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2026.05.28 労働保険

【労務トラブル解決】傷病手当金と失業保険を巡る正しい対応と8つの鉄則

ストラーダグループ

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従業員が体調不良で休職することになった際、人事労務の対応一つで大きなトラブルに発展するリスクがあることをご存知でしょうか。
特に多いのが、経営陣や現場の責任者などが、休職する従業員に対して良かれと思って失業保険や退職の手続きについて安易にアドバイスをしてしまうケースです。たとえば、「今月末で実質退職したことにして、来月は在籍だけ残して失業保険をもらえばいい」「会社都合退職にしてあげるから有利になるよ」といった口約束です。
しかし、これらの発言は失業保険の不正受給に繋がりかねません。また、従業員側も「会社から解雇された」と誤認し、後々不当解雇のトラブルに発展する危険性をはらんでいます。
本記事では、実際にA社で発生した「相談役の発言による労務トラブル」の事例をもとに、傷病手当金と失業保険の関係性や、こじれてしまった事態の具体的な対応策の一例を解説します。

※具体的な法的判断は個別事情により異なるため、実務対応にあたっては専門家へご相談ください。

トラブルの発端は関係者の「無責任なアドバイス」

A社では、入社して間もない従業員Dさんが体調不良により休職することになりました。この時、A社の相談役であるC氏判断で、「今月末で実質退職とし、来月までは在籍していることにして失業保険をもらうようにすればいい」と電話で伝えてしまいました。 これにより従業員Dさんは会社都合で解雇されたと勘違いし、人事担当者に対して「失業保険の具体的な手続きを教えてほしい」と求めてくる事態に陥りました。会社が事実と異なる条件を提案することは、会社に重大なコンプライアンス違反のリスクをもたらします。

「会社都合退職」の安易な処理は絶対NG

従業員を思いやるあまり、「会社都合退職にしてあげれば失業保険が早くもらえるだろう」と考える方もいますが、これは絶対に避けるべきです。 事実に反して解雇扱いにするメリットは会社側には一切なく、後に「不当解雇である」と訴えられるリスクや、助成金の受給要件を満たさなくなるリスクがあります。事実に基づいた対応をすることが重要です。

傷病手当金と失業保険の矛盾

大前提として、傷病手当金と失業保険を混同して説明してはいけません。 傷病手当金は病気やケガで働けない状態の生活保障です。一方、失業保険はいつでも働ける状態にあり、求職活動をしていることが受給の絶対条件となります。医師から「労務不能」と診断されて傷病手当金を受給する人が、同時に失業保険をもらうことは制度上不可能です。この矛盾を理解せずに案内を進めると、後々大きなトラブルになります。

雇用保険の加入期間を確認する

失業保険を受給するためには、原則として退職前2年間に雇用保険の被保険者期間が通算して12ヶ月以上必要です。入社して1年未満の従業員が長期間休職した場合、そもそも出勤日数が足りず受給要件を満たさない可能性が高くなります。安易に「退職すれば失業保険がもらえる」と案内するのは危険であり、慎重な事実確認が必要です。

休職中の「有給消化」はどう扱うべきか?

従業員から「残りの休職期間は有給消化になるのか、傷病手当金の申請になるのか?」と問われることがあります。 法律上、有給休暇は労働者が使いたいと申し出た場合に与えるものです。本人が明確に「有給を使いたい」と言ってこない限り、有給を消化させる必要はありません。基本的には(欠勤扱い)とし、本人の意思を確認してから処理を進めるのが正しい労務管理です。

失業保険の話題は「あえて出さない」のが正解

話がこじれている状況下では、会社からあえて失業保険の案内や離職票の話を出す必要はありません。 会社としては「まだ在籍しており、復帰を待っている」という建前があるため、退職を前提とした失業保険の話題を振ると、従業員に「やっぱり辞めさせられるのだ」という誤解を与えます。聞かれない限りは、傷病手当金の案内に留めるのが安全な対応です。

トラブルを鎮火させる5つの基本メッセージ

関係者の発言で混乱が生じた場合、人事担当者は以下の5つの事実のみを簡潔に伝えて事態を収拾しましょう。
会社としては解雇や退職勧奨はしていないこと。
現在も会社に在籍していること。
希望するのであれば、傷病手当金の申請書類を用意すること。
現在の体調的に出勤は難しいかを確認すること。
出勤が難しい場合は、引き続き欠勤扱いとすること。 余計な推測は交えず、この事実ベースのコミュニケーションを徹底してください。

医師の診断書をベースにした客観的な判断

傷病手当金を受給する場合、いつまで休職するかは会社が決めるのではなく、医師が診断書に記載する労務不能期間によって決まります。 「いつ復帰できるのか」「本当に退職するのか」といった判断は、医師の客観的な証明が出てから行えば良いのです。会社が先走って退職の期限を決めたり、無理に復帰を促したりせず、医師の判断という客観的な事実をベースに 手続きを進めることが、労使間の対立を防ぐ最大の防御策となります。

結論

休職や退職にまつわる労務手続きは、従業員の生活に直結するため、少しの言葉の行き違いが大きな不信感やトラブルを生み出します。
特に、制度の仕組みを正しく理解していないと、良かれと思って事実と異なる提案(偽装の在籍や安易な会社都合退職など)をしてしまうことは、会社にとって大きなリスクとなります。トラブルの火種が生じた場合は、慌てて従業員の要望に応えようとするのではなく、まずは「退職を求めていない」「傷病手当金の案内をする」といった事実ベースの対応に立ち返ることが重要です。
複雑な事情が絡む労務トラブルが発生した際は、社会保険労務士などの専門家に相談 すると、会社としての見解を整理してから対応することが可能になります。適切な初期対応が、会社と従業員双方の未来を守る鍵となります。

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この記事の監修者
宿谷 裕樹
税理士社会保険労務士
2010年中央大学商学部卒業後、大手医療法人へ入社。経理・総務としてバックオフィス業務を担当。2014年社会保険労務士試験合格。その後、2017年社会保険労務士登録し、開業。同年中に法人化し、ストラーダグループに参画。医療法人にて培ったバックオフィスの実務知識と社会保険労務士として培った法律知識による労務の専門家。税理士資格も保有し、会計や税務の専門知識も有する。「税務」「労務」両方の視点から経営を支援し、クライアントに「気づき」を与えることをモットーとしている。
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