「起業して5年目、事業が順調に、軌道に乗り、毎年、数百万円の、利益が出るようになった」という経営者の方から、「事業承継は、まだ、先の話だと思うが、今から、何を、考えておくべきか」というご相談を、受けることがあります。
結論からいうと、事業が順調で、利益が出ている今こそ、将来の承継を、見据えた、土台づくりを始める、よい時期です。会社の価値が、高まるほど、株式の評価額も、上がり、のちの承継の税金や、資金の負担も、大きくなる傾向があるためです。また、事業承継の準備には、5年から10年程度かかるとされています(中小企業庁の資料)。
この記事では、創業から、数年が経ち、順調に成長している会社が、将来の事業承継に向けて、今から、できること、考えておくべきことを、解説します。株式の持ち方、会社の仕組みづくり、財務の整備、税金の考え方、承継の選択肢を、順に整理します。
なお、制度や数字は、改定されることがあります。この記事は、2026年10月時点の公表資料をもとにしています。実際の判断では、最新の情報を確認し、専門家にご相談ください。
Contents
なぜ、順調なときに、承継を考えるのか

理由1:会社の価値が、高いうちに、選択肢を、広げられる
業績が良い時期は、会社の評価が高く、将来、M&Aで、売却する場合にも、親族や、従業員に、承継する場合にも、選択肢が、広がります。業績が下がってから、慌てて、承継を考えても、希望の条件では、進めにくくなります。
理由2:準備に、時間がかかる
中小企業庁の資料では、後継者の育成の期間も含めると、事業承継の準備には、5年から10年程度かかるとされています。創業から5年目でも、早すぎるということは、ありません。
理由3:株式の評価額が、上がる前に、手を打てる
会社の利益が、積み上がると、株式の評価額が、上がります。評価額が、低いうちに、株式の一部を、後継者に、承継しておくと、贈与税などの負担が、小さくなる場合があります。
理由4:経営者の健康や、万一への備えになる
経営者が、病気や、事故で、突然、経営ができなくなった場合に、備えておくことは、会社と従業員、家族を、守ることにも、つながります。
今から、考えておきたいこと

1. 会社の「目標」と、承継の「出口」
会社を、どこまで、成長させたいのか、将来、誰に、どのような形で、引き継ぎたいのか(親族、従業員、社外)を、考えておきます。出口の、イメージが、あると、日々の経営の方針も、定まります。
2. 株式の、持ち方
創業のときから、株式を、誰が、どのくらい、持っているかを、確認します。複数の人が、株式を持っている場合は、将来の、承継や、相続の際に、トラブルにならないか、点検します。後継者に、株式を、集中させることが、経営の安定のために、望ましい場合が、多くあります。
3. 経営者への、依存の度合い
会社の、営業、技術、人脈、意思決定が、経営者に、集中していないかを、確認します。経営者が、いなくても、事業が回る仕組みを、少しずつ、作っておくことが、承継の準備にも、会社の価値を高めることにも、つながります。
4. 財務の整備
決算書を、整え、会社と、経営者個人の、お金の区別を、明確にします。役員への貸付金や、事業と関係のない資産、簿外の債務が、ないかを、確認し、整理しておきます。
5. 経営者保証や、借入の状況
会社の借入に、経営者の個人保証が、付いていないか、確認します。保証がある場合は、将来の承継の際に、後継者が、引き継ぐのかが、課題になります。金融機関と、早めに、話し合っておくことが、大切です。
利益が、出ているときの、税金と、承継の考え方

