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2026.07.1 社会保険

2026年度社会保険料率改定と子ども・子育て支援金の徴収開始

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2026年度は、社会保険に関わる制度改正が短期間に連続して実施されます。健康保険料率・介護保険料率の改定に加え、新たに「子ども・子育て支援金」の徴収が始まるため、給与計算の担当者にとっては確認すべき事項が例年以上に多い年度となります。

いずれの変更も法律に基づく国の制度であり、事業主が任意に選択できる性質のものではありません。制度の趣旨と実務上の対応を正確に把握することが、スムーズな給与計算業務につながります。

以下では、2026年度に実施される社会保険料率の改定内容と子ども・子育て支援金の概要、そして給与計算への影響について順を追って整理します。

2026年度に連続する社会保険関連の制度改正

同一年度内に2段階で変わる控除額

2026年度の給与計算において特に注意が必要なのは、社会保険に関わる控除額が短期間に2回変更される点です。

まず、春の保険料改定として健康保険料率と介護保険料率の変更が行われます。これに続いて、同年度内に「子ども・子育て支援金」の徴収が開始されます。給与の支払い月ベースで見ると、2か月連続で従業員の手取り額に影響が生じる可能性があります。

年度をまたいだ料率変更は例年発生しますが、新たな制度(支援金)の徴収が加わることで、変更の内容と時期をより丁寧に確認しておく必要があります。担当者は変更スケジュールをあらかじめ整理し、給与計算ソフトの設定変更や従業員への周知も含めた準備を進めておくことが望まれます。

変更が発生する時期の目安

一般的に、健康保険料率の改定は協会けんぽ(全国健康保険協会)の場合、毎年3月分保険料(4月納付・4月支払い給与から控除)から適用されます。一方で介護保険料率については毎年4月分から雇用保険料率の適用が基本的の流れです。

子ども・子育て支援金については、段階的引き上げも予定されています。具体的な適用開始月と保険料率の確認は、年金事務所からの通知や協会けんぽのホームページで行うことが推奨されます。

なお、健康保険組合に加入している事業所の場合は、各組合ごとに料率や改定時期が異なります。自社が加入している保険者(協会けんぽまたは健康保険組合)を確認のうえ、該当する案内を参照してください。

子ども・子育て支援金とは何か

制度の目的と位置づけ

子ども・子育て支援金は、少子化対策の財源を確保するために創設された新たな拠出制度です。児童手当の拡充や保育サービスの充実など、子育て関連施策を支える財源として活用されます。

この制度は、医療保険制度を通じて徴収される点が特徴のひとつです。健康保険(協会けんぽ・健康保険組合)、国民健康保険、後期高齢者医療制度のいずれかに加入しているすべての被保険者が徴収の対象となります。

国民健康保険や後期高齢者医療制度の加入者についても同様に拠出が求められるため、実質的に日本に住む医療保険加入者全体で負担を分かち合う設計となっています。

子供がいない人・高齢者も負担するのか

子ども・子育て支援金に関して、現場でしばしば挙がる疑問のひとつが「子供がいない従業員や高齢者からも徴収されるのか」という点です。

結論から申し上げると、子ども・子育て支援金は、子供の有無や年齢にかかわらず、医療保険の被保険者であれば徴収される制度です。これは国の方針として定められたものであり、被保険者個人の状況に応じて免除や減額が行われる仕組みにはなっていません。

この点については、従業員から疑問や不満の声が上がることも考えられます。制度の趣旨としては、子育て支援を社会全体で支える「全世代型の社会保障」という考え方が背景にあります。担当者が従業員からの問い合わせに対応できるよう、制度の概要を事前に把握しておくことが実務上有用です。

徴収の仕組みと事業主の関わり

子ども・子育て支援金は、健康保険料と合わせて徴収されます。給与から控除する側の事業主としては、健康保険料の変更と並行して対応が必要となります。

社会保険(健康保険・厚生年金保険)に加入している事業所においては、毎月の給与計算において該当する料率を適用した控除額を計算し、従業員負担分と事業主負担分を合算して保険者へ納付する流れは従来と変わりません。支援金が開始された後も、基本的な事務手続きの枠組みは現行の社会保険実務の延長線上にあります。

給与計算への実務的な影響と対応ポイント

総支給額の把握と控除額の再計算

社会保険料(健康保険料・厚生年金保険料・介護保険料)は、標準報酬月額に基づいて計算されます。毎年4月・5月・6月の3か月間の報酬月額の平均から標準報酬月額を決定する「定時決定(算定基礎届)」の手続きも、これらの料率変更と時期が重なります。

給与計算を正確に行うためには、基本給・各種手当を含む「総支給額」を正確に把握することが前提となります。社会保険料の算定に含まれる報酬の範囲(通勤手当・残業手当・賞与など)は法令で定められており、含める項目と含めない項目を混同しないよう注意が求められます。

また、料率変更があった月は特に、前月との控除額の差異を確認することが推奨されます。給与計算ソフトを利用している場合は、ソフトの設定(料率の入力・更新)が正しく反映されているかを確認することも重要です。

