業務委託で長く仕事をお願いしてきたフリーランスの方を、契約社員として迎え入れることを検討する場面があります。本人にとっても、給与収入の見通しが立つことや、加入要件を満たせば被用者保険の対象になることなどが利点として考えられますが、契約期間や具体的な労働条件を確認して判断する必要があります。
一方で、フリーランスと契約社員とでは、適用される法律も、会社が負う義務も大きく異なります。転換では契約書の名称だけでなく、実際の働き方に応じて法律上の扱いを確認する必要があります。本記事では、社会保険労務士法人の視点から、転換を検討する企業が押さえておきたい法律上のポイントを、労働者性、フリーランス新法、社会保険の三つの観点で整理します。
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フリーランスと契約社員は法律上どう違うのか

フリーランスは一般に、事業者として業務委託を受ける働き方を指します。ただし、その呼称だけで法律上の扱いは決まりません。契約社員にも統一的な法律上の定義はないため、本記事では期間の定めのある労働契約で雇用される労働者を指します。労働基準法等や社会保険・労働保険の適用は、働き方の実態と各制度の要件に応じて判断します。
業務委託契約と雇用契約の基本的な違い
業務委託契約では、フリーランスは仕事の完成や業務の遂行を引き受け、その対価として報酬を受け取ります。仕事の進め方は原則として本人の裁量に委ねられ、労働時間の規制や残業代、年次有給休暇といった労働基準法上のルールは、一般には適用されません。
これに対して、本記事でいう契約社員は、期間の定めのある労働契約を結んだ労働者です。会社の指揮命令のもとで働き、労働時間の管理、法定の割増賃金の支払、要件を満たす場合の年次有給休暇の付与など、労働基準法等のルールが適用されます。有期雇用であることだけを理由にこれらの保護がなくなることはありません。正社員との待遇差についても、パートタイム・有期雇用労働法による不合理な待遇差の禁止などを確認します。
会社側の義務と負担の違い
転換後に会社が確認すべき主な義務は、次のとおりです。転換前から実態として労働者であった場合には、以前の期間についても義務が生じていた可能性があります。
- 労働条件通知書等による労働条件の明示
- 労働時間の把握、原則として法定時間外・法定休日労働を行わせる前の36協定の締結・届出、法定時間外・法定休日・深夜労働に対する割増賃金の支払
- 要件を満たす場合の年次有給休暇の付与と管理
- 健康保険・厚生年金保険の資格取得手続と保険料の負担(加入要件を満たす場合)
- 雇用保険の加入要件の確認・手続と、労災保険の適用の確認・必要な手続
- 就業規則の適用と、契約更新・雇止めに関するルールの整理
業務委託の期間にも、適用される法令に応じて取引条件の明示や報酬の支払等の義務があります。雇用にもとづく業務には、労働関係法令に基づく管理と手続が必要となります。転換を決める前に、社内の勤怠管理や給与計算の体制に組み込めるかを確認しておくことが大切です。
「労働者性」はどのように判断されるのか

労働者に当たるかどうかは、契約書の名称ではなく、実際の働き方の実態にもとづいて判断されるのが一般的な考え方です。業務委託契約という形式であっても、実態が雇用と変わらなければ、労働基準法上の労働者と判断される可能性があります。
現行の判断の考え方と見直しの動き
労働基準法上の労働者性は、同法第9条を踏まえ、仕事の依頼等を断る自由、業務遂行上の指揮監督、時間・場所の拘束、報酬が労務の対価であるかなどを総合して判断します。これらの判断要素は、厚生労働省が公表している「労働基準法研究会報告(労働基準法の『労働者』の判断基準について)」(昭和60年12月19日)で整理されており、現在も判断の基本的な資料として参照されています。
