起業を考えるとき、「日本では、どのくらいの人が、起業しているのか」「企業は、増えているのか、減っているのか」「倒産が多いと聞くが、起業して大丈夫なのか」と、数字を調べて、不安になる方は、多くいます。
この記事では、中小企業庁の「2026年版 中小企業白書」「2025年版 中小企業白書」などの公表データをもとに、開業率・廃業率の最新の動きと、倒産件数・休廃業件数の現状を、整理します。数字の意味や、算出方法の違い、起業を考えるうえで、数字をどう受け止めればよいかも、あわせて解説します。
なお、統計の数字は、更新されることがあります。この記事は、2026年10月時点の公表情報をもとにしています。最新の数字は、中小企業白書などの、公式の資料で、ご確認ください。
Contents
開業率・廃業率とは

開業率・廃業率の意味
開業率は、新しく事業を始めた事業所の割合、廃業率は、事業をやめた事業所の割合を示す、指標です。開業率が、廃業率を上回れば、事業所の数は、増える傾向に、廃業率が、開業率を上回れば、減る傾向にあります。
算出の方法によって、数字は異なる
開業率・廃業率は、どの統計を使うかによって、数字が異なります。主な統計には、次のようなものがあります。
| 統計 | 特徴 |
|---|---|
| 厚生労働省「雇用保険事業年報」 | 雇用保険の適用事業所の、新規の成立と消滅をもとに算出する。毎年度、数字が公表される。雇用者がいない事業(従業員を雇わない個人事業主など)は、含まれない |
| 総務省「経済センサス」 | 事業所・企業の、実態を調べる統計。調査の年が限られる |
中小企業白書では、厚生労働省の雇用保険事業年報を用いて、開業率と廃業率の推移を、示しています。以前の記事などで、経済センサスなどの、別の統計をもとにした数字が、紹介されている場合は、統計の種類が、異なる点に、注意してください。
最新の開業率・廃業率

中小企業白書によると、雇用保険事業年報をもとにした、開業率と廃業率は、次のとおりです。
| 年度 | 開業率 | 廃業率 |
|---|---|---|
| 2023年度 | 3.9%(2022年度から、横ばい) | 3.9%(2022年度から、上昇) |
| 2024年度 | 3.8%(2023年度から、0.1ポイント低下) | 3.7%(2023年度から、0.2ポイント低下) |
2024年度は、開業率が3.8%、廃業率が3.7%と、ほぼ同じ水準でした。開業率と廃業率が、近い水準で、推移していることが分かります。
倒産件数の推移

中小企業白書によると、倒産件数は、2009年以降、減少傾向でしたが、2021年を底に、増加傾向に転じています。
| 年 | 倒産件数 |
|---|---|
| 2024年 | 10,006件 |
| 2025年 | 10,300件 |
従業員の規模別に見ると、10人未満の企業が、大半を占めています(2026年版白書)。要因別に見ると、2025年版の白書では、「人手不足」に関連するものに加え、「物価高」を要因とした倒産の件数も、増加していることが示されています。業種別では、2026年版の白書で、「サービス業他」が占める割合が最も高く、次いで「建設業」「製造業」の割合が高いとされています。
倒産は、負債を返せなくなるなどして、事業を続けられなくなる、ケースです。次に述べる、休廃業・解散とは、異なります。
休廃業・解散の現状

休廃業・解散は、倒産とは異なり、事業を自主的に、やめるケースを、含みます。中小企業白書は、帝国データバンクの集計をもとにして、次のように示しています。
- 休廃業・解散件数は、2016年から2022年にかけて、減少傾向にあったが、2023年に増加傾向に転じた
- 2024年は、約7万件
- 2025年は、前年から減少し、67,949件
- 休廃業・解散した企業の中で、小規模事業者の割合は、一貫して9割を超えている(2025年版白書)
なお、帝国データバンクが定義する「休廃業・解散」は、同社のデータベースなどから集計されたもので、集計の対象や定義によって、件数や傾向が、他の調査結果と、異なる場合があると、白書にも注意書きがあります。
黒字のまま、廃業する企業も多い
白書によると、「黒字」の状態で、休廃業・解散に至る企業の割合は、低下傾向にあります。2024年は、51.1%と、過半数を占めていましたが、2025年は、半数を下回っています。
また、休廃業・解散した企業の経営者の年齢を見ると、2016年以降、70代、80代以上の割合や、平均年齢が、上昇傾向にあることが、示されています。経営者の高齢化と、後継者の問題が、廃業の背景にあることが、うかがえます。
データから、読み取れること