給与データの管理と社労士への情報提供

社会保険の手続きや算定基礎届を社会保険労務士に委託している事業所では、給与データの提出が実務上の重要なステップとなります。基本給・各種手当・通勤手当などを含めた月次の給与データを正確かつ適時に提供することが、スムーズな手続き遂行につながります。

標準報酬月額と保険料の関係

社会保険料は、実際の給与額に直接料率を掛けるのではなく、「標準報酬月額」という区分に当てはめたうえで計算します。標準報酬月額は一定の等級に区分されており、実際の報酬が多少増減しても、等級が変わらなければ保険料は変動しません。

ただし、昇給・降給・固定的賃金の変動があった月から3か月間の平均報酬が大きく変化した場合には、随時改定(月額変更届)の手続きが必要になることがあります。料率改定の時期と賃金改定の時期が重なるケースでは、標準報酬月額の変動にも注意が必要です。

実務上の確認ポイントと注意事項

適用される保険者と料率の確認方法

健康保険料率は、事業所が加入している保険者によって異なります。協会けんぽ(全国健康保険協会)に加入している場合は、都道府県ごとに料率が設定されており、毎年3月分保険料から新しい料率が適用されます。

最新の料率は、協会けんぽの公式ウェブサイトや年金事務所からの通知によって確認できます。「社会保険 ○○(都道府県名)」などで検索することで、自社に適用される料率を調べることが可能です。

健康保険組合に加入している場合は、各組合が独自に料率を設定していることが多いため、所属する健康保険組合への確認が必要です。国民健康保険(国保)は社会保険とは別の制度であり、従業員が国保に加入している場合は事業主による給与控除の対象にはなりません。

介護保険料率の変更への対応

介護保険料率(第2号被保険者)も毎年見直しが行われます。40歳以上65歳未満の被保険者が対象となるため、該当する従業員の有無を確認のうえ、料率変更の時期に合わせて控除額を更新する必要があります。

40歳到達月・65歳到達月には介護保険料の控除が開始・終了するタイミングとなるため、誕生日の管理も実務上の確認ポイントのひとつです。給与計算ソフトでは自動処理されるものが多いですが、設定が正しく反映されているかを定期的に確認することが望まれます。

従業員への説明と周知

保険料率の変更や新たな制度(子ども・子育て支援金)の徴収開始は、従業員の手取り額に直接影響します。説明なく控除額が変わると、従業員から問い合わせが集中する可能性があります。

変更前に給与明細への記載内容を整理し、必要に応じて社内への周知を行っておくことが、現場での混乱を未然に防ぐうえで有用です。給与明細の記載方法(健康保険料と支援金分を分けて表示するか、合算して表示するかなど)については、給与計算ソフトの仕様や社内の方針に応じて対応を検討してください。

よくある誤解と整理しておきたいポイント

「子供がいない人は免除される」という誤解

子ども・子育て支援金に関して最もよく見られる誤解は、子供がいない人や子育てに直接関係しない人は対象外になる、あるいは免除されるという理解です。しかし、前述のとおりこの制度は医療保険の加入者全員を対象とした制度であり、個人の家族構成や年齢による免除は設けられていません。

この考え方は、年金制度や雇用保険における「将来受け取るかもしれない人だけが払う」という受益者負担の発想とは異なります。少子化対策を社会全体で支えるという政策的な観点から設計された制度であり、制度趣旨を理解したうえで従業員への説明に当たることが望まれます。

「料率変更は4月支払い分から一律に適用される」という誤解

健康保険料率の適用タイミングについては、「〇月分保険料」と「〇月支払い給与からの控除」が混同されやすいポイントです。

社会保険料は、原則として翌月控除(当月分保険料を翌月の給与から控除する方法)が採用されていますが、事業所によっては当月控除を採用しているケースもあります。料率変更が「3月分から適用」であっても、翌月控除の場合は「4月支払いの給与から控除額が変わる」という流れになるため、自社の控除方法を確認のうえ対応することが求められます。

給与計算の実務では、「何月分の保険料か」「何月支払いの給与から控除するか」を区別して管理することが、計算誤りを防ぐうえでの基本的な考え方です。

「一度設定すれば変更不要」という誤解

給与計算ソフトに保険料率を入力した後、そのまま放置してしまうケースは実務上珍しくありません。しかし、保険料率は毎年度改定されるものであり、また子ども・子育て支援金のように新たな拠出が加わることもあります。

年度初めには必ず適用料率の最新情報を確認し、給与計算ソフトの設定を更新する習慣を持つことが、正確な給与計算の維持につながります。

社会保険労務士に相談するメリット

制度改正への対応を継続的にサポート

社会保険に関わる制度は毎年のように改正が行われており、担当者が最新情報を自力で追い続けることは、業務負荷の面で大きな負担となる場合があります。社会保険労務士(社労士)に業務を委託または相談することで、制度改正に関する情報提供を継続的に受けることができます。

特に、健康保険料率の変更・介護保険料率の変更・子ども・子育て支援金の追加といった複数の変更が重なる時期には、プロの視点から確認すべき事項を整理してもらえることは実務上の安心感につながります。