会社の利益が、株価に、反映される
非上場株式の、税務上の評価(国税庁の財産評価基本通達に基づく)では、会社の利益や、純資産が、評価額に、影響します。利益が、積み上がると、評価額が、上がる傾向があります。贈与や相続の際の税金は、評価額に、応じて、決まります。
役員報酬と、会社の利益のバランス
役員報酬は、会社にとっては、経費(定期同額給与などの、要件を満たす場合)で、経営者個人にとっては、給与所得です。国税庁のタックスアンサーによると、法人が役員に支給する給与のうち、定期同額給与などに、該当しないものは、損金にならず、また、不相当に高額な部分も、損金にならないとされています。会社の利益と、経営者個人の収入の、バランスを、考えて、役員報酬を設計することが、将来の株価や、税金にも、関わってきます。
法人税の、軽減税率
国税庁によると、資本金1億円以下の普通法人(一定の法人を除く)の、法人税率は、所得が年800万円以下の部分が15%、年800万円を超える部分が23.2%です。利益が、順調に増えている会社では、この税率の違いも、考慮に入れて、税金の計画を、立てます。
承継の、選択肢を、知っておく

将来の承継の方法には、次のような選択肢が、あります。
- 親族内承継:子どもや、親族に、引き継ぐ
- 役員・従業員承継:社内の、役員や、従業員に、引き継ぐ
- 社外への引継ぎ(M&A):外部の、会社や、個人に、引き継ぐ
現時点では、どれを選ぶか、決められなくても、構いません。それぞれの特徴を、知っておくことで、いざというときに、慌てずに、判断できます。詳しくは、別の記事「事業承継は親族と従業員のどちら?メリット・課題を比較」で、解説しています。
使える制度を、知っておく

将来の承継を、見据えて、知っておきたい、制度を、紹介します。
- 法人版事業承継税制:非上場株式の、贈与税や、相続税の、納税を、猶予する制度。国税庁の資料によると、特例措置は、特例承継計画の提出が、令和9年9月30日まで、相続や贈与の実施が、令和9年12月31日までと、期限がある
- 相続時精算課税:60歳以上の父母や祖父母から、18歳以上の子や孫への贈与で、選択できる制度。特別控除2,500万円、基礎控除年110万円(国税庁のタックスアンサーによる)
- 事業承継・M&A補助金:事業承継や、M&Aに伴う、設備投資や、専門家の活用費用などを、補助する制度(中小企業庁の資料による)
制度の内容や、期限は、変わることがあります。早めに、情報を集め、税理士などに、相談しておくことが、大切です。
今から、始められる、具体的な行動

創業から数年の、順調な会社が、今から、始められる、具体的な行動を、整理します。
ステップ1:会社の現状を、見える化する
決算書、借入の状況、株主の構成、経営者個人の、資産と負債などを、一覧にして、整理します。
ステップ2:将来の、イメージを、書き出す
いつ頃、誰に、どのような形で、経営を、引き継ぎたいかを、思いつく範囲で、書き出します。家族とも、話し合います。
ステップ3:後継者の候補を、意識して、育てる
従業員や、親族の中で、将来の後継者になり得る人を、意識して、重要な業務を、任せたり、経営の考え方を、共有したりします。
ステップ4:専門家と、定期的に、相談する
顧問の税理士や、金融機関の担当者に、将来の承継について、定期的に、相談します。株式の評価の試算も、依頼できます。
ステップ5:計画を、書面にまとめる
承継の方針や、スケジュールを、書面にまとめます。計画は、状況の変化に応じて、見直していきます。
想定ケース:創業5年目の会社の、準備の例

想定のケースで、準備の流れを、イメージします。実在の会社を、示すものでは、ありません。
状況
創業5年目の会社で、経営者は45歳。従業員は10名で、毎年、数百万円の、利益が出ています。子どもは小学生で、将来、継ぐかどうかは、決まっていません。株式は、経営者が、100%、保有しています。会社の借入には、経営者の個人保証が、付いています。
今から、できる準備の例
- 決算書を、整え、役員貸付金や、事業と関係のない資産を、整理する
- 営業や、技術を、特定の人に、頼りすぎない体制に、少しずつ、変えていく
- 幹部候補の従業員に、重要な業務を、任せる
- 金融機関と、経営者保証に頼らない、融資の可能性を、相談する
- 顧問の税理士と、株式の評価の試算や、将来の承継の選択肢を、確認する
- 家族と、会社の将来について、話し合いを、始める
このように、承継の時期が、まだ、先であっても、今から、できることは、多くあります。早く始めるほど、選択肢が、広がり、会社の価値も、高められます。
経営者に、万一のことがあった場合の、備え