なお、厚生労働省の「労働基準法における『労働者』に関する研究会」では判断基準の在り方等が検討され、「これまでの議論の整理」などの資料が公表されています。現時点では、現行法と上記の判断基準をもとに、個別の働き方の実態を確認する必要があります。
一般に挙げられる主な判断要素
以下は、厚生労働省の資料等を踏まえた主な判断要素の整理です。労働基準法第9条の定義を具体的に判断するための視点であり、以下の項目がそのまま条文に列挙されているわけではありません。
- 指揮監督の有無:仕事の依頼を断る自由があるか、業務の進め方について具体的な指示を受けているか
- 勤務時間・場所の拘束:始業・終業の時刻や勤務場所が会社に決められているか
- 報酬の性格:時間給や月給のように働いた時間に応じた支払か、成果物への対価としての支払か
- 事業者性:業務に使う機械や器具を自ら負担しているか、他社と自由に取引しているか
これらの要素のほか、本人に代わって他の人が業務を行えるか、専属性の程度なども踏まえ、総合的に判断します。月額固定報酬や会社での作業といった一つの事情だけで、結論が決まるものではありません。
転換前の働き方を振り返る意味
契約社員への転換を検討する際には、これまでの業務への関わり方を確認します。毎日決まった時間に出社し、社員と同じように上司から具体的な指示を受けていた場合などは、仕事を断る自由や報酬の性格等も併せて、実態として労働者に当たっていなかったかを検討する必要があります。
公正取引委員会等の「フリーランス・事業者間取引適正化等法Q&A」でも、形式的に業務委託契約であっても、実質的に労働基準法上の労働者と判断される場合には、労働基準法等が適用され、フリーランス新法は適用されないと説明されています。なお、労働組合法上の労働者に当たるかどうかは労働基準法とは別の基準で判断されるため、両者を区別して確認します。転換をきっかけに過去の働き方を整理しておくことは、後のトラブルを防ぐうえでも意味があります。過去の期間について労働者性が問題となる場合、労働時間や社会保険の扱いなどに影響が及ぶこともあるため、気になる点があれば早めに専門家へご相談ください。
転換前の業務委託期間にフリーランス新法の義務を守れていたか

2024年11月1日以降の業務委託については、相手方が法律上の「特定受託事業者」に当たるなど、フリーランス新法の適用要件を満たす場合に同法の義務が生じます。対象は、従業員を使用しない個人や、代表者が1人で、その他の役員も従業員もいない法人です。公正取引委員会等の解釈ガイドラインでは、「従業員を使用」とは、週の所定労働時間が20時間以上で、継続して31日以上の雇用が見込まれる労働者を雇用することをいいます。同じ基準を満たす派遣労働者の受入れも含まれますが、事業に同居親族のみを使用する場合は含まれません。呼称だけで対象と決めず、転換前の取引と転換までの対応を確認します。
フリーランス新法の概要
フリーランス新法の正式名称は「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」(令和5年法律第25号)です。2023年5月12日に公布され、2024年11月1日に施行されました。
この法律は、フリーランスが安心して働ける環境を整えることを目的としており、取引の適正化に関する部分は公正取引委員会と中小企業庁が、就業環境の整備に関する部分は厚生労働省が、それぞれ執行を担っています。
会社に求められる主な義務
法律の適用対象となる取引では、発注者の役員・従業員の状況や委託期間等に応じて、次のような義務があります。
- 業務委託をした際、直ちに書面または電子メール等で、業務内容・報酬額・支払期日などを明示すること(未定事項には法定の例外があります)
- 報酬の支払期日を、給付を受領した日(役務の提供委託では役務の提供を受けた日)から原則60日以内のできる限り短い期間内に定め、その期日までに支払うこと(再委託には法定の特例があります)
- 募集情報について虚偽・誤解を生じさせる表示をせず、正確かつ最新の内容に保つこと(第12条)