これらのデータから、次のことが、読み取れます。
- 開業率と廃業率は、近い水準で、推移している
- 倒産件数は、2021年を底に、増加傾向にある(人手不足や、物価高が、要因として、挙げられている)
- 休廃業・解散の大半は、小規模事業者で、黒字の企業も、一定割合ある
- 経営者の高齢化が、進んでおり、事業承継が、課題となっている
倒産件数が、増加している、というニュースを見て、起業に、不安を感じる方も、いるでしょう。ただし、倒産の多くは、小規模な企業で、人手不足や、物価高などの、環境の変化への対応に、課題を抱えているケースが多いとされています。起業する側は、これらの点を、事前に、考えておくことが大切です。
起業を考える人は、数字をどう受け止めるか

1. 数字は、全体の傾向であり、自分の事業の成否ではない
開業率や、倒産件数は、すべての企業をまとめた、平均的な数字です。自分の事業の成否は、事業の内容、準備の状況、資金計画、経験などによって、大きく変わります。数字に、過度に不安を感じるよりも、リスクを、具体的に洗い出し、備えることが、大切です。
2. 倒産の要因から、備えを学ぶ
倒産の要因として、人手不足や、物価高が挙げられています。起業の計画では、人材の確保、仕入れ価格や、人件費の上昇への備え、資金繰りの余裕を、考えておくことが重要です。
3. 資金繰りの管理を徹底する
黒字でも、資金繰りが、悪化すると、事業を続けられなくなる場合があります。毎月のお金の出入りを、把握し、運転資金に、余裕を持たせましょう。起業に必要な資金の目安は、別の記事「株式会社で起業するのに必要な資金は?内訳と目安を解説」で、解説しています。
4. 相談できる専門家を持つ
税理士などの専門家に、早めに相談することで、資金繰りや、税金、資金調達の面で、リスクを、減らせる場合があります。
開業者の姿(公庫の調査から)

日本政策金融公庫総合研究所の「2025年度新規開業実態調査」(2025年12月5日公表)から、開業者の姿を見てみます。
| 項目 | 結果 |
|---|---|
| 開業時の平均年齢 | 43.9歳(調査開始以来、最も高い) |
| 女性の割合 | 25.7%(調査開始以来の最高水準を、4年連続で更新) |
| 開業動機(上位) | 「自由に仕事がしたかった」59.7%、「収入を増やしたかった」44.9%、「仕事の経験・知識や資格を生かしたかった」41.1% |
| 開業費用 | 平均値975万円、中央値600万円。250万円未満が20.1%、250万円以上500万円未満が21.7% |
| 資金調達額(平均) | 1,219万円(金融機関等からの借り入れ827万円、自己資金279万円) |
この調査は、日本政策金融公庫国民生活事業が、融資した企業のうち、開業後1年以内の企業を対象にしたものです。すべての開業者を、代表するものではありませんが、開業者の実態を知る、参考になります。
経営者の高齢化と、事業承継

中小企業白書によると、休廃業・解散した企業の経営者の年齢は、70代、80代以上の割合が、上昇傾向にあります。後継者が見つからず、黒字でも、廃業を選ぶ企業が、あることが、うかがえます。
このような状況は、事業を引き継ぐ形での起業(事業承継、M&A)という、選択肢を、広げます。ゼロから事業を始めるのではなく、すでにある事業を、引き継ぐことで、顧客や、設備、従業員を、引き継げる場合があります。引き継ぎにも、リスクがあるため、専門家と、よく確認して、進めましょう。
数字を調べるときの、注意点

統計の数字を、調べて、活用するときは、次の点に注意しましょう。
- 統計の名称、調査の年、算出の方法(定義)を、確認する
- 異なる統計の数字を、そのまま、比べない(開業率は、統計によって、値が異なる)
- 古い記事の数字は、最新の数字と、異なる場合がある
- 公的な資料(白書、事業年報など)の、一次情報を、確認する
数字は、起業の判断の参考になりますが、自分の事業の計画を、立てる際には、数字だけに、頼らず、現場の情報や、専門家の意見も、参考にしてください。
起業前に、洗い出しておきたいリスク