事業承継は、計画的に、進めるものですが、経営者に、病気や、事故などの、万一のことが、あった場合にも、備えておく必要があります。
- 経営者が、不在になった場合の、代行者(役員や、幹部社員)と、権限を、決めておく
- 重要な契約、パスワード、口座などの情報を、整理し、信頼できる人と、共有しておく
- 遺言を作成し、株式や、会社に関する、意思を、残しておく
- 相続が発生した場合の、納税の資金や、株式の分散への、対応を、検討する
- 経営者保険(生命保険など)の活用を、専門家と、相談する
万一への備えは、家族や、従業員、取引先を、守ることにも、つながります。
創業者の、承継の特徴

創業者が、経営している会社は、創業者の、個人の能力や、人脈に、支えられている場合が、多くあります。そのため、承継の際には、特に、次の点が、課題になりやすい傾向があります。
- 創業者の、考え方や、ノウハウが、文書化されておらず、後継者に、伝わりにくい
- 創業者が、手放すことに、心理的な抵抗を、感じやすい
- 従業員や、取引先が、創業者個人を、信頼している
- 会社と、創業者個人の、お金の区別が、あいまいになりやすい
創業者の、考え方や、ノウハウを、少しずつ、文書にまとめ、従業員や、後継者の候補と、共有しておくことが、承継の準備になります。また、創業者の、思いを、理念や、経営方針として、まとめておくことも、会社の価値を、次の世代に、伝えるうえで、役立ちます。
毎年の決算で、確認したいこと

承継を、見据えて、毎年の決算のときに、次の点を、確認すると、会社の状態を、把握しやすくなります。
- 自己資本は、積み上がっているか(財務の安定性)
- 借入の状況と、経営者の個人保証の有無
- 役員への貸付金や、会社と経営者個人の、貸借関係
- 事業と関係のない資産や、使っていない資産の有無
- 株式の評価額の、おおよその見込み(税理士に、試算を依頼する)
- 後継者の候補の、育成の状況
毎年、少しずつ、確認し、課題を、改善していくことで、承継の準備が、着実に進みます。
事業が順調な会社が、承継で、気を付けたいこと

- 業績の良さに、油断しない:順調な時期にこそ、将来の準備を、進める
- 経営者個人に、利益や、資産を、頼りすぎない:会社と個人の、区別を、明確にする
- 株式の評価額の、上昇を、意識する:評価額が、上がる前に、承継の方法を、検討する
- 後継者の候補を、早めに、意識する:育成には、時間がかかる
- 家族との、話し合いを、後回しにしない:のちの争いを、防ぐ
起業して数年の会社の、事業承継に関する、よくある質問

Q1. 創業から5年で、事業承継を考えるのは、早すぎませんか?
早すぎることは、ありません。準備には、5年から10年かかるといわれており、将来の承継を、見据えて、会社の土台を、整えることは、経営の安定にも、つながります。具体的な、承継の時期は、まだ、決まっていなくても構いません。
Q2. 子どもが、まだ、小さい場合は、どうすればよいですか?
子どもが、将来、継ぐかどうかは、本人の意思と、成長次第です。無理に、決める必要はありませんが、従業員への承継や、M&Aなど、他の選択肢も、知っておくと、安心です。会社の仕組みを、整えておけば、どの選択肢にも、対応しやすくなります。
Q3. 今、できる、一番の準備は、何ですか?
会社の現状(財務、株主、借入、経営者への依存の度合い)を、整理して、見える化することです。そのうえで、税理士などの専門家に、相談して、課題を、整理することをおすすめします。
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※本記事は、2026年10月時点の情報をもとに作成しています。制度や数字は変更されることがあるため、手続きの前に、国税庁、中小企業庁などの公式情報をご確認ください。