- ハラスメントの相談体制等を整備し、相談等を理由とする不利益な取扱いをしないこと(第14条)
取引条件の明示は、従業員を使用しない発注者にも義務付けられます。報酬支払期日、募集情報、ハラスメント対策等は、従業員を使用する個人や、役員が2人以上または従業員を使用する法人である「特定業務委託事業者」が対象です。さらに、1か月以上の委託では受領拒否・報酬減額等の禁止、6か月以上の委託では申出に応じた妊娠・出産・育児・介護と業務の両立への配慮や中途解除等の予告が義務となります。6か月未満でも育児介護等への配慮は努力義務です。期間には更新による継続が含まれる場合があります。資本金や会社の大きさだけで適用を判断せず、発注者の区分と委託期間等を確認する必要があります。
転換の打診と取引条件の変更に関する注意
契約社員への転換を打診する際には、業務委託契約の終了と雇用契約の開始をどの時点で切り替えるかを明確にすることが重要です。切替日が曖昧なまま仕事を続けると、どの期間にどの法律が適用されるのかが分かりにくくなります。特定業務委託事業者が6か月以上の継続的な業務委託を解除し、または更新しない場合は、法定の例外を除き、少なくとも30日前に書面・電子メール等で予告する必要があります。予告日から契約終了日までに本人から理由の開示を求められた場合は、法定の例外を除き、遅滞なく書面・電子メール等で開示します。国の解釈ガイドラインでは、本人の自由な意思に基づく合意解除は、同法第16条の「契約の解除」に当たらず、この予告義務の対象ではないとされています。ただし、自由な意思による合意かどうかは慎重に確認し、既存契約の終了条件や最終報酬等の精算も整理します。
また、転換を断られた場合でも、既に委託した業務の報酬を本人の責めに帰すべき理由なく減額する行為は、適用要件を満たせばフリーランス新法第5条の禁止行為に当たります。取引の終了や将来の条件変更についても、契約と法令に沿って検討します。雇用への転換は、労働条件を説明したうえで本人との合意によって進めます。
契約社員になると社会保険はどう変わるのか

フリーランスの医療保険には、国民健康保険のほか、退職前の健康保険の任意継続や家族の健康保険の被扶養者となる場合もあります。国民年金の加入区分も年齢や扶養状況等で異なります。契約社員として適用事業所に使用され、年齢や労働時間等の加入要件を満たすと、会社の健康保険・厚生年金保険の対象となり、会社は資格取得届を提出して保険料を負担します。健康保険は原則75歳未満、厚生年金保険は原則70歳未満が対象であり、両制度の要件は同一ではありません。
資格取得届の提出と国民健康保険からの切替
健康保険・厚生年金保険の加入要件を満たす場合、会社は原則として資格取得の事実発生から5日以内に資格取得届を提出します。同じ事業所の通常の労働者と比べて、週の所定労働時間と月の所定労働日数の双方が4分の3以上である方が原則対象です。これに満たなくても、特定適用事業所や任意特定適用事業所等では、週20時間以上で学生ではないなどの要件を満たす短時間労働者が対象です。特定適用事業所の企業規模の判定では、1年のうち6か月以上、厚生年金保険の被保険者(短時間労働者を除き、共済組合員を含みます)の総数が50人を超えることが見込まれるかを確認します。法人の場合は、同一の法人番号を有する全適用事業所の人数を合算します。2か月以内の契約でも、更新等でその期間を超えて使用される見込みがあれば当初から対象となります。短時間労働者の月額8.8万円以上という賃金要件は2026年10月1日に撤廃されました。ただし、最低賃金法第7条の減額特例許可を受け、所定内賃金が月額8.8万円未満である特定減額特例対象者は原則として加入対象外ですが、申出により加入できます。