算定基礎届・月額変更届の適正な手続き

社会保険料の算定に直結する算定基礎届(毎年7月)や月額変更届(随時改定)は、記載内容に誤りがあると標準報酬月額の設定が適切に行われず、将来の給付額にも影響する可能性があります。

社労士に委託することで、給与データに基づいた正確な届出作成・提出を任せることができます。自社で対応する場合も、不明点が生じた際に専門家へ確認できる体制を整えておくことが望ましいといえます。

従業員への説明・労使間のトラブル予防

保険料率の変更や新たな徴収制度の開始は、従業員から「なぜ手取りが減ったのか」「この控除は正しいか」といった問い合わせが生じる契機となります。社労士は、従業員向けの説明資料の作成や問い合わせ対応のサポートを行うことができます。

給与計算の正確性と従業員への適切な情報提供は、労使間の信頼関係を維持するうえでの重要な要素です。専門家のサポートを活用することで、担当者の負担軽減と業務品質の向上を同時に図ることが可能となります。

給与計算・社会保険事務の外部委託を検討する場合

給与計算や社会保険手続きを社内で担当できる人材が限られている場合や、担当者が異動・退職した場合などは、社労士事務所への外部委託を検討することも選択肢のひとつです。外部委託することで、制度改正への対応漏れを防ぎながら、コアな業務へのリソース集中が図れます。

委託の範囲(給与計算のみ、社会保険手続きのみ、または両方)は事業所のニーズに応じて設定できる場合が多く、初めて委託を検討する際は社労士事務所へ相談のうえ、自社に合った体制を確認することが推奨されます。

2026年度の社会保険対応を整理するにあたって

2026年度の社会保険に関わる変更は、健康保険料率・介護保険料率の改定と、子ども・子育て支援金の徴収開始という2つの変更が短期間に連続して発生するという点が特徴的です。給与計算担当者にとっては、それぞれの変更内容・適用時期・自社への影響を整理することが、まず必要なステップとなります。

子ども・子育て支援金については、「子供がいない人でも対象になる」という点が誤解されやすい制度であり、従業員向けの説明においても制度趣旨の正確な伝達が求められます。医療保険加入者全員が対象となる国の制度であることを、落ち着いた形で伝えることが実務対応の基本となります。

料率の確認は、協会けんぽや年金事務所の公式情報を参照することが最も確実です。給与計算ソフトの設定変更・従業員への周知・届出書類の準備といった一連の作業を計画的に進めるためにも、変更スケジュールをあらかじめ把握しておくことが重要です。

社会保険の実務に不明点がある場合や、対応に不安がある場合には、社会保険労務士への相談を検討することが望ましいといえます。制度改正への適切な対応は、事業所と従業員の双方にとって安定した就労環境を維持するための基盤となります。

変更の種別 主な内容 対象者 確認先
健康保険料率の改定 毎年3月分(翌月控除の場合は4月支払い分)から新料率適用 健康保険(協会けんぽ・健保組合)被保険者 協会けんぽ公式サイト・健康保険組合
介護保険料率の改定 40歳以上65歳未満の第2号被保険者が対象 健康保険被保険者のうち40〜64歳 協会けんぽ公式サイト・健康保険組合
子ども・子育て支援金 健康保険料と合わせて徴収される新たな拠出制度 すべての医療保険加入者(子供の有無・年齢不問) 協会けんぽ公式サイト・健康保険組合

制度改正の詳細については、厚生労働省・全国健康保険協会(協会けんぽ)・日本年金機構の公式情報を参照してください。また、個別の事業所に適用される料率や手続き内容については、管轄の年金事務所または社会保険労務士へ確認されることをお勧めします。

関連する確認ポイントのまとめ

  • 自社が加入している保険者(協会けんぽ・健康保険組合)を確認し、適用される料率を最新情報で把握する
  • 翌月控除・当月控除のどちらを採用しているかを確認し、料率変更の反映タイミングを正確に把握する
  • 給与計算ソフトの料率設定を更新し、変更後の最初の給与計算前に設定の確認を行う
  • 子ども・子育て支援金の徴収開始に伴い、給与明細の記載項目に変更が必要かどうかを確認する
  • 従業員から問い合わせが予想される場合は、事前に説明資料を準備しておくことが有用である
  • 不明点は、管轄の年金事務所または委託している社会保険労務士事務所に相談する

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この記事の監修者
宿谷 裕樹
税理士社会保険労務士
2010年中央大学商学部卒業後、大手医療法人へ入社。経理・総務としてバックオフィス業務を担当。2014年社会保険労務士試験合格。その後、2017年社会保険労務士登録し、開業。同年中に法人化し、ストラーダグループに参画。医療法人にて培ったバックオフィスの実務知識と社会保険労務士として培った法律知識による労務の専門家。税理士資格も保有し、会計や税務の専門知識も有する。「税務」「労務」両方の視点から経営を支援し、クライアントに「気づき」を与えることをモットーとしている。
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