倒産や、廃業の要因を、参考に、起業前に、次のようなリスクを、洗い出しておきましょう。
| リスク | 備え |
|---|---|
| 売上が、計画より伸びない | 売上の見込みを、保守的に見積もり、運転資金に、余裕を持たせる |
| 人手不足 | 採用の計画を、立て、賃金や、働き方の条件を、検討する。外部の専門家や、外注の活用も、考える |
| 仕入れ価格や、経費の上昇 | 価格の見直しの方法や、取引先との条件を、あらかじめ、検討する |
| 資金繰りの悪化 | 資金繰り表を作成し、入金と支払いの時期を、管理する |
| 経営者本人の、病気や、けが | 事業を代わりに回せる体制や、保険などの備えを、検討する |
リスクを、あらかじめ、洗い出しておくことで、事業計画書の説得力も、高まります。融資の申し込みでも、リスクへの備えが、確認されることがあります。
起業前の、備えのチェックリスト

- 事業計画書を作成し、売上と費用の見込みを、数字で整理した
- 開業費と、運転資金(数か月分)を、試算した
- 自己資金と、融資などの、調達の方法を、検討した
- 主なリスクと、その備えを、書き出した
- 税理士などの、専門家に、相談できる体制を、整えた
起業の準備に、役立つ公的な情報

起業の準備では、次のような、公的な情報が、役立ちます。
| 情報 | 内容 |
|---|---|
| 中小企業白書(中小企業庁) | 開業率・廃業率、倒産や休廃業の動向、中小企業の実態など |
| 新規開業実態調査(日本政策金融公庫総合研究所) | 開業者の年齢、開業費用、資金調達、開業動機など |
| 雇用保険事業年報(厚生労働省) | 開業率・廃業率の元となるデータ |
日本政策金融公庫総合研究所の「2025年度新規開業実態調査」では、開業費用の平均値は975万円、中央値は600万円で、資金調達額の平均は1,219万円でした。公的な資料を参考に、自分の事業の計画を、具体的に、検討してください。
数字の背景にある、環境の変化

開業率や、倒産件数は、景気や、物価、人手不足など、社会の環境の変化に、影響を受けます。たとえば、物価高の局面では、仕入れ価格や、人件費の上昇が、事業の負担になります。起業の計画では、現在の環境だけでなく、数年先の変化も、想定して、柔軟に対応できる体制を、整えておくことが、大切です。
よくある質問

Q1. 日本の開業率は、低いのですか?
2024年度の開業率は、雇用保険事業年報をもとにすると、3.8%でした。他の国との比較は、統計の定義によって、異なります。数字だけで、判断せず、算出の方法を、確認してください。
Q2. 開業した会社は、どのくらい続きますか?
事業が続く割合は、業種や、規模、時期によって異なり、一概にはいえません。公的な調査として、日本政策金融公庫総合研究所の「新規開業パネル調査」などがあります。詳しくは、公庫のホームページで、確認してください。
Q3. 倒産が増えているのに、起業して、大丈夫ですか?
倒産件数は、増加傾向にありますが、全体の中の、一部のケースです。倒産の要因(人手不足、物価高など)を、理解し、資金計画や、人材の確保などに、備えることで、リスクを、減らせます。
Q4. 廃業と倒産は、どう違いますか?
倒産は、負債を返せなくなるなどして、事業を続けられなくなるケースです。廃業(休廃業・解散)は、事業を自主的に、やめる場合を、含みます。黒字のまま、廃業する企業も、あります。
起業のご相談はストラーダグループへ

ストラーダグループでは、起業を考える方の、会社設立や、資金計画、融資のご相談を、税理士などの専門家が、お受けしています。事業計画の作成や、資金繰りの検討、設立後の税務まで、状況に合わせて、サポートします。初回のご相談は無料です。お気軽にご相談ください。
※本記事は、2026年10月時点の情報をもとに作成しています。統計の数字は更新されることがあるため、中小企業庁などの公式情報をご確認ください。