本人がそれまで国民健康保険に加入していた場合は、会社の健康保険に加入したときから14日以内に国民健康保険の脱退を届け出ます。任意継続や被扶養者であった場合は、従前の加入先で必要な資格喪失等の手続を確認します。厚生年金保険に加入すると通常は国民年金の第2号被保険者となりますが、65歳以上で老齢年金の受給権がある方などには例外があります。届出が遅れると資格情報の反映や保険料の精算が遅れることがあるため、実際の資格取得・喪失日と必要な手続を本人に案内します。
家族の扶養と第3号被保険者の扱い
国民健康保険には被扶養者の制度がなく、国民健康保険に加入している家族も保険料算定の対象です。会社の健康保険では、収入、生計維持関係、国内居住等の要件を満たす家族について被扶養者の届出を行います。ただし、家族自身が勤務先の健康保険の加入要件を満たす場合は、原則としてその勤務先で被保険者となります。
また、本人が国民年金の第2号被保険者となる場合、その方に扶養される原則国内居住の20歳以上60歳未満の配偶者で、収入等の要件を満たす方は、届出により第3号被保険者となります。逆に、本人が従来配偶者の扶養に入っていた場合は、自身の健康保険・厚生年金保険の加入等に伴い、被扶養者や第3号被保険者でなくなる手続も確認します。健康保険の扶養と国民年金の第3号は別の制度であり、家族の年齢や加入状況に応じてそれぞれ確認します。
この扶養の違いは、本人と家族の保険料負担に大きく影響します。フリーランスとして国民年金の第1号被保険者である方の配偶者は、20歳以上60歳未満で会社員等でなければ、通常は配偶者自身も第1号被保険者として国民年金保険料を納付します。本人が会社員として厚生年金保険に加入し、配偶者が要件を満たして第3号被保険者(国民年金法第7条第1項第3号)となった場合は、配偶者が国民年金保険料を個別に納付する必要はありません。また、国民健康保険では加入する家族の人数も保険料の算定に影響しますが、会社の健康保険で家族が被扶養者として認定されれば、原則として家族の人数によって本人の健康保険料が増えることはありません。
厚生年金保険の保険料と標準報酬月額の上限
毎月の厚生年金保険料は、報酬をもとに決まる標準報酬月額に保険料率18.3%を掛けて計算し、原則として会社と本人が折半します。2026年10月に始まった保険料調整制度では、対象となる事業所が申し出た場合、標準報酬月額が12万6,000円以下であるなどの要件を満たす短時間労働者について、健康保険・厚生年金保険の本人負担を通算3年間軽減できます。試算時には対象事業所・被保険者の要件と申出期限を確認します。会社は軽減分を一時的に追加負担しますが、後に調整され、最終的な会社の納付額は増えず、本人の将来の年金額にも影響しません。
標準報酬月額には上限があり、現行の上限は65万円(第32等級)です。毎月の厚生年金保険料はこの上限までの標準報酬月額で計算しますが、賞与には標準賞与額に基づく保険料が別途かかります。健康保険の上限も厚生年金とは異なります。なお、2025年6月に成立した年金制度改正法により、この上限は2027年9月に68万円、2028年9月に71万円、2029年9月に75万円へと段階的に引き上げられる予定です。報酬が高い方を契約社員として迎える場合は、将来の保険料負担の変化も見込んでおく必要があります。
手取りと保険料負担はどのように比べればよいか

フリーランス時代の報酬と契約社員としての給与は、額面だけでは単純に比較できません。社会保険料の負担者や計算方法が異なるため、会社負担分を含めた総額と、本人の手取りの両面から見ることが大切です。
フリーランス時の手取りの見方
国民健康保険と国民年金第1号に加入しているフリーランスの場合、原則として本人側で保険料を負担します。市区町村の国民健康保険料は前年の所得や加入人数等で異なり、国民年金保険料は定額が基本ですが、軽減・免除等の対象となる場合もあります。任意継続や被扶養者の場合は負担が異なります。手取りを比較する際は、仕事に必要な経費、所得税・住民税等も考慮します。給与の支払開始後は会社が給与に対する源泉徴収を行い、対象者には年末調整を行います。転換前の事業所得等は年末調整の対象に含まれないため、本人が給与所得等と併せて確定申告の要否を確認します。事業自体を廃止する場合は廃業に伴う届出等も確認し、消費税の課税事業者は廃止した年の課税期間に係る消費税申告も確認します。
