あわせて、計算します。
4. 株主総会などでの、決算の承認
決算書を、株主総会などで、承認します。承認の時期が、遅れる場合は、申告期限の延長を、検討します。
5. 申告と納付
決算日の翌日から2か月以内に、税務署、都道府県、市区町村に、申告書を提出し、税金を納付します。e-Taxを使うと、電子申告と、電子納税が、できます。
法人税の計算の、実務的な注意点

- 売上の計上の時期:売上は、原則として、商品を引き渡した日や、サービスを提供した日に、計上する。入金の時期とは、異なる
- 費用の計上の時期:費用は、原則として、債務が確定した時期に、計上する。まだ支払っていなくても、確定している費用は、未払金として、計上できる
- 減価償却:長く使える資産は、法定耐用年数にわたって、減価償却する。少額の資産は、特例を、確認する
- 貸倒れや、在庫の評価:売掛金の貸倒れや、在庫の評価の方法は、税法のルールに従う
- 領収書や、契約書の保存:経費の根拠を、示すために、法定の期間、保存する
特に、売上や、費用の計上の時期は、決算の際に、間違いやすい点です。期末の取引は、慎重に、確認してください。
法人税の節税の基本的な考え方

法人税の負担を、合法的に、抑えるためには、次のような考え方があります。
- 青色申告の承認を受け、欠損金の繰越控除や、少額減価償却資産の特例などを、活用する
- 役員報酬を、定期同額給与として、適切に、設計する
- 事業に必要な支出を、漏れなく、経費(損金)として、計上する
- 決算の前に、利益と税金の見込みを、確認し、必要な設備投資などを、計画的に行う
- 中小企業向けの、税制優遇(税額控除、特別償却など)を、確認する
ただし、節税のために、不要な支出を、増やしても、手元の資金が、減るだけです。事業に必要な支出を、適切に、処理することが、基本です。
法人税に関する、よくある質問

Q1. 赤字でも、法人税の申告は必要ですか?
必要です。赤字の場合は、納める法人税は、ありませんが、申告書の提出は必要です。青色申告の会社は、申告することで、赤字を、翌期以降に、繰り越せます。また、法人住民税の均等割は、赤字でも、納める必要があります。
Q2. 法人税は、いつ、納めますか?
原則として、各事業年度の終了の日の翌日から、2か月以内です。決算の確定が遅れる場合でも、納付の期限は、延長されないため、期限までに、見込みの額を、納める必要があります。
Q3. 税金は、会計上の利益に、税率を掛けた額ですか?
いいえ。税務上の所得は、会計上の利益に、税法のルールによる調整を、加えて計算します。会計上の利益と、税務上の所得は、一致しないことが、多くあります。
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※本記事は、2026年10月時点の情報をもとに作成しています。税制は変更されることがあるため、手続きの前に、国税庁の公式情報をご確認ください。