契約社員時の保険料負担の試算例
ここでは、毎月の厚生年金保険料だけに絞り、原則どおり労使折半し、保険料調整制度等を適用しない仮定で試算します。以下は説明のために置いた架空の条件です。実際の控除額や会社の総負担には、健康保険料等が別途加わります。
【試算例1】仮定:月給30万円、標準報酬月額30万円、厚生年金保険料率18.3%、賞与なし。
保険料の総額は、30万円×18.3%で月額5万4,900円です。これを折半するため、会社負担と本人負担はそれぞれ月額2万7,450円となります。
【試算例2】仮定:月給80万円、現行の上限である標準報酬月額65万円が適用、厚生年金保険料率18.3%、賞与なし。
保険料の総額は、65万円×18.3%で月額11万8,950円となり、会社負担と本人負担はそれぞれ月額5万9,475円です。月給80万円のうち上限の65万円を超える部分は、この毎月の厚生年金保険料の計算対象にはなりません。仮に同じ条件で上限が68万円になった場合は、総額が月額12万4,440円、それぞれの負担が月額6万2,220円となる計算です。
このほか、健康保険料と、原則40歳以上65歳未満の被保険者については介護保険料も労使で負担します。健康保険料等は原則折半ですが、健康保険組合の規約により会社の負担割合が大きい場合があります。2026年4月分からは子ども・子育て支援金も医療保険料と併せて徴収され、被用者保険では原則労使で負担します。これとは別に、会社が全額負担する子ども・子育て拠出金や労災保険料、会社負担分の雇用保険料も確認します。転換に伴う人件費は、給与だけでなく各制度の会社負担分を含めて見積もる必要があります。
なお、本人の手取りを比べる際は、これらの試算に加えて家族分の負担の変化も含めます。フリーランス時代に配偶者の国民年金保険料や、国民健康保険の家族分の保険料を負担していた場合、転換後に配偶者が第3号被保険者や健康保険の被扶養者となれば、それらの負担がなくなる分、世帯としての保険料負担が軽くなることがあります。
本人への説明で意識したいこと
本人への説明では、給与から控除される社会保険料だけでなく、従前に本人側で負担していた保険料や税金等も含めて比較します。厚生年金保険料は原則として会社と本人が折半すること、加入期間等に応じて老齢厚生年金が上乗せされること、要件を満たせば、業務外の病気・けがによる休業時の傷病手当金や、出産による休業時の出産手当金の対象となること、配偶者が第3号被保険者となる場合は配偶者自身の国民年金保険料の納付が不要になること、家族が被扶養者となる場合は原則として家族の人数で健康保険料が増えないことなども説明します。保障の違いは転換前の加入状況等によるため、全員に新たな保障が生じるとは限りません。
どちらが有利かは、本人の家族構成や収入、将来の働き方によって異なります。有期契約では本人からの契約期間途中の退職にも制約があり、会社との合意や契約上の定め、やむを得ない事由等を確認します。ただし、1年を超える契約では、一定の事業の完了に必要な期間を定める契約や、労働基準法第14条第1項各号に該当する専門的知識等を有する方・60歳以上の方の契約を除き、その契約の開始から1年経過後は本人の申出により退職できる特例があります。会社としては、個別の損得を断定するのではなく、制度の違いを客観的に説明し、必要に応じて本人が専門家に相談できるよう案内する姿勢が望ましいでしょう。
雇用保険・労災保険はどうなるのか

雇用保険は、契約社員としての働き方が加入要件を満たす場合に適用されます。労災保険はこれとは別に、原則として労働者を使用する事業に適用され、短時間の契約社員も対象です。失業等や業務上の災害に対する給付は、それぞれの支給要件に応じて判断されます。
雇用保険の加入
2026年10月29日時点では、雇用保険は原則として週の所定労働時間が20時間以上で、31日以上引き続き雇用される見込みがある労働者が対象です。昼間学生などの適用除外にも留意します。会社は被保険者となった月の翌月10日までに資格取得届を提出します。なお、週の所定労働時間の要件は、2028年10月1日から10時間以上に引き下げられます。契約期間や週の所定労働時間を決める段階で、現行の加入要件と手続期限を確認することが大切です。
労災保険の適用
労災保険は、原則として労働者を一人でも雇用する事業に適用され、雇用形態や労働時間にかかわらず契約社員も対象です。転換後の業務災害や通勤災害については、要件を満たす場合に給付の対象となり、保険料は会社が全額負担します。実態として労働者でなかった業務委託期間については、特別加入の有無と対象業務を確認します。2024年11月からは、企業等から業務委託を受け、従業員を使用しないなどの要件を満たすフリーランスについて、業種・職種を問わず特別加入の対象が広がっています。「特定フリーランス事業」の手続は承認を受けた特別加入団体を通じて行いますが、既存の特別加入区分に該当する業務はその区分での加入が必要です。
転換をスムーズに進めるための実務の流れ

転換を円滑に進めるには、労働条件の決定、本人への説明と合意、各種手続の順に、計画的に進めることが大切です。業務委託の終了日と雇用の開始日をはっきり区切ることが、全体の土台になります。
労働条件の設計と書面での明示
契約期間、更新の有無・判断基準、更新上限の有無と内容、就業場所・業務内容とそれぞれの変更範囲、勤務時間、賃金、休日、退職・解雇に関する事項等を決め、法定の明示事項を労働条件通知書等で示します。本人が希望し、出力して書面にできる場合は電子メール等による明示も可能です。有期雇用労働者については、昇給・退職手当・賞与の有無、相談窓口に加え、2026年10月からは待遇の相違の内容・理由等について説明を求めることができる旨の明示も必要です。契約締結後に更新上限を新設・短縮する場合は、あらかじめその理由を説明します。契約期間は原則3年以内で、一定の場合には例外があります。有期契約の途中解雇はやむを得ない事由が必要であり、満了時の雇止めにも更新実績・更新期待等に応じた制限があり、期間満了だけで常に終了できるとは限りません。3回以上更新した場合や1年を超えて継続勤務した場合の雇止めは、あらかじめ不更新と明示した契約を除き、満了日の少なくとも30日前までの予告も必要です。同一の使用者との有期契約が反復更新され、原則として通算5年を超えると本人の申込みによる無期転換の対象となり、申込権が発生する更新時には申込機会と転換後の労働条件の明示も必要です。無期転換によって当然に正社員となったり、正社員と同じ待遇になったりするわけではありません。契約期間以外の労働条件は、別段の定めがある部分を除き、原則として直前の有期契約と同じです。フリーランス時代の報酬を給与に置き換える際は、会社負担の保険料等も含めた総額で検討します。
転換時に確認したいチェックリスト
転換を決める前後で、次の項目を一つずつ確認します。
- 従前の業務委託の実態:仕事を断る自由、指揮監督、時間・場所の拘束、報酬の性格などから、労働者性の観点で気になる点がないか
- 契約の切替:業務委託契約の終了日と雇用契約の開始日が明確か、業務委託期間の最終報酬が取引条件どおり期日内に支払われるか
- 有期労働契約の更新条件:契約期間、更新の有無・判断基準、更新上限の有無と内容を決めたか
- 労働条件の明示:労働条件通知書等で、就業場所・業務の変更の範囲を含む法定の明示事項を示したか
- 社会保険の適用要件:健康保険・厚生年金保険、雇用保険の加入要件を満たすか
- 届出期限:健康保険・厚生年金保険の資格取得届(原則5日以内)、雇用保険の資格取得届(翌月10日まで)、本人の国民健康保険の脱退(14日以内)
- 家族の手続:健康保険の被扶養者の届出と、配偶者の第3号被保険者の届出を案内したか
- 就業規則:契約社員に適用される部分を説明したか
これらを一つずつ確認しておくことで、転換後のトラブルを抑えやすくなります。
よくあるご質問

Q1.業務委託契約のままでも、実態によっては労働者と判断されることはありますか。
一般には、契約書の名称ではなく働き方の実態によって判断されます。指揮監督の有無や勤務時間・場所の拘束などから見て雇用と変わらない場合は、労働基準法上の労働者と判断される可能性があり、その場合は労働基準法等が適用され、フリーランス新法は適用されません。
Q2.契約社員に転換したら、社会保険の手続はいつまでに行えばよいですか。
健康保険・厚生年金保険の加入要件を満たす場合、資格取得届は原則として資格取得の事実発生から5日以内に提出します。雇用保険の資格取得届は、被保険者となった月の翌月10日までです。それまで国民健康保険に加入していた本人は、会社の健康保険への加入に伴い14日以内に脱退を届け出ます。雇用開始前に加入要件、提出先、必要書類を確認して準備します。
Q3.報酬が高い方の場合、厚生年金保険料はどこまでかかりますか。
2026年10月29日時点の厚生年金保険の標準報酬月額の上限は65万円です。毎月の厚生年金保険料は、この上限までの標準報酬月額を用いて計算しますが、賞与には標準賞与額に基づく保険料が別途かかります。上限は2027年9月に68万円、2028年9月に71万円、2029年9月に75万円へ段階的に引き上げられる予定です。健康保険の上限は厚生年金とは異なります。
Q4.フリーランス新法は、契約社員に転換した後も関係がありますか。
雇用契約に基づく労務の提供には労働基準法等が適用され、その労務の提供自体はフリーランス新法の対象ではありません。ただし、転換前の業務委託が同法の適用要件を満たしていた場合、その期間の取引条件明示や最終報酬の支払等の義務が、雇用への転換だけでなくなるわけではありません。別途業務委託の取引も続ける場合は、雇用と委託の実態を区別して確認します。
Q5.フリーランスから契約社員になると、配偶者の国民年金保険料はどうなりますか。
本人が厚生年金保険に加入して国民年金の第2号被保険者となり、その方に扶養される20歳以上60歳未満の配偶者が収入等の要件を満たす場合は、届出により第3号被保険者となります。第3号被保険者は国民年金保険料を個別に納付する必要がありません。また、家族が健康保険の被扶養者として認定されれば、原則として家族の人数によって健康保険料が増えることはありません。
フリーランスから契約社員への転換のお悩みは、ストラーダグループへ

フリーランスから契約社員への転換は、労働者性の整理、フリーランス新法への対応、社会保険・労働保険の手続など、確認すべき点が多岐にわたります。ストラーダグループ 社会保険労務士法人へのご相談に際しては、労働条件の設計、労働・社会保険の手続、就業規則の整備など、ご希望の支援内容と対応範囲をご確認ください。転換をご検討の際は、どうぞお気軽にご相談ください。
※本記事は、2026年10月29日時点の情報をもとに作成しています。法令や制度の内容は改正される場合がありますので、実際の手続や判断にあたっては、最新の情報をご確認いただくか、専門家にご相談ください。
【主な参考資料】
- 労働基準法第9条、厚生労働省「労働基準法研究会報告(労働基準法の『労働者』の判断基準について)」(昭和60年12月19日)/厚生労働省「労働者とは」
- 公正取引委員会等「フリーランス・事業者間取引適正化等法Q&A」(2026年10月23日版)
- 公正取引委員会・厚生労働省「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律の考え方」(2026年10月1日改正)
- 日本年金機構「従業員を採用したとき」「特定適用事業所該当・不該当の手続き」
- 国民年金法第7条(被保険者の種別)/日本年金機構「第3号被保険者」